2014年12月19日金曜日

オーガニック農園にて

畑でもぎたてのトウモロコシを生で食べたこと、ありますか?

先週末、マレーシアのオーガニックリゾート「The Chateau」を訪問。3年前のオープニングの時はビニールハウス一つ分しかなかったオーガニックファームは、今や立派な大農園に。リゾートの野菜や果物類はここから調達される。


スタッフの方がセージ、ローズマリー、タイム、レモングラス、パセリなど、フレッシュなハーブを摘んで渡してくれた。香りがいいのはもちろん、その色や形の美しさにも感心する。


そのままサラダになりそうな生き生きしたレタスも、農薬を使っていないので、摘んで食べても安全。

ただ、農薬を使わないということは、害虫も発生しやすいということ。作物がいっぺんにだめになるリスクもある。スタッフは広い敷地の作物を一つ一つチェックして、手作業で虫を排除する。大変な仕事だと思う。

そうやって大切に育てられたトウモロコシを、スタッフはその場でもいで、皮をむいて手渡してくれた。ほんとに生で食べておいしいの?と半信半疑でかじってみると、その甘さに驚愕!新鮮な実の甘みと水分が口に広がる。


この味を知っている人にとって、美味しいトウモロコシは生で食べるのが当たり前で、蒸したり焼いたりするのは甘くないトウモロコシだけだそう。これまでの人生で私は、トウモロコシに対してもったいないことをしてきたのか、それともだまされてきたのか?

食はその人を作るという。ピュアなものを食べないと。


2014年12月14日日曜日

リニューアルオープンしたピカソ美術館

パリのピカソ美術館。5年間の大規模な改修を経て、この10月25日にリニューアルオープン。10月25日はピカソの誕生日だそう。

待ちに待ったオープンから1か月以上が過ぎても、入場待ちの長い列ができていた。(チケットは事前予約したほうがベター。)

世界のピカソ美術館の中でここは最も所蔵作品数が多く、その数5000点。展示スペースが拡張され、5フロアに渡ってピカソの作品群と、彼の個人コレクションが展示されている。ピカソの作品は時系列で展示されている。手渡されるブックレットを見ながら鑑賞すると、各時代の特徴や背景が一層理解しやすい。

パッと見て誰もがピカソと認識する作品から、これもピカソなの?と思うような作品まで、次から次へと目に入ってくる。今さらここで述べることでもないが、10代の頃にすでに発揮していた才能や、一生を通しての幅広い作風に改めて驚愕する。そしてその色の豊富さに、心が躍る。

3階に展示されたピカソが保有していたコレクションも必見。セザンヌ、ゴーギャン、マティス、ルソー、ジャコメッティなどの名作が並ぶ。




あまりの作品の多さに、見終わる頃は軽い疲労感を覚えるくらいだった。「ピカソのルーブル」という感じ。充実感はこの上ない。

マレ地区にあるこの美術館の周りには、素敵なブティックやカフェだけでなく、面白いアートギャラリーも多い。是非、半日はかけて行きたい。





2014年12月12日金曜日

ブローニュの森に浮かぶ船 Fondation Louis Vuitton

パリのブローニュの森に、この10月27日にオープンしたルイ・ヴィトン財団美術館(Fondation Louis Vuitton)。構想12年、万を時しての完成は大きな話題となった。

フランク・ゲーリーによる建物は、全体像をカメラに収めるにはかなり離れなくては無理(だから今回は諦める)。たくさんの船倉が組み合わさったようなガラスのシェルに覆われた建物は、一艘の巨大な船のようにも見える。



訪問時は次の企画展の準備期間だったが、建物の見学はできるので、多くの人がチケットを買って入場している。中のギャラリーではゲーリーの12年間のデザインの変遷を追った展示が見られた。

実際に使われたプロトタイプのモデルの数々を、訪れた人々は皆、興味深そうに眺めていた。これほど建物とその建築家がフィーチャーされる美術館も珍しいのではと思うほど、ショップもゲーリー一色。
建物内を順に見ていくと屋上のテラスに出る。屋上といってもフラットなスペースがあるわけではなく何層にも分かれていて、極めて曲線的で左右対称なところがひとつもなく、歩いて進むごとに違った風景が現れる。究極の多面体の中にいるような感じ。



ちなみに1階のロビーのカフェの上を泳ぐ魚のオブジェもゲーリーによるもの。


今後も注目の企画展が目白押しのフォンダシオン・ルイ・ヴィトン。行くなら建物鑑賞もお忘れなく!





2014年12月7日日曜日

カンヌでアート鑑賞したいときは

カンヌには素敵なミュージアムが皆無に近い。
隣のニースには、マティス美術館、シャガール美術館など有名な美術館が何軒もあるのに、「カンヌ  美術館」で検索しても近くのアンティーブのピカソ美術館が出てくるだけ。

そんなカンヌで唯一チェックすべきは「マルメゾン (Centre d'Art La Malmaison)」。クロワゼット沿い、リッツカールトンの隣にある。それなりに目を引く建物だが、あまり知られていない。

元はグランドホテルの一部だった建物をカンヌ市が買い取り、2001年以降、年に2、3回企画展を開催している。20世紀、21世紀のアーティストにフォーカスし、ピカソやミロなどの他、日本では見る機会が少ない数々のヨーロッパのアーティストたちの作品も展示してきた。

今回の訪問時には、フランスの抽象画家ジャン・フォートリエの回顧展を開催中。タシスムの代表的な作家としてしられるフォートリエについては、偶然にも今年、日本初の大規模な回顧展が東京で開催されたばかり。まだ大阪に巡回中だったので、主要な作品は日本に行っていたと思うが、それでも作家の特徴を理解するに充分な作品群が展示されていた。

マルメゾンの展示の説明書きは、全てフランス語のみで、英語は併記されていない。海外からカンヌに来る人のほとんどは、毎週のように開催される何らかの見本市に参加するビジネス客。コートダジュールという場所柄、どの業界でも見本市期間中は商談と、ビーチ沿いでのランチと、夜のパーティに明け暮れる。昔から変わらないややデカダントな数日間。そして見本市が終わると皆すぐにカンヌを後にし、帰路につくか、週末をヨーロッパの他の都市で過ごす。カンヌでアート鑑賞モードに入っている人のほうが珍しい。だから非フランス語圏の人たちは最初からあまりターゲットにされていないのだと推測する。

でも、カンヌに仕事で来て、連日のランチやディナーで食傷気味のときは、ランチを一度スキップし、マルメゾンで静かにアート鑑賞してみるのも悪くないと思う。(マルメゾンは13時から14時は昼休み)








2014年11月30日日曜日

モーガン・ライブラリー

マンハッタンの36丁目にあるモーガン・ライブラリーは、アメリカの銀行家J.P.モルガンの個人コレクションを公開したミュージアム。観光客にはMETやMOMAほど知られていないかもしれないけれど、ミュージアムとしてだけではなくアカデミックな研究所としての役割も持ち、地元の知識層にも一目置かれる存在。古代から近代に及ぶ貴重なコレクションを持ち、特に手稿や本など「書かれたもの」にフォーカスしているのが特徴。

必見はモルガンが収集した膨大な数の希少本を収蔵した部屋。中央にかかった16世紀オランダの大きなタペストリーの部分を除き、壁は三層の書棚で埋め尽くされ、その上にはヨーロッパの宮殿のような天井画。この圧倒的で独特な部屋は、他に類似するものを思いつかない。


期間限定の企画展も常に開催されている。今回、エントランスを入ってまず目を引いたのは、吹き抜けのロビーのカラフルなガラスのインスタレーション。このスペースは2006年にレンツォ・ピアノの設計により既存の二つの館をつなぐ形で増設され、現在のメインエントランスとなっている建物。インスタレーションはスペンサー・フィンチによるもの。全体的に重厚でクラシカルな雰囲気を持つモーガン・ライブラリーにおいて、このピアノとフィンチの美しいコンビネーションのギャップには意表をつかれるが、このライブラリのメインを成す中世から近代の所蔵品の展示への期待も高めてくれる。


この作品、常設にしてほしい!







2014年11月22日土曜日

グッゲンハイム美術館でカクテル

ニューヨークのグッゲンハイム美術館を会場にしたカクテルパーティに出席。

通常の営業時間が終わった夜、美術館は華やかな社交の場に変身。1階ロビー中央にバーカウンターと花が設置され、周りに人々が集う。

らせん状の廊下を上がっていく展示スペースへは自由に行き来でき(ドリンクは持ち込み不可)、エクスクルーシヴなナイトミュージアム状態。ちょうど、1950-60年代に活躍したドイツのアーティスト集団Zeroの企画展「Zero: Countdonw to Tomorrow」を開催中で、イヴ・クラインやフォンタナなどを含む数十点の作品を鑑賞できた。

人々がこのパーティに来るメリットを3つ挙げるなら、
1.社交
2.お酒
3.アート鑑賞
だと私は思っていたが、大多数が1.と2.に夢中で、展示スペースに上がってくる人はごく少数。まあ、フランク・ロイド・ライト設計の建物そのものも、会場として十分に魅力的だけど、私が主催者だったら、意図が外れてちょっとさみしいと感じるかも。

器も楽しめるパーティは、素敵だと思う。


 
 
 
 

2014年11月9日日曜日

アートなクチュール 「エスプリ ディオール」展


銀座を歩いていたら、突然視界に入ってきた見慣れない黒っぽいビルに思わず足を止める。黒服のスタッフが立つ入り口に、人が次々に入っていく。

見上げると「エスプリ ディオール ディオールの世界」の看板。期間限定のディオールの展示。

吸いこまれるように入口をくぐった。




謎の黒いビルの中は、それはゴージャスで美しい空間!
4フロアにわたり、まさに「ディオールの世界」が展開されている。

アーティストたちと親交を深めた若き日のディオール、そして1947年に初のオートクチュールコレクションを発表してから今日までのメゾンの軌跡が、代表的なドレスやバッグ、映像や写真などで紡がれる。

1920年代、コクトーやダリ、サティなどと交流を持ち、現代音楽の作曲家たちとピアノの即興演奏に興じ、更には自身のアートギャラリーを開いてピカソ、ブラック、マティスなどの作品を世に紹介したという、若くしてすでに驚くべきパトロン的要素を持っていたディオール。

ディオール本人が亡き後も、アーティストとのコラボレーションは多い。

ウォーホルの「レディ・ディオール」
でも、何より目を見張るのは、ディオールの作品そのものが持つ芸術性。
女性の美しさを際立たせる完璧なフォルムのドレスは、それぞれの時代や流行を彷彿とさせるにも関わらず、普遍的な美とエレガンスで現代人の美意識に訴える。
デザインという言葉では表しきれない、見る者をうっとりさせる魔法のような力。これを見てディオールを着たいと思わない女性がいるだろうか?

観終わった人たちがちょっと背筋を伸ばして出ていくような、そんな刺激を受ける展示。



*「エスプリ ディオール ディオールの世界」は2015年1月4日まで開催中(入場無料)。









2014年10月31日金曜日

「ザハ・ハディド」展で考えた未来の東京

東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「ザハ・ハディド」展。
建築家の回顧展から想像するものとは違う、独特の空間が展開されている。


展示は主に、実現したもの、しなかったものを含め、ザハの建築のドローイングや模型、デザインビデオなどで構成されている。最初の展示室の壁一面にかけられたドローイングはまるで、カンディンスキーの抽象画かマティスの切り絵のような印象。建築のデザインとは思えない不思議な雰囲気に惹かれ、じっと見入ってしまうが、実際に建築物として完成した姿は、少なくとも一般人には、想像できない。

80年代、時代や技術が追いつけず、ほとんどが実現しなかったという彼女のプロジェクトの中には、東京の麻布十番や富ヶ谷に建てられるはずだったビルもあった。けれどそれらが実現していたとしたら、後になってバブル期の象徴としてひとまとめに葬り去られた可能性もあったわけで、実現しなくて良かったのかな、と思う。

ザハの斬新で独特な建築は、現在は世界のどこの都市においても、「溶け込むもの」としてより「際立つもの」として存在している。2020年に向けた新国立競技場のコンペも、「未来を示すデザイン」であることが審査のポイントになったという記事を読んだ。つまり今から6年後の東京において未来的であることを求められていたわけで、景観との調和は最初から考えられていなかった。ランドマークとはそういうものかもしれない。

未来のいつか、ザハ・ハディドの建築が東京の街並みに溶け込む日が来るだろうか。



2014年10月25日土曜日

チューリヒ美術館展で感じた豊かさ

国立新美術館で開催中の「チューリヒ美術館展」。
カラフルで、複数の意味で「豊かさ」を感じる展示。

チューリヒ美術館のコレクションの中でも、とりわけ日本人に馴染みがある作家や時代の作品を選んだことがわかる。「すべてが代表作」という謳い文句そのままに、話題のモネの幅6mの睡蓮の大作の他、セザンヌが好んで描いた「サント・ヴィクトワール山」から、ピカソ、ゴーギャン、マティス、ダリなどそれぞれの作家の特徴がパッと見てわかる作品、「叫び」しかイメージされないムンクによるテイストの違う肖像画、そしてセガンティーニやホドラーなどスイスゆかりの作家の作品まで、ひとつひとつが目を引く、充実したラインアップ。

そして作品の多くが鮮やかで豊かな色彩に満ちていることも、この展示のひとつの特徴。

チューリヒ美術館の所蔵作品10万点のうち、3分の2が寄贈とのこと。金融都市チューリヒの経済的豊かさはもちろん、人々の優れた審美眼、そして市民の芸術鑑賞環境の豊かさを思った。

(チューリヒ美術館展は2014年12月15日まで国立新美術館で開催)

2014年10月24日金曜日

青参道アートフェア

表参道から青山通りに抜ける裏道に「青参道」という名前がついていることを昨日初めて知った。きっかけは、インターネットでたまたま見つけた青参道アートフェアというイベント。

今週木曜から日曜の4日間のみ開かれているこのイベントは、アートを身近に楽しむことを知ってもらおうという趣旨で、表参道・青参道の40軒近いギャラリーやショップを会場に、アフォーダブルな価格のアート作品を展示・販売している。エスパス・ルイ・ヴィトンなど展示のみのところもあるが、他はほとんどの作品が購入可能。

参加している各ショップの入り口には、目印のブルーとシルバーの風船が揺れており、夕暮れ時を過ぎた暗がりでも見つけやすい。

イベントの今年のテーマは写真。作品はショップのインテリアの一部となって、さり気なく展示されている。

このアートフェアのあり方は、アーティストにも店や地域にもいい相乗効果をもたらしていると気付く。

普段、無目的に初めての店に入ることをしない人にとって、アートを見ることは店に入る格好の目的を与えてくれる。このイベントがなければ存在に気付かなかった店を知るきっかけにもなる。店の人も、客がアート目的で来ていることをわかっているのでしつこく接客せず、客は心地よい距離感の中で鑑賞できる。そして、意外と自分の好みに合うものを置いている店だと気付くことだってある。

実際私も、このイベントがなければ一生足を踏み入れなかったであろう、建物の2階にあるブティックに上がって行き、そこでスカートを衝動買いした(アートではなく)。


アートもギャラリーの白い壁ではなく、普段のコンテクストの中で展示されているので、自宅での飾り方がイメージしやすく、購入に結びつくかもしれない。

地域振興の一環で開催されるビエンナーレなどのアートイベントは多いが、イベント終了後のリピート客に繋げるイベントの在り方としては、青参道アートフェアは上手だと思った。






2014年10月17日金曜日

The Mirror 銀座に出現したアートスペース

23日間限定で銀座で開催中のアートイベント「The Mirror」へ。

会場は「名古屋商工会館」という、銀座4丁目とは思えない名前のビル。1930年に建てられたこのレトロなビルは、もうすぐ取り壊しが予定されており、一棟丸ごと、コンテンポラリーアートスペースとして最後の活躍をしている。

美術展には珍しく当日券はなく、完全事前予約制。そう言われると一瞬、面倒くさ、と思ってやめそうになるが、そこで踏みとどまる人だけを集めるにはいい方法かもしれない。

各日400名限定という定員は、建物の構造にも配慮してのことらしい。

各フロアは狭い廊下に沿った小さな部屋に分かれていて、それぞれのドアにアーティストの名前が書かれている。この古い校舎のような、実験的展示スペースみたいなところに、アニッシュ・カプーア、イ・ウーファン、名和晃平などなど、国内外の多数の著名アーティストの作品が集まっているのだから、すりガラスがはまった小さなドアを開けるたびに、ちょっとわくわくする。

それぞれの部屋に、それぞれの世界。


様々なミクロコスモスに入り込める、上手な展示だった。


*The Mirrorは2014年10月16日から11月9日まで開催。


2014年10月4日土曜日

自然とアート in Sapporo

北海道には自然とアートを楽しめる場所がいくつかある。札幌にある二つのアートスポットも例外ではないが、その二つは似ているようで、ある意味では対極にあるのが面白い。

一つは札幌駅から南に17kmほどのところにある「札幌芸術の森」。ここは自然環境の中に、芸術に触れられる場所をという趣旨で作られたアートパーク。訪れたときは第一回札幌国際芸術祭(9月28日で終了)を開催中で、その展示作品を見に行くのが当初の目的だったけれど、結果として常設の野外美術館にはまってしまい、そこで長い時間を過ごした。

丘陵地帯に広い敷地を有する札幌芸術の森には、美術館や工房などアート関連の建物がいくつかあり、背後の丘に広がる森が野外美術館と呼ばれている。


国内外の作家の70以上の彫刻が配置され、それらの多くが、作家が実際にこの土地を訪れ、土地に合わせて作ったものらしい。作品を巡る散策路にも自然ならではの無秩序な起伏があり、スニーカーでないと時折歩きづらいと感じる。作品の個性もそれに合わせたかのようにバラバラ。自分が気に入るものを探しながらちょっとしたハイキングが楽しめる。


もう一つは、モエレ沼公園。イサム・ノグチがマスタープランを作ったことで知られ、札幌から北東に車で30分ほどの距離にある。札幌の市街地を緑地帯で取り囲む「環状グリーンベルト構想」の一部としてごみ処理場の跡地に設計された。


こちらは、いわば作られた自然。自然の中にアートを作ったのではなく、自然を作ったアート。公園全体がノグチのひとつの彫刻作品となっている。

公園に象徴的にそびえるモエレ山も、不燃ごみを積み上げて造成されたものだが、遮るものがない空をバックに映える美しいフォルムには、圧倒的な存在感を感じる。


同じくモエレ沼公園にあるガラスのピラミッドの中から見上げた空にも、しばし見とれてしまった。不思議なもので外で直に見るより、このガラス越しに見たほうが青空が一層迫ってくる気がした。

モエレ沼公園は北海道の大空と上手に融合したアートだと、後で思った。


2014年7月27日日曜日

ハワイ島のファーマーズ・マーケット

今年のハワイ島では、ファーマーズ・マーケットが存在感を高めている。

地元で採れた新鮮な野菜や果物、花などを売るファーマーズ・マーケットは、もともとハワイ島各地のコミュニティで定期的に開催されていたが、今年はそれがワイコロアやマウナ・ラニなどのリゾート内にも進出してきたのだ。週に1回、朝から午後までテントが並ぶ。

とはいえ、リゾート地の客はホテルに泊まっていたり短期滞在だったり、本格的に食料品を買い込む人たちばかりではないので、出店者の数も多くはなく、野菜や果物を売るテントは1店か2店程度。あとはほとんどがリゾート客向けのアクセサリーやナチュラルソープなどを売っている。リゾート内には大きなスーパーもあるし、必要から生まれたマーケットではなさそうだが、それでも、本格的なマーケットに行く時間も理由もないリゾート客が、ちょっとしたマーケット気分を味わえて、地元のスモールビジネスの商品に触れる機会が増えるのは、それなりに意味がある。



南国の果物がぎっしり並ぶ様子を見たい!という人は、カイルア・コナのファーマーズ・マーケットが手軽でお勧め。毎週水曜日から日曜日まで開催されているマーケットには、朝採れたばかりの新鮮な葉物野菜や、マンゴー、パイナップル、パパイヤといったトロピカルフルーツ、生花のレイなどを売る店がずらりと並ぶ。場所柄、半分は観光客を意識したアートやアクセサリーなどの店も並ぶが、土産物店とは違うここにしかないものを見つけるのも楽しい。

果物を選ぶのに迷ったら、店の人の目利きに頼るのが正解。たくさん並ぶマンゴーから「明日食
べごろのはどれ?」と聞いてお店の人が選んでくれたのは、確かにその通り、甘さぴったりのマンゴー!

2014年7月12日土曜日

アールデコ・ハワイ

ホノルル美術館(Honolulu Museum of Art)はワイキキの喧騒から少し外れたダウンタウンの近くにある。


1920年代にBertram Goodhueという建築家が中国と地中海の建築の要素を取り入れてデザインしたという建物は、そう聞けば納得する独特の雰囲気がある。ハワイのアートだけでなく、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの幅広いコレクションを収める場所としても、一見、国籍不明なこの場所はふさわしく、中庭に差し込む明るい日差しがハワイらしさを保って気持ちのいい空間になっている。

ちょうど「Art Deco Hawaii」という企画展が始まったばかり。アールデコというと幾何学的でシンメトリーなデザインをイメージするが、ハワイのアールデコはもっと鮮やかで、自然で、ストーリ性に富んでいる。二つの大戦の間に生まれたデザインや装飾美術のムーブメントという点では西洋と同じだが、ハワイのアールデコは、商業的なコミッション制作だったにせよ結果としては、その自然や風土を美しく表現するだけでなく、19世紀末にアメリカに併合され消滅したハワイ王国の歴史を伝える手段としての役割も持っていたことがわかる。

20世紀のハワイアンアートのひとつの側面を紹介した興味深い展示だった。

*「Art Deco Hawaii」展は2015年1月11日まで開催中。

2014年6月28日土曜日

ケラマブルー 魚とサンゴが近い海

先週、梅雨明けの慶良間諸島へ。


20余りの島で構成される慶良間諸島は今年の3月5日に国立公園に指定された。今回訪れたのは慶良間の有人島では最も人口が多い渡嘉敷島(といっても700人くらい)。メインの阿波連ビーチの周辺には、たった1軒の商店と、数えるほどの海の家や民宿などがあるだけで、最近少し忘れていた「スローライフ」という言葉を思い出した。現代のスローライフではなく、昔のまま時がゆっくり流れているような感じ。

梅雨明け直前の南国の空は、滝のようなコールが降ったかと思えば、何事もなかったように晴れ間が出たりという気まぐれさ。阿波連ビーチではインストラクター(ガイドさん)と一緒なら遊泳区域の外に出て泳げるので、晴れ間を狙ってシュノーケリングをした。

サンゴが近い!

黄色やブルーの美しいサンゴ礁が、気を付けないとひざをすりむいてしまう程の浅瀬から沖まで広がり、大小様々な色とりどりの魚たちが暮らしている。イソギンチャクの中に隠れるクマノミも間近で観察。海の世界に急接近できる。

魚たちは人懐っこいというか、人が近づいても逃げない。他の海ではよそよそしいチョウチョウウオなんか、逃げるどころか人に寄ってきて伴走(伴泳?)さえする(これは餌付けの影響もあるそうだが)。クマノミの写真を撮ろうとしていたら、遮るようにレンズの前にしゃしゃり出てきたし。

ビーチからすぐの浅瀬でこれだけ豊かなサンゴ礁が保護されているのも国立公園たる所以だろう。海の透明度の高さはここで述べるまでもない。

今後ますます注目度を上げるであろう「ケラマブルー」を求めて、更に幅広い層の人々が、日本国内だけでなく、海外からもやってくるに違いない。

慶良間での宿泊は、一部のプチホテルを除いては民宿かペンションのみ。でも那覇から高速船で最短30分程度なので、沖縄本島に宿泊して日帰りすることも十分可能。必ずしも高級ホテル開発は必要ないかもしれない。

今はなんと中高生の修学旅行が、島の観光産業を支える重要な要素になっていることも知った。オフシーズンは誰もいない海ではなく、時間帯によってはビーチは中高生のアクティビティで占領される。島が積極的に修学旅行を誘致するのは、宿が年間を通して一定の稼働率を維持するための策なのだろうが、それではちょっともったいない気もする。他の客層を遠ざけてしまうことにつながりかねないから。


梅雨明けの日の朝、修学旅行団体用のテントが畳まれ、まだほとんど人がいないビーチへ行った。これから夏が始まる。いっそう青い海を見て、ケラマは、媚びる必要なんてないデスティネーションだと思った。


2014年6月7日土曜日

上海 パワーステーション・オブ・アート

上海の黄浦江西岸、浦西(プーシィ)地区にあるPower Station of Art (PSA)。

ここは2010年のEXPOの開催地だが、今では当時のものすごい混雑の面影はない。近くには目立った商業施設もなく、アクセスもタクシー以外は便利とは言えない。

高さ165mの煙突が目印の建物は、19世紀末に作られた発電所。発電所としての役割を終えた後、EXPOの会場となり、その後2012年に中国本土で初めての公立のコンテンポラリーアートの美術館として再生された。

中国政府は公立ミュージアムの無料化を進めているそうで、ここも一部の企画展を除いて無料で観賞できる。


箱のような無機質な建物を入ると、広い吹き抜けのスペースにいくつかの大型の作品が置かれ、奥にある階段やエスカレーターが各階の展示室に導いている。



訪れた時は「Decorum:  Carpets and Tapestries by Artists」という企画展をやっていた。PSAとパリ市立近代美術館が企画した、6世紀から現代までの世界の様々な形態の「織物」を集めた展示。昔の無名作家の手織り絨毯から、20世紀のピカソのタペストリー、21世紀の現代アーティストたちによる布を使った自由な作品まで、また中国からは明時代の絹織物や、毛沢東の肖像の大きなタペストリーなど、産業と政治の歴史の文脈の中で、それぞれの作品が意味を持っている。


中でもちょっと面白かったのは、一見してカーペットだけど、よく見ると色違いのデジタル腕時計を並べた作品。時計は全て同じ中国製の安物で、作品が完成した2011年当時は完全にシンクロしていたのが、今ではすべての時計の時刻がずれていて、あちことでバラバラに「ピピッ」というアラーム音が聞こえるのがおかしい。


別のフロアでは日本の建築家・篠原一男の回顧展をやっていた。住宅建築を手掛けていた篠原氏の作品は、国際的にはむしろ彼の死後に注目されているそうで、彼のアジアでの回顧展はこれが最初らしい。

PSAはアートの展示だけではなく、アーティストやキュレーター育成のプラットフォームとしての役割も担っている。今はちょっと地味なこのエリアが、今後アートの街として発展していけば更に面白い。



上海 by day, by night

毎年恒例のラグジュアリートラベルのトレードショーで上海を訪問した。

新しい高級ホテルのオープンが続く上海では、老舗のホテルも次々にリノベーションに着手し、サービスとハードの両面でしのぎを削っている(同じ傾向は2020年に向けた東京でも見られると思う)。ブランドショップが並ぶ大通りがますます華やかさを増したように感じる一方、人と車の交通量の多さ、鳴り響くクラクションなど、混沌とした様子も相変わらず。でも、それが上海を一層エネルギッシュに見せる所以なのだと思う。

行く前から気になっていたのは大気汚染。PM2.5の問題が報道されて久しいが、上海の状況も良くはない。今回私は、大気汚染の度合いを示す「空気質指数(AQI)」というものを初めて知ったが、友人の北京在住の中国人の話では、毎朝AQIをチェックするのは当たり前で、彼はそれによってジョギングするかどうかを決めると言っていた。日本人が降水確率を見て傘を持って出るかどうかを決めるくらいの感覚かもしれない。

でも空気に関しては、マスクをするくらいしか防御の方法がない。タクシーで移動すればいいかというとそんなことは全くなく、ほぼ全てのタクシーがエアコンをつけずに窓全開で走るため、かえって排気ガスをまともに吸うことになるという、皮肉な事実。

部屋にいても、今年は昨年よりインターネット環境が悪くなっていた気がする(泊まっていたホテルの回線の問題もあるかもしれないけど)。以前からこのブログは中国からは見ることも投稿することもできなかったが、それ以外にも表示できないサイトが増えていた。

と、気になる点は色々あるにせよ、素敵な場所も多いのが上海。特にこの街は夜に魅力を発揮する。

外灘(バンド)の夜景は、何度見ても、昼間の街の喧騒を忘れさせる存在感がある。黄浦江添いに並ぶライトアップされた歴史的建築群は、新しい建築物では太刀打ちできない優雅な美しさを放っている。


洒落たレストランやバーなど、話題のナイトスポットが集まるのもこの地域。歴史的建築物のひとつの和平飯店をリノベーションしたFairmont Peace Hotel Shanghaiのルーフトップからは、対岸の高層ビル群の夜景が臨める。


いつ行っても外灘には独特の雰囲気がある。独自の速度を保っているようで、一番進んでいるような。そもそもここがなかったとしたら、上海の魅力は今と同じレベルであり得ただろうか?

私は外灘なしの上海には、きっと魅力を全く感じない。




2014年4月9日水曜日

レダン島でシュノーケリング

マレーシアのレダン島。
マレー半島の東にあるこの小さな島は、まだ日本ではあまりメジャーになっていないが、その海の美しさでは定評があり、世界中のダイバーたちが訪れる。島の周りの海は海洋保護区に指定されていて、マレーシアで最も美しい海という評価も目にする。


レダン島へのアクセスは、曜日によってはクアラルンプールのスバン空港かシンガポールから直行便があるが、それ以外の日はクアラルンプール国際空港から国内線で1時間のクアラテレンガヌまで飛び、そこからフェリーで100分、またはスピードボートで50分。日本からだと場合によってはどこかで一泊が必要。いずれのルートでも、ちょっとした「はるばる来た」感がある。

この島唯一の5つ星リゾートが「The Taaras Beach & Spa Resort」。目の前にはホワイトサンドビーチと遠浅の海が広がり、すぐ沖にはシュノーケリングもできるハウスリーフがある。

The Taarasのビーチの砂は、パウダーサンドという表現がぴったりのきめの細かい白い砂。海の水は暖かく、入るととても心地がいい。水の透明度は抜群。砂も細かい割に舞い上がっていないので、底までクリアに見える。

今回、私が最も楽しみにしていたのはシュノーケリング。到着した午後、早速ハウスリーフまで泳いだ。ビーチからはすぐ近くに見えたリーフだが、泳ぐと意外と遠い。それもそのはず。サンゴを保護する目的で、この海ではフィンの使用が禁止されているので、素足でパタパタ進むしかないからなおさら遠く感じるのだ。(あとで上から見たら、ビーチからリーフまで軽く100mは超えていた。カヤックとかで行くのが正解。)

そしてやっとたどり着いたリーフ。確かにサンゴもあるし、魚も泳いでるし、まあ、シュノーケリング向きだけど、期待値がものすごく高かっただけに、正直言ってびっくりはしなかった。(帰りの100mが更に長かったこと…。)

これでは「はるばる来た」甲斐がないので、翌日はシュノーケリングツアーに参加。リゾートから島の反対側、といっても車で10分程度のジェッティーからボートで沖に出る。ボートはジェッティーからわずか5分くらいのところで停まった。え、こんなに近くていいの?と思いながら、水に入ると・・・

魚に包囲されてる!

小さな魚たちが群れになって目の前を通り過ぎていくだけでなく、こちらに突進してくる(ように見える)。すぐ下には色鮮やかなサンゴが太陽の光を浴びている。魚はこちらを気にする様子もなく、平気で鼻先を泳いでいく。

見たかった風景ではなく、想像を超えた光景。
海の世界に溶け込んだような気分でしばらく泳いだ。

The Taarasには私が到着した日まで、地上波局のリゾート番組のクルーが撮影に来ていた。はるばる行く価値のあるレダン島の海の素晴らしさ、伝えてくれますように。

2014年1月23日木曜日

ハワイ島でクジラを見る

冬のハワイの名物と言えば、ホエールウォッチング。

回遊性のザトウクジラ(humpback whale)は、繁殖と子育てのために、暖かいハワイで冬を過ごす。
ハワイ島でも毎日たくさんのツアー船がクジラを探しに海へ出ていく。

クジラはビーチからでも見えることがあるほど陸の近くまで来ていて、私が乗った船からも出発してすぐに、並んで泳ぐ母子クジラの背びれが見えた。

でもその日のクジラたちは、なかなか近くに寄って全貌を見せてくれず、手(胸ヒレ)の写真が精いっぱい。


遠くて大きさがわからないなー、と思っていたら、船のすぐ脇に一頭のクジラが突然顔を出し、すぐに水中に潜りその巨大な影をアピールして行った!
演出上手。