ソウルのアモーレパシフィック美術館で開催中の「SOL LEWITT: OPEN STRUCTURE」展を見た。今年4月まで東京都現代美術館でやっていた展示の巡回展。
美術館は国の化粧品メーカーの本社ビル1階にある。建築はデヴィッド・チッパーフィールド。真ん中が大きく空いたデザインが目を引く。
ソウルでの展示はウォールドローイング13点を含む全45作品で構成。ルウィットの特徴は、作品のほとんどがルウィット以外の人の手によって完成されたもので、でもそれが紛れもなくルウィットの作品だということ。
線、格子、立方体、モジュールなどの要素に明確なルールを与えれば、コンセプトが作品になるというのがルウィットの考え。上の写真右側の「Wall Drawing 786A」は、壁面を格子状に分割し、各マスの中に8種類の弧をうちの2つを規則に従って組み合わせたもの。(同じ方法で制作された作品が東京国立近代美術館でも常設展示されている。)この作品が最初に展示されたのは1995年だが、今回展示されているものは展覧会の直前にローカルスタッフたちが制作した。
ルウィットは2007年に亡くなったが、彼の「アイディアは芸術を生み出す機械となる」という言葉通り、ルウィットのアイディアはロジックに基づいた指示書を通して、今でもルウィット作品を生み出し続けている。作品は展示が終わると都度撤去される。いつも新しく作られ、朽ちることなく、どんなに大きな作品も保管の心配がなく、同じ作品を複数の場所で同時に展示することだってできる。ものすごく細かくて時間がかかる作品も誰かが作ってくれる。
音楽も最初の譜面があれば同じメロディーは再現できるが、演奏する人によって全く違ったものになる。でもルウィットの作品にはその余地がない。同時に、会場の広さに応じてサイズ可変という柔軟さは残し、美しい展示を実現させている。
1980年代にイタリアでルネサンス時代のフレスコ画に刺激を受けて制作したウォールドローイングは、動きのある構成と微妙な色合いが印象的。これは赤、黄、青、グレーの顔料をあらかじめ決められた順序で壁にたたきつけることで実現したという。気が遠くなりそうな作業と向き合う制作担当者に心から敬服。
晩年は、更に色や曲線の遊びが見られるようになったが、ここにもロジックはあるらしい。
いわば「死なないアーティスト」になるシステムを考案したルウィット。AIがなくても、優れたアイディアはプログラムとして有効に機能し続ける。


















