ニューヨーク郊外のアートセンター「Dia Beacon」を訪れた。マンハッタンのグランドセントラル駅から電車で約90分、ハドソン川沿いに北上したところにある。Beaconは静かな町で、人口は15,000人に満たない。
駅から徒歩10分弱のDia Beaconの建物は、かつてナビスコの箱印刷工場だった。工場の建物がアートセンターに転用されるのはよくあるケース。広くて頑丈で天井が高く、大型作品の設置にも便利なのだろう。
ここもシンプルな造りながら天窓からの外光が明るく、作品が映える。こういう空間でのアート鑑賞はそれだけで期待値が高まる。
館内はアーティスト別に仕切られ、主に1960年代から70年代のアメリカのアートが展示されている。
入口から近く最も大きな部屋の一つがウォーホルの「Shadows」。色の違う大型の102枚の絵が四方の壁をぐるりと囲む。Diaは持っていた他のウォーホル作品をピッツバーグのアンディ・ウォーホル・ミュージアムに寄贈してこれだけを残したそうだが、一作品で十分なインパクト。
立体作品も迫力ある大型のものが多い。床に開いた大きな四角と丸の穴はマイケル・ハイザーの「North, East, South, West」。
メザニンスペースにはリチャード・セラの巨大彫刻が3つ並ぶ。中が一つの空洞になっているものも、くるくると細いらせん状の通路が中に続いているものもあり、くるくるに入ってしまうと出られなくなりそうで少し不安になる。
セラ以外も、その時代を代表するドナルド・ジャッド、ダン・フレイヴィン、ソル・ルウィットなどミニマリズムのアーティストの作品が多数見られる。
2階では少し低い天井の下でルイーズ・ブルジョアの蜘蛛がやや狭そうにしていた。蜘蛛だけではなく彼女の他の彫刻作品も展示されている。
ニューヨークではマンハッタンにも素晴らしいミュージアムやアートギャラリーがたくさんあるが、ちょっと足を延ばすと、サイトスペシフィックで大規模な展示が見られる郊外ならではのアートがある。日帰りの遠足気分で行くのも楽しいし、ゆったりした時間を過ごせる。
尚、マンハッタンから電車で行く場合、行きも帰りも1時間に1本しかないので、電車のスケジュールを事前に調べ、それに合わせて入場の予約をして行ったほうがいい。
Dia Beaconでは8エーカーの屋外スペースを増築中で、2025年中に公開される予定とのこと。また楽しみが増える。