2018年4月1日日曜日

北京・今日美術館の前で

先日、北京滞在中に「今日美術館(Today Art Museum)」を通った。辺りはデザイン関係のショップやオフィス、ギャラリーなどが集まり、文化的な香りがする一角だった。

残念ながらちょうど展示のはざまだったため、館内には入らなかったが、建物の前にYue Minjunの彫刻が。

何がそんなに可笑しいんだろうと思うくらい爆笑している人々。こっちまで笑ってしまう。

アートを超えて、もはやエンターテイメント。




2018年3月17日土曜日

アートがぎっしり!

北京のホテル・エクラ(Hotel Éclat Beijing)は、稀にみるアートコレクションが溢れんばかりに展示されていて、アートファンには楽しくてたまらない。

ホテルはセントラルビジネスディストリクトのParkview Greenというコンプレックス内にある。ガラス張りの建物の周囲に個性的な彫刻が並んでいるので、すぐわかる。


ロビーに入ると、ゆっくり回転し続けるカラフルな仏像が目に入り、それをダリや曾梵志(Zeng Fanzhi)が無造作に囲む。そのバラエティ感とパワー溢れる作品群にちょっと引いてしまうかもしれないが、ここはとにかく、アート・ワールドへの入り口として突破すべし。


宿泊客だけがアクセスできる客室フロアは、壁という壁、そして客室を含むあらゆる空間に美術館レベルのアートが所せましと、しかし上手なキュレーションで展示されている。中国コンテンポラリーをテーマにしたフロアでは、張曉剛(Zhang Xiaogang)、岳敏君(Yue Minjun)など超有名どころの大型作品を含む、ユニークなコレクションが見られる。


この中にオーナーのWong氏が描きこまれている

自転車がテーマのフロアでは、フェンディ、グッチ、エルメスなどハイブランドの見たことがない自転車が。もちろん本物。宿泊客は実際にそれらを借りて乗ることもできる。(北京の町で上手に乗りこなせる自信があるなら。)

Gucciの自転車!

ホテルのスタッフにツアーを依頼すれば、ホテル中のアートを詳しく説明してもらいながら鑑賞できる。作品によっては聞いて初めてわかるストーリーがあったり、ワンフロア廻るだけでもかなり見応えがあるので、是非、鑑賞のための時間をしっかり取っておきたい。

このホテルを作ったオーナーのGeorge Wong氏は、中国有数のアートコレクター。ダリのスペイン国外で最大のコレクションも持つ。サザビーズやクリスティーズのオークションカタログを見ては「これと、これと、これ」と印をつけ、アートの「大人買い」をする人だったそう。ある人が彼にアート蒐集の戦略を尋ねたところ、「そんなもん、無い!」と答えたとか。しかしそれを個人的趣味で終わらせることなく、アートが多くの人の目に触れる場所と機会を作ることに心を注いだ。残念ながらWong氏は昨年12月に急逝し、今はスタッフが彼のスピリットを継いで展示作品の選定をしている。

同じ建物内にある北京最大のショッピングモールは、さながらアートのテーマパーク。あちこちにあるアートを探して散策するのも楽しいし、写真を撮りながらショッピングしている人も多い。アートの周りに人々が集える場所を作りたかったWong氏の思いが実現している。

10階には企画展示をしている美術館があり、ここも入場無料。「Bridging Asia-Europe」と題したシリーズ企画は、アジアとヨーロッパの文化をつなごうというWong氏の思いを反映したもので、中国と中欧のアーティストのダイナミックなペインティングが展示されていた。この企画展は当初の予定では2017年12月10日までだったが、直前のWong氏の死を受けて延長されたものと思われる。


もう一つ特筆すべきは、空気。この建物には独自の空気清浄システムがあり、いつでもきれいな空気が吸える。ちょっと先の風景も霞むひどい大気汚染に悩む北京ではこれは大きな魅力で、いい空気を求めて週末に泊まりに来る地元の常連も多い。実際、わざわざ外に出ずとも、ホテルとモールのアートを鑑賞するだけでかなり満足度は高いので、きれいな空気を吸いながらホテル内で過ごすのも悪くない。

街に出ないことがむしろ贅沢に感じた北京滞在だった。

2017年12月22日金曜日

クライス5

チューリヒの「クライス・フュンフ(Kreis 5)」地区は、工業地域が再開発されたトレンドスポットとして知られる。

冬の夜、カラフルにライトアップされた列車の高架下。「Viaduct」と呼ばれるここには、ショップやレストラン、生鮮食品のマーケットなどが並ぶ。

東京のガード下とはかなり違うお洒落な店内で、地元の人々がお酒や食事を楽しんでいた。


質の高いアートも集まる。ビールメーカーのレーベンブロイの元醸造所の建物には、コンテンポラリーのMigros Museumや、世界トップクラスのギャラリーHauser & Wirthなどが入居する。 Hauser & Wirthは見るだけでも充実感があった。


チューリヒで2,3日過ごすなら、覚えておきたい場所。


2017年12月21日木曜日

ジャコメッティのバラ色の天井画

チューリヒの警察署は、実は隠れた必見のアートスポット。

扉を入ってすぐの玄関ホールは「ジャコメッティ・ホール」と呼ばれる。そこはアーチ形の天井がバラ色に彩られた、美しく夢のような空間がある。

(内部は撮影禁止なので、写真はこのサイトでご覧ください。https://www.zuerich.com/en/visit/attractions/giacometti-hall )

天井と壁は花の絵で埋め尽くされ、幻想的にライトアップされている。2か所の壁には、労働者の絵と、天文観測をする人の絵がある。

描いたのはアウグスト・ジャコメッティ。針金のような彫刻で知られるアルベルト・ジャコメッティの父親の従弟に当たる。

この天井画と壁画は、元は孤児院だった建物を、市の警察の本部に改修した際に制作されたというから、驚く。元々あった天井画を警察署が残したのではないのだ。警察というイメージからは程遠い、ファンタジックで、一歩入れば誰もがうっとりとたたずむような空間が、警察の建物のために作られた。そこにどういう意図があったのかはわからないが、とにかくここは見に行く価値がある。

アウグストはジャコメッティ・ファミリーの中でもチューリヒにゆかりが深い。彼の作品はKunsthaus Zurich(チューリヒ美術館)でも見られるし、また、グロスミュンスターなど市内の教会にもステンドグラス作品が残る。

でも、この玄関ホールの感動は、他にはない。必見。


2017年12月16日土曜日

オスカー・ラインハルト・コレクション

スイスのヴィンタートゥールは、アートファンなら一度は訪れたい街だ。

チューリヒから列車で25分ほどのヴィンタートゥールは、スイスで6番目の人口を持つ都市。19世紀には工業や金融などの産業が栄え、資産家たちがパトロンとなり文化と芸術の都となった歴史を持つ。今ではハイテク産業の中心地だそうだが、観光客にとっては「City of Museums」なのだ。

代表的な美術館は「オスカー・ラインハルト・コレクション アム・レマーホルツ」。

オスカー・ラインハルトは裕福な貿易商の家に生まれ、アートパトロンだった父親の影響を受け自らもアート蒐集に情熱を注いだ人物。ラインハルトが愛する作品に囲まれて暮らした邸宅が、彼の死後、1970年に美術館として公開された。


ラインハルトは特にフランスの印象派絵画を愛したが、それに限定せず、ヨーロッパ美術を包括的にカバーした美術館を作ることを目指した。コレクションは19世紀のフランス絵画を中心に、後期ゴシックから20世紀まで及び、ゴヤ、ドラクロワ、コロー、クールベ、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホなどが名を連ねる。


しかし彼の興味の対象は優れたアーティストであり、歴史上の文脈や、特定のアーティストの作品を集めることにはあまり関心がなかったらしい。優れた作品という観点で集めた結果、各時代の粋を集めた珠玉のコレクションが生まれた。


展示はラインハルトの実際の作品の飾り方に近く、必ずしも時代別ではなく、芸術的アプローチによって分かれている。特に最も大きな「The Picture Gallery」と呼ばれる部屋には、様々な時代の様々なアーティストの風景画が比較展示されている。聖地へ向かう道という宗教的な意味が背景にあった17世紀半ばのフィリップ・デ・コーニンクの作品と、同じような風景だが宗教の要素が消えた19世紀初めのジョン・コンスタブルの作品、そして雰囲気や光にもっとフォーカスした19世紀後半の印象派ルノワールの作品が並ぶ。また別の部屋では、18世紀半ばのジャン・シメオン・シャルダンの桃の静物画と、19世紀終わりにやはり桃を描いたセザンヌの静物画が並んでいる。

素晴らしいコレクションを、そのコレクターの視点を通して鑑賞できるのは興味深い。

ラインハルトのコレクションのうち、18世紀から20世紀のドイツ、スイス、オーストリア美術は、彼自身がヴィンタートゥール市に寄付し、1951年にオスカー・ラインハルト美術館として公開され現在に至る。こちらも必見。公園の中の古い校舎を使っている。



そのクラシックな館内に突然、現代的な空間が出現。階段の上のギャラリーでは20世紀スイスの新即物主義の展示があった。


オスカー・ラインハルトの二つの美術館は、1-day Museum Passを買って、ヴィンタートゥール駅から1時間に1本出ているミュージアムバス(ミニバン)で廻るのがいい。このほか、レジェ、クレー、モンドリアンなどモダンアートが見られるヴィンタートゥール美術館も、オスカー・ラインハルト美術館のすぐ近くにある。

2017年12月10日日曜日

クリスマス in チューリヒ

クリスマスシーズンのヨーロッパの街は、どこも美しく、そして楽しい。

チューリヒでも、街のあちこちに大きなクリスマスツリーが立ち、大通りはカラフルなライティングに溢れている。

オペラハウスの隣の広場では、市内最大のクリスマス・マーケットが開催されている。クラフトやジュエリー、地元産のグルメアイテム、スナックなど、様々な露店がぎっしりと並び、昼間から大勢の人で賑わう。雪もちらつく寒さの中、人気アイテムはグリューワイン。皆、スパイス入りの温かいワインで暖を取りながら散策してる。


チューリヒの街角では、メインのマーケット以外にも小規模なクリスマス・マーケットをあちこちで見かける。そしてどこも賑わっていて、寒い夜に暖かな雰囲気を醸し出す。



夕方、通りを歩いていたら、クリスマスソングを歌う合唱隊の声が聞こえてきたので、行ってみると、「シンギング・クリスマス・ツリー」の周りに大きな人だかりができていた。最初、遠目には分かりにくかったが、ツリーの中の赤い飾りに見えるのは、合唱隊の人たち。赤い服を着てツリー型のステージに立つ、まさに歌うツリーなのだ。歌がとても上手な合唱隊の体当たりなパフォーマンスが素晴らしい。

東京でも美しいクリスマスイルミネーションが見られる場所はたくさんあり、かなり洗練されている。でも、街中がひとつになってクリスマスを待ち望んでいるようなワクワク感は、本家にはやはり敵わない、と思った。

メリー・クリスマス!


2017年12月7日木曜日

カンヌのピカソ「ヴォラール・シリーズ」展

カンヌのLa Malmaisonで開催中の「Picasso La Suite Vollard」展を見た。

Malmaisonはクロワゼット通り沿いに海に面して建つ小さな美術館。結構いい展示をしていることが多いのに、いつ行ってもものすごくすいている。ゆっくり鑑賞できるのはありがたい。


「Suite Vollard」(ヴォラール・シリーズ)は、当時のやり手のアートディーラー、アンブローズ・ヴァロールの依頼でピカソが制作した100点の銅版画。1930年代前半から後半にかけて制作された。ちょうど「ゲルニカ」に続く時期に当たる。パリのピカソ美術館が所蔵する全100点が一挙に展示されるのは初めてのこと。そんな意義のある展示が、コートダジュールの青い海と青い空、プラス、コンベンションモードのせわしさ溢れるカンヌでひっそりと行われていることが、なんだか勿体なくもあり、贅沢でもある。

ピカソの銅版画の傑作とされるこのシリーズは、全て1937年以降、当時のマスタープリンター、浮世絵でいえば摺師の、ロジェ・ラクリエールによって印刷された。

彫刻家とモデル(多くの場合、マリー・テレーズ)を描いたものが多く、後のほうになると彫刻家の代わりにミノタウロスも登場する。単色の線だけで構成されていてもピカソらしさが溢れており、その後の絵画作品にもつながるモチーフやテーマを見つけるのも楽しい。


この展示は「Picasso-Méditerranée」(地中海のピカソ)という、2017年から19年の3年間、ヨーロッパ各地で開催されるピカソ展プロジェクトの一環。9月にヴェネチアのペギー・グッゲンハイム・コレクションで見た「Picasso on the Beach」展もその一つだったと後で知る。

カンヌでのSuite Vollard展は2018年4月29日まで開催中。カンヌを訪れる機会があったら、1時間だけでも時間を割いて見に行くことをお勧めしたい。