2019年5月16日木曜日

Prada Rong Zhai

週末を利用して上海の話題のスポット、「Prada Rong Zhai」へ。


中国の富豪の邸宅だった洋館を、プラダが時間と資金をかけて修復したもので、かつての持ち主の名前を取って「Rong Zhai(榮宅)」と呼ばれている。企画展の時だけ一般公開される。


ガイドツアーを事前に予約して時間に行くと、英語のツアーを必要としたのは私だけ。他は地元の人ばかりで、意外にもシニア層の女性が多い。この邸宅の主だった榮宗錦(Yung Tsoong-king、またはRong Zongjin)は、小麦と綿糸の事業で身を立てた中国では有名な人物。ガイドさんによると、何十年も門を閉ざしたままだった彼の邸宅が公開されたと知り、興味を持って見に来る人が多いのだそうだ。

もとはドイツ人家族のものだった邸宅をRong氏が1918年に買い、1930年代後半まで家族で暮らした。Rong氏は建築家を雇って装飾を加えた他、奥さんと7人の子供の大家族のために半フロアを増やすなどの改築もしたため、内部は迷路のようになっている。それぞれの部屋の用途は想像の部分もあるが、ステンドグラスやタイルの装飾の華やかさが、租界時代の上海のハイソサエティの生活をほうふつとさせる。

プラダは、この建物を中国政府から10年間の期間で借り受け、うち6年間を修復に費やした。イタリアから建築家と職人を呼び、時には材料もイタリアから取り寄せて、なるべくオリジナルに忠実になるように修復した。中国の歴史と文化の保全に、イタリアのクラフトマンシップを用いるところが、プラダのこだわり。そして2017年秋に「Prada Rong Zhai」として最初に公開された。


今回は2019年3月23日から6月2日まで「Goshaka Macuga -What Was I?」展が開催されている。ゴシュカ・マクガはポーランドのアーティストで、彼女自身の作品だけでなく、彼女がキュレーターとしてプラダのアートコレクションから選んだ合計26作品を展示。選定のひとつの基準は、その空間に合うかどうか。当然ながら、ここでは展示の中心は建物なのだ。

部屋ごとに異なる色の壁にマッチした作品が掛かっている。フォンタナの作品の深い緑も、赤い壁を引き締めていた。

マクガの作品のひとつは、(その空間に合っているかどうかはともかくとして)非常にリアルなアンドロイド。モノローグに合わせて顔や手を動かす様子は、表情と言い、皮膚の質感といい、動きといい、「ここまできたか」と思わせる。ちょっと怖い。


1時間の滞在は満足なものだった。Prada Rong Zhaiは、中国の他のどの都市とも違う、上海の華やかな時代を垣間見られる貴重な建物だと思う。そして近現代アートとの共演を見るのも楽しい。

見学やガイドツアーは予約制だが、日本から予約するのはちょっとハードルが高い。WeChatでしか予約を受けておらず、中国の携帯番号や中国のクレジットカードが必要になる。なので、宿泊するホテルのコンシェルジュに頼んで予約してもらうのが確実といえる。ちょっと手間はかかるが、行く価値は十分ある。