2017年12月7日木曜日

カンヌのピカソ「ヴォラール・シリーズ」展

カンヌのLa Malmaisonで開催中の「Picasso La Suite Vollard」展を見た。

Malmaisonはクロワゼット通り沿いに海に面して建つ小さな美術館。結構いい展示をしていることが多いのに、いつ行ってもものすごくすいている。ゆっくり鑑賞できるのはありがたい。


「Suite Vollard」(ヴォラール・シリーズ)は、当時のやり手のアートディーラー、アンブローズ・ヴァロールの依頼でピカソが制作した100点の銅版画。1930年代前半から後半にかけて制作された。ちょうど「ゲルニカ」に続く時期に当たる。パリのピカソ美術館が所蔵する全100点が一挙に展示されるのは初めてのこと。そんな意義のある展示が、コートダジュールの青い海と青い空、プラス、コンベンションモードのせわしさ溢れるカンヌでひっそりと行われていることが、なんだか勿体なくもあり、贅沢でもある。

ピカソの銅版画の傑作とされるこのシリーズは、全て1937年以降、当時のマスタープリンター、浮世絵でいえば摺師の、ロジェ・ラクリエールによって印刷された。

彫刻家とモデル(多くの場合、マリー・テレーズ)を描いたものが多く、後のほうになると彫刻家の代わりにミノタウロスも登場する。単色の線だけで構成されていてもピカソらしさが溢れており、その後の絵画作品にもつながるモチーフやテーマを見つけるのも楽しい。


この展示は「Picasso-Méditerranée」(地中海のピカソ)という、2017年から19年の3年間、ヨーロッパ各地で開催されるピカソ展プロジェクトの一環。9月にヴェネチアのペギー・グッゲンハイム・コレクションで見た「Picasso on the Beach」展もその一つだったと後で知る。

カンヌでのSuite Vollard展は2018年4月29日まで開催中。カンヌを訪れる機会があったら、1時間だけでも時間を割いて見に行くことをお勧めしたい。