2016年6月11日土曜日

上海 西岸ミュージアム巡り

6月初めに上海を訪れた際、ウェストバンドへ行ってみた。

ウェストバンド(West Bund)、または西岸と呼ばれる地域は、外灘(バンド)から黄浦江沿いに南下したところで、市内中心からタクシーで30分程度。川沿いの遊歩道は市民の散歩道になっている。それ以外は車の通行量は多いが、観光客が見るべきものは目につかない。

でもここには、注目すべき現代美術館が二つある。

一つはLong Museum (龍美術館)。


中国の資産家でアートコレクターのオーナー夫妻のコレクションを展示。浦東館に続いて2014年にオープンした西岸館は、ウォーターフロントのコンクリートの建物。看板も通りからは目立たず、一見、倉庫かと思う人気のない雰囲気だが、これは意図してデザインされ、この美術館のために作られた建物。
Long Museum入り口

吹き抜けになった2フロアを使ってオラファー・エリアソンの個展「Nothingness is Not Nothing At All」をやっていた。彼の作品はあちこちで目にするが、大きな個展に出会う機会は少ないように思う。中国でそれに出会えるとは。1990年から現在まで、スペースを生かした大型のインスタレーションから、スカルプチャー、ペインティング、写真など、エリアソンの様々な作品が展示されていた。
上の写真の右半分の覆いの内部が下の写真の展示


もう一軒は、Long Museumから歩いて15分くらいのところにあるYuz Museum。


インドネシア系中国人の起業家でありアートコレクターのBudi Tek氏が設立した美術館。

ここではアルベルト・ジャコメッティの大回顧展を開催中。ジャコメッティの回顧展としては中国初で、パリのポンピドゥー美術館で2007年に開催されたものに次いで世界最大規模だそうだ。

250点もの作品が展示され、彼の特徴的な針のような人物の彫刻に至る過程として、キュビズムやシュールレアリスム、人の頭の像の制作に没頭した時期などの作品も時代別に紹介されている。ジャコメッティによる風景画や舞台装置などもあり、普段見る機会がないジャコメッティが見られる。

そしてあの細い人物の彫刻は、デフォルメされたものではなく、ジャコメッティが遠くから見たままの人の姿を忠実に再現しようとした結果だったということも知り、作品の見方が少し変わった。


Yuz Museumには気持ちのいいカフェスペースもあり、アート鑑賞の前後に寄るのもいい。


今回は上海の西岸で、西洋のアーティストのいい回顧展に二つも出会えた。いずれも平日夕方はほとんど人がいなくて、静かに鑑賞できたことも収穫。

その後、たまたまヨーロッパのホテルチェーンの人と話をした際、この西岸エリアに新しいホテルを2017年にオープンする予定だと聞いた。周りにレストランやショップも入るらしい。

エリアとしてはますます面白くなりそうな西岸。一方、静かなアート鑑賞をするならお早めに。