今年4月にパリにオープンした話題の新スポット「アトリエ・デ・ルミエール(L'Atelier des Lumières)。
2019年1月6日までのメインのオープニング・プログラムは「グスタフ・クリムト」と「フンデルトヴァッサー」(なぜかいずれもオーストリア)。エゴン・シーレもあったし、他にもいくつかショートプログラムが挟まれる。プロヴァンスの「カリエール~」が印象派中心なので、敢えて違うテイストを持ってきているのかもしれない。
ここは、東京などでも最近増えている、いわば「没入型デジタル・アート・ミュージアム」。オープンから7か月経っても入場待ちの列ができている。平日は窓口で当日券も買えるが、土日はオンラインの事前販売のみ。このときは金曜午後の時点で土日のチケットは全て売り切れだった。
建物は19世紀に作られた鋳造所。繁栄の後、大恐慌で閉鎖され、その後ずっと放置されていたのが、5年ほど前に再発見された。当時、ボー・ド・プロヴァンスの古い石切り場を使った「カリエール・ド・ルミエール」を成功させたCulturespaces社が目をつけ、パリで同様のプロジェクトを立ち上げる場所に選んだ。
一歩中に入ると、絵に包まれる。無数のプロジェクターから壁と床一面に映像が投影され、床を見ているだけでも、ここが19世紀頃の宮殿になったり、目まぐるしく変化する空間に引き込まれていく。
一番人気のクリムトのプログラムでは、有名な「接吻」を含むクリムトワールドがダイナミックに展開する。
ちょっと意外だったのは見る人たちの「作法」。あおおかたの人が一つの場所にとどまって映像を鑑賞し、一つのシークエンスが終わると皆、拍手をして、次のプログラムまでの間に場所を移る。まるで映画か寸劇を見にきているような冷静さなのだ。
5年ほど前に訪れたプロヴァンスの「カリエール~」では、(記憶では)敷地がもっと広かったこともあり、皆、映像の中を自由に散策して楽しんでいる感じだった。イマーシヴという意味では、そちらのほうが自然だったように思う。
どちらがいいということはないし、また、仕組みにもそう違いはないはずなのだが、パリの「アトリエ・デ・ルミエール」はシアター、プロヴァンスの「カリエール・ド・ルミエール」はエクスペリエンスという表現が近いように思った。でもいずれも、大人から子供まで、幅広い層がアートを楽しめるスポットではある。
行かれる際は、オンラインで事前にチケットを買うのをお忘れなく。