三重県多気町の話題の最新リゾート施設、Vison(ヴィソン)を訪れた。
伊勢神宮から車で30分弱のところにできた「美しい村(=びそん)」は、地域活性化の一大プロジェクト。山を切り開いた広大な敷地に、真新しいホテル、お店、レストラン、マルシェ、温浴施設、農園などが入る。
注目のコンセプトは「サン・セバスチャンの食」。サン・セバスチャンはバラエティ豊かなピンチョスが並ぶバルがひしめき合い、ミシュラン星付きレストランの数は人口比で世界一という、スペイン・バスク地方の美食の街。Vison内の「サン・セバスチャン通り」と名付けられたエリアには現地から誘致したバルが3軒。ホテル内にもファイン・ダイニングのバスクレストランがある。でもサン・セバスチャンをそのまま輸入しましょうというのではなく、三重県の豊富な海と山の食材を活かし、ここならではの日本のバスク料理を目指しているのがいい。元祖サン・セバスチャンの夜ほどの賑やかさはないけれど。
食に関連した他のエリアには、地元の新鮮な野菜や海産物を売る市場「マルシェヴィソン」や、苺の栽培ハウスを併設した「スウィーツヴィレッジ」、そして「和ヴィソン」がある。和ヴィソンには鰹節、昆布、味噌、醤油、みりん、酢といった和食に欠かせない基本アイテムの専門店が集まる。製造工程を見せるお店もあり、ちょっとした和食テーマパークみたい。
Visonは県内や東海・近畿地方から来る人が大半で、平日でもカップルや家族連れが多かった。正直なところ東京からはアクセスがいいとは言い難く、どうやって行っても片道5時間程度はかかる。それでも東京を含む全国から人が訪れていると聞く。
産官学連携のスマートシティ構想の中核としても注目されるVisonでは、医療・健康やモビリティも重要な要素。お勧めは温浴施設「本草湯」。多気町は昔から薬草の町として知られていたそうで、ここでは三重大学とロート製薬が連携して開発したという、聞くだけで効能ありそうな薬草湯に入れる。露天風呂も気持ちがいい!七十二候に合わせたレシピが約5日ごとに変わり、行ったときは海藻とタンポポのお湯だった。トリートメントを受けられるスパも併設されているので、のんびりと半日過ごしてもいいかも。
リゾート施設としての商業的成功だけでなく、長期ビジョンでの地方創生を目指しているVison。自動運転、地域通貨、遠隔医療などの構想も進む。まだピカピカ感がまぶしい建物やホテルが小慣れてきた頃、最先端の「美村」は更に楽しく住みやすい場所になっているに違いない。