2022年5月31日火曜日

和束の茶畑ウォーク

日本人にとって5月といえば新茶の季節! 宇治茶の主産地・和束町のお茶畑を見に行った。

京都府南部にある和束町のお茶栽培の歴史は鎌倉時代に遡り、その茶畑景観は文化庁認定日本遺産に選ばれている。和束町は「日本の最も美しい村」連合にも加盟していて、とにかく美しいビジュアルを誇る茶畑なのだ。

京都駅からJRで約1時間、加茂駅で降り、バスに乗って約10分(このバス、1時間に1本しかないので事前によく確認を)。和束高橋というバス停で降りた。他に降りる人もなく、ここでいいの?と思いながら静かな坂道を上がっていくと、景観ポイントをを示す案内看板があった。親切!

約10分で「石寺の茶畑」に到着。深い緑色の茶畑が美しい!


山の斜面を覆うように広がる起伏ある茶畑はこの地域の特徴。寒暖の差で朝霧が発生し、コクのある茶葉が育まれるのだそう。まるでワイナリーのブドウのよう。



お茶の産地では茶摘み体験なども人気だが、ここ和束では何といっても風景を楽しむのがお勧め。茶畑の間を抜けるウォーキングルートがいくつか設定されていて、ビューポイントも数か所ある。どこでバスを降りてどう歩くか、興味や時間に合わせて計画してから行くといい。

途中で角を曲がって農道に入る。どちらかというと林道では?と思いつつフィトンチッド満載の雑木林の中を進む。時々、農家の軽トラックが通り過ぎる。

やがてコンクリートの道に出て、看板に従って「弥勒摩崖仏」に続く細い道を行く。ここで初めて、町を東西に流れる和束川に出会った。


川沿いに直立した花崗岩に掘られた摩崖仏は身長3メートル以上もある。1300年4月の銘があり、700年以上もこの地を見守ってきた存在。

更に雑木林を歩き「和束茶カフェ」に到着。カフェというより土産店兼案内所。一般的にはここを散策のスタート地点にするらしい(私はゴール地点にした)。歩いている間はほとんど人に会わなかったのに、ここだけはシニア層のツアー客で賑わっていた。

「和束茶カフェ」を和束町の真ん中として西半分のコースをややハイペースで一方通行で歩き、かかった時間は1時間強。近くの「和束山の家」バス停から駅に戻った。

そういえば、お茶を見ただけで飲んでいなかった。京都駅で新幹線に乗る前、お茶のペットボトルを買おうと探したが、置いてあるのはなぜか「静岡茶」ばかり。そうか、ここはJR東海だった…。和束のお茶は和束で飲んでおきましょう!


2022年5月30日月曜日

夕暮れの無鄰菴

5月中旬の夕刻、京都の南禅寺近くにある庭園「無鄰菴(むりんあん)」に伺った。

無鄰菴は政治家・山縣有朋が1896年に造らせた別邸で、日露戦争開戦前に山縣が伊藤博文などと会議をした場所としても知られる。歴史的背景はさておき、純粋に庭園として素晴らしい。

作庭は七代目小川治兵衛。山縣のオーダーは「東山の山並みを眺めるための庭」だったそう。あくまでメインは東山の借景。治兵衛が応えて作ったのは、東山の風景と一体化した見事な自然の再現だった。それまで主流だった枯山水のような見立てとは一線を画した、琵琶湖疏水を引いたせせらぎが流れる里山のような庭。以降、これを自身のスタイルとして確立した治兵衛は、南禅寺界隈の別荘地で多くの近代的日本庭園を手掛ける。

無鄰菴は閉園後の時間帯はプライベート利用に提供されている。日没が遅い今の時期は、昼間の明るさから次第に暮れゆく空の下で移り行く庭園の表情と、やがてライトアップされた夜の庭園を楽しめる。


山縣の庭園としては東京の椿山荘も有名。椿山荘はあまりに広大で、雲海でも発生させたくなる気持ちもわかる。無鄰菴は軽く散策して一周できる大きさ。雲海はないけれど、日没後、琵琶湖の水に導かれたように野生のホタルが飛んでいた。