2019年6月1日土曜日

シンガポール「Jewel」

シンガポールからの帰り、チャンギ空港の「Jewel(ジュエル)」に立ち寄った。
ターミナル1に併設される形で今年4月にオープンした話題のスポット。世界最大の人口の滝がある。


「レイン・ヴォルテックス」と呼ばれる高さ40メートルの滝は、水煙を上げながら勢いよく降り注ぐ。周りには熱帯の木々が植えられ、滝のマイナスイオンを感じながら、ちょっとした散歩が楽しめる。


Jewelの入り口で訪問者を迎えるのは、CAO PERROTというアーティストデュオによる「Crystal Clouds」。アートはこれからもっと増えていく様子。


ジュエルにはたくさんのショップやレストランもあり、6月には迷路などのアトラクションもオープン予定。飛行機に乗る用事がない地元の人もたくさん訪れている。私が乗ったタクシーの運転手さんは「大勢のお客さんをここに乗せてきたけど、自分はまだ中を見たことがないんだ!」と残念がっていた。

フライト前の時間つぶしのつもりが、つい夢中になってしまいそうな場所なので、乗り遅れにご注意!


2019年5月22日水曜日

上海のシャネル展

4月20日から、上海のウエストバンド・アートセンター(西岸芸術中心)でシャネルの「マドモアゼル・プリヴェ(Mademoiselle Privé)」展が開催されている。ロンドン、香港、ソウルに続く巡回展。


行ってみると入場を待つ人の長い列が。どうやらWechatで入場時間の予約が必要みたいで、アプリを立ち上げてそこにあったQRコードをスキャンしてみる。…。表示された中国語の画面を見て固まっていると、係のお兄さんが声を掛けてくれた。「中国の携帯番号ある?」と聞かれ、無いと答えると、じゃ、ここを進んで、と、行列の隣の誰もいないレーンを通してくれた。え、いいの?と思いながら進み、入り口で係りの人に言われるままに名前と日本の携帯番号を入力すると、そのまま入れてくれた。え、ほんとにいいの?外国人観光客優遇かしら。よくわからないけど、ありがたい。


会場は飛行機の格納庫だった大きな建物。展示のある2階への階段の前で並び、順番が来ると素敵なポーチをくれる。


入場無料で、しかも「シャネルのポーチ」がもらえるなんて、嬉しいに決まってる。行列の理由はここにもあるのかもしれない。

展示は香水、オートクチュール、ハイジュエリーの3つのテーマに分かれ、それぞれの入り口には象徴的な番地表示がある。香水の部屋はNo. 5、オートクチュールの部屋はシャネル本店があるカンボン通り31番地、ハイジュエリーはヴァンドーム広場18番地。


香水の部屋では、No.5の原料となる花を模した、ピンクやクリーム色のペーパーフラワーの畑が広がる。

オートクチュールの部屋は、カール・ラガーフェルドによる過去のコレクションやデザイン、イメージ映像など、ラガーフェルドとココ・シャネルへのオマージュに満ちた内容。



ハイジュエリーの部屋では、まぶしいほどの輝きを放つジュエリーの数々が展示されていた。1階ではフランスの職人を招いてのワークショップが行われ、こちらも賑わっていた。

多くの人が写真撮影に熱心なのはどこでも同じだが、面白いのは、日本ではインスタ映えには必ずしも人物は必要ないが、上海ではポートレート撮りをする人が多いこと。記念写真的なものではなく、カメラ目線を外した雑誌風(を狙った)ショット。自撮りでも友達同士での撮影でも、多少ナルシスト的要素がないと人前でこういうのは撮れないが、ここはそういうモードになるのにうってつけの場所なのだろう。これも行列のもう一つの理由かもしれない。

西岸と呼ばれる黄浦江沿いのエリアは、近年開発が急ピッチで進み、新たなアートハブとしての存在感を増している。今回会場となっているウエストバンド・アート・センターはその核となる施設のひとつで、良質なアートギャラリーが集まっている。多くのギャラリーが展示替え期間に当たっていたこともあり、シャネル展以外は人もまばらだったが、これからM50や北京の798のような場所になっていくのだろうか。


近隣のYuz Museumや、今年オープンしたTank Shanghaiに続く、新たな美術館のオープンも予定されていて、一大「アートベルト」の誕生が楽しみ。

上海でのMademoiselle Privé 展は2019年6月2日まで。



2019年5月19日日曜日

Tank Shanghai

上海を2年ぶりに訪れたら、西岸(ウエストバンド)地区がすっかり変わっていた。黄浦江に面した龍騰大道沿いに、現在建築中のものを含め、新しい建物が続々とできている。

その中で今年3月にオープンした「Tank Shanghai」は、漢字で書くと「上海油罐芸術中心」。文字通り、航空機の燃油タンクをリノベートした美術館で、アートコレクターのQiao Zhibing氏が設立した。6万平方メートルの敷地に並ぶ5つの「油罐」の外観は、なかなかユニーク。

こけら落としの展示の一つはチームラボの「Universe of Water Particles in the Tank」。

土日の入場料は150元(約2400円)と、上海の美術館としては決して安くはないが、中は家族連れや若者でそこそこ賑わっていた。


円いタンクの空間に、滝と四季の草花の映像が映し出される。床では、立っている足の周りに水流が生まれ、そこに花が咲く。このインタラクティブ性はちょっとスローなので、各地のチームラボの展示を見てきた人にとっては、若干物足りないか、気づかないかもしれない。でも観客は床に座ったり、白い服を着てきて自分もスクリーンになった姿の写真を撮ったり、それぞれのんびりとこの世界を楽しんでいるようだった。

次の部屋は、浮世絵を思わせる波(これ、去年大阪で見たのと同じような?)

この展示は8月24日まで。

ハイスピードで開発中の西岸地区。向こうにはテーマパーク「ドリームセンター」が、通りの向かいにはファイナンシャルセンターの高層ビル群が建設中だった。次に来るときはどうなっているのか、楽しみ。


2019年5月18日土曜日

Yves Klein、Lee Ufan、そしてDing Yi

上海の「Power Station of Art」で面白い企画展を見た。「The Challenging Souls」と題したイヴ・クライン、李 禹煥、ディン・イーの3人の展示。

国も世代も違うこの3人をなぜ?と思ったが、20世紀から現代にかけて東西における「アヴァンギャルド」を象徴する存在として選んだそうだ。1950年代から60年代にフランスで活躍したクライン、60年代から70年代の日本の「もの派」や韓国の「単色画」の中心的な存在となったウファン、そして80年代以降、クロスの抽象画で中国の現代アートをリードするイー。













展示はクラインへのオマージュの要素が強かったい。ウファンがこの展覧会のために作成した「Infinity Stairs」はクラインの青をイメージしたもの。


ディン・イーは、昔エルメスのスカーフをデザインした頃から気になっていたが、美術館で見る機会は初めてだった。クラインの青い巨大なプールと一緒に展示されたイーの作品は、クラインのブルーを邪魔せずに、しかし存在感を放っていた。


クラインの年譜や資料の展示では、彼がアーティストとして活躍する前に、柔道を極めていたことを知った。1952に年に来日し、講道館で修業し四段を取得。昭和28年の日付が入った「イーブ・クラン」宛ての免状も展示されていた。

そして彼は柔道をヨーロッパに拡めるべく、本を出版する。その表紙は、さすが、アートブックのようである。(狙った読者層に響いただろうか?)


クラインの回顧展でもあり、アバンギャルドの系譜でもあり、今も活躍するアジアの二人のアーティストのポイントを押さえた展示でもあり、色々な角度から見応えがあった。展示は7月28日まで。


2019年5月16日木曜日

Prada Rong Zhai

週末を利用して上海の話題のスポット、「Prada Rong Zhai」へ。


中国の富豪の邸宅だった洋館を、プラダが時間と資金をかけて修復したもので、かつての持ち主の名前を取って「Rong Zhai(榮宅)」と呼ばれている。企画展の時だけ一般公開される。


ガイドツアーを事前に予約して時間に行くと、英語のツアーを必要としたのは私だけ。他は地元の人ばかりで、意外にもシニア層の女性が多い。この邸宅の主だった榮宗錦(Yung Tsoong-king、またはRong Zongjin)は、小麦と綿糸の事業で身を立てた中国では有名な人物。ガイドさんによると、何十年も門を閉ざしたままだった彼の邸宅が公開されたと知り、興味を持って見に来る人が多いのだそうだ。

もとはドイツ人家族のものだった邸宅をRong氏が1918年に買い、1930年代後半まで家族で暮らした。Rong氏は建築家を雇って装飾を加えた他、奥さんと7人の子供の大家族のために半フロアを増やすなどの改築もしたため、内部は迷路のようになっている。それぞれの部屋の用途は想像の部分もあるが、ステンドグラスやタイルの装飾の華やかさが、租界時代の上海のハイソサエティの生活をほうふつとさせる。

プラダは、この建物を中国政府から10年間の期間で借り受け、うち6年間を修復に費やした。イタリアから建築家と職人を呼び、時には材料もイタリアから取り寄せて、なるべくオリジナルに忠実になるように修復した。中国の歴史と文化の保全に、イタリアのクラフトマンシップを用いるところが、プラダのこだわり。そして2017年秋に「Prada Rong Zhai」として最初に公開された。


今回は2019年3月23日から6月2日まで「Goshaka Macuga -What Was I?」展が開催されている。ゴシュカ・マクガはポーランドのアーティストで、彼女自身の作品だけでなく、彼女がキュレーターとしてプラダのアートコレクションから選んだ合計26作品を展示。選定のひとつの基準は、その空間に合うかどうか。当然ながら、ここでは展示の中心は建物なのだ。

部屋ごとに異なる色の壁にマッチした作品が掛かっている。フォンタナの作品の深い緑も、赤い壁を引き締めていた。

マクガの作品のひとつは、(その空間に合っているかどうかはともかくとして)非常にリアルなアンドロイド。モノローグに合わせて顔や手を動かす様子は、表情と言い、皮膚の質感といい、動きといい、「ここまできたか」と思わせる。ちょっと怖い。


1時間の滞在は満足なものだった。Prada Rong Zhaiは、中国の他のどの都市とも違う、上海の華やかな時代を垣間見られる貴重な建物だと思う。そして近現代アートとの共演を見るのも楽しい。

見学やガイドツアーは予約制だが、日本から予約するのはちょっとハードルが高い。WeChatでしか予約を受けておらず、中国の携帯番号や中国のクレジットカードが必要になる。なので、宿泊するホテルのコンシェルジュに頼んで予約してもらうのが確実といえる。ちょっと手間はかかるが、行く価値は十分ある。


2019年4月9日火曜日

ウィーンで「マーク・ロスコ」展を見る

先日スペインに行った際、乗り継ぎで寄ったウィーンで少しだけ時間があったため、市内の美術史美術館(Kunsthistorisches Museum)へ。

マリア・テレジア広場には、ほぼ同じ造りの美術史美術館と自然史博物館が広場を挟んで向かい合って建つ。広場には朝から観光バスが横付けされ、美術館が開く前から外国からの観光客が大勢訪れている。その多くは美術館には入らず、広場と建物の写真を撮っただけで次へ向かうようだったが、帝国の威厳と優雅さを残す広場は、それだけでも十分価値がある。これほど圧倒的な外観を持つミュージアムがあるウィーン、うらやましい。

美術史美術館は歴代皇帝のコレクションを収蔵し、世界最大のブリューゲルの作品群のほか、フェルメール、ルーベンス、ラファエロ、カラヴァッジョなどなど、超一流のラインナップで知られる。

しかし滞在可能時間わずか30分だった今回の目的は、3月12日に始まった「マーク・ロスコ」展。オーストリアで初のロスコの回顧展となる。


マーク・ロスコと言えば、赤や黒などの四角い色が画面いっぱいに塗られた大型の絵画で知られるが、この展覧会ではそうした作品以外にも、1930年代から40年代の初期の作品から、「シーグラム壁画」を経て、1970年に亡くなるまでの最晩年の作品までを時系列で展示している。

初期の自画像や人物画は、初めて見る機会を得た。

人物は皆、表情があるような、ないような感じで、ちょっとデフォルメされている。

「シーグラム壁画」は、ワシントンDCのナショナル・ギャラリーから7作品を展示。

色の組み合わせで成り立つロスコの絵は、「どの色の組み合わせが一番好きですか?」と問われる心理テストを連想させ、自分が惹かれた作品の色にどういう意味があるのかと、ふと考えてしまう。それもロスコの絵を見る楽しさの一つ。


30分間での鑑賞ではあったが、とても満足度が高い内容だった。しかし、当然ブリューゲルもルーベンスも今回はパスせざるを得ず、内部も非常に優美な建物なだけに、後ろ髪を引かれつつ後にした。


春の晴れた空の下、空港に戻る車の窓から眺めたウィーンの街の美しかったこと!次回は必ず時間を取って再訪しよう。


2019年3月12日火曜日

「ピエール・セルネ&春画」展

銀座のシャネル・ネクサスホールでの「ピエール・セルネ&春画」展のレセプションへ。

大盛況でのお披露目となった今回の展示は、現代フランス人アーティストと、江戸時代の日本の浮世絵師たちの稀有な競演。いずれも性をテーマにしているが、直接的な表現でカラフルな春画と、見る者のイメージに任せるモノクロームのセルネ氏の写真は対照的で、面白いハーモニーを生んでいた。


会場の壁には丸い窓があちこちに開いていて、そこから見える向こう側の作品と鑑賞者たちも展示の一部を成す。


セルネ氏の作品は、言われないと絵かと思ってしまうが、実はスクリーン越しにシルエットを撮影した写真。被写体は、タイトルのカップルの名前だけが手がかり。
浦上蒼穹堂の春画コレクションは、北斎、歌麿、春信など一流の絵師たちのラインアップであることはもちろん、非常に保存状態が良く、とても200年以上経っているとは思えない色鮮やかさ。

レセプションの冒頭で、2月に逝去したカール・ラガーフェルドに黙祷を捧げた。主催者であるシャネルのコラス氏は、この展示はココ・ガブリエル・シャネルもきっと気に入ったはずだと述べた。時代が変わればクリエイターも変わり、文化が変われば表現も変わる。その中で普遍のものもある。それぞれの時代の価値観と美を見出す、興味深い展示だった。