京都駅からJRで約15分の山崎に、「アサヒグループ大山崎山荘美術館」がある。
京都駅まで乗ったタクシーの運転手さんに山崎に行くと言ったら、「サントリーですか?いいですね」と言われ、飲料メーカー名が一瞬ごっちゃになって「ええ、そうです」と答えそうになったが、あちらは超人気のウィスキー工場。最初から山崎に酒造メーカーが集まっていたわけではなく、美術館は元々、実業家の加賀正太郎の別荘として建てられた。その加賀が、現在のサントリー山崎蒸留所の初代所長だった竹鶴政孝(「マッサン」のモデルになった人)が北海道でニッカウヰスキーを興した際に参画して筆頭株主になり、後年その株式をアサヒビール初代社長・山本爲三郎に託したことが今の美術館につながっている。山崎の水とウィスキーが繋いだ縁。
山崎駅からはシャトルバスが運行している。Googleマップでは徒歩13分。「歩けるじゃん」と思うかもしれないが、目的地は「山荘」だということを忘れてはいけない。駅から美術館まではずーっと上り坂。体力に自信がある人以外は迷わずシャトルに乗りましょう。シャトルに乗っても、降車するトンネル前から建物までの300mほどの上り坂は歩くしかない(これで十分だと思った)。
坂を上り切ったところの門を抜けるとクラシックな英国風の本館が見える。京都の中心部と比べたら決してアクセスがいいとは言えない美術館に、平日の午前中から幅広い年齢層の人が大勢訪れていた。100年以上前に建てられた山荘は、取り壊しの危機を乗り越え1996年に美術館として再生された。建物内はヨーロッパの小洒落た山小屋を思わせ、テラスからは当時とそれほど変わっていないであろう自然の風景を臨める。定時に演奏される2階の大きなオルゴールは、客人をもてなす贅沢な娯楽だったのだろう。
今年2026年は開館30周年に当たり、記念の企画展が二つ開催されている。ひとつは「共鳴 河井寛次郎×濱田庄司」。もう一つは「クロード・モネ展」。同館の2大主要コレクションの民藝とモネを展示している。
民藝は前述の山本が支援していたため多数の作品があり、今回も200点以上が本館を中心に展示されている。時代も重なる木造の山荘と陶芸作品は相性が良い。実際にここで使用されていたわけではなくても、日常の中での器の姿が想像できた。
モネは「地中館」という別館にある。一目でわかる安藤忠雄建築。ガラスの回廊のコンクリートの階段を半地下の展示室へ降りていく。所蔵するモネ作品全8点が2期に分けて6点ずつ、円形の展示室の壁にぐるりと展示される。美術館が所蔵する5点の睡蓮のうち4点は、モネがのちのオランジェリー美術館の睡蓮につながる「大装飾画」の構想を練っていた頃に制作されたもの。1辺が2メートルの大型の作品もあった。
鑑賞後は庭園も一回り。モネの絵とはだいぶ雰囲気が違うが、睡蓮が咲く池もある。
ちょっとした遠足気分の美術館だった。必ず歩きやすい靴で!

