北海道には自然とアートを楽しめる場所がいくつかある。札幌にある二つのアートスポットも例外ではないが、その二つは似ているようで、ある意味では対極にあるのが面白い。
一つは札幌駅から南に17kmほどのところにある「札幌芸術の森」。ここは自然環境の中に、芸術に触れられる場所をという趣旨で作られたアートパーク。訪れたときは第一回札幌国際芸術祭(9月28日で終了)を開催中で、その展示作品を見に行くのが当初の目的だったけれど、結果として常設の野外美術館にはまってしまい、そこで長い時間を過ごした。
丘陵地帯に広い敷地を有する札幌芸術の森には、美術館や工房などアート関連の建物がいくつかあり、背後の丘に広がる森が野外美術館と呼ばれている。
国内外の作家の70以上の彫刻が配置され、それらの多くが、作家が実際にこの土地を訪れ、土地に合わせて作ったものらしい。作品を巡る散策路にも自然ならではの無秩序な起伏があり、スニーカーでないと時折歩きづらいと感じる。作品の個性もそれに合わせたかのようにバラバラ。自分が気に入るものを探しながらちょっとしたハイキングが楽しめる。
もう一つは、モエレ沼公園。イサム・ノグチがマスタープランを作ったことで知られ、札幌から北東に車で30分ほどの距離にある。札幌の市街地を緑地帯で取り囲む「環状グリーンベルト構想」の一部としてごみ処理場の跡地に設計された。
こちらは、いわば作られた自然。自然の中にアートを作ったのではなく、自然を作ったアート。公園全体がノグチのひとつの彫刻作品となっている。
公園に象徴的にそびえるモエレ山も、不燃ごみを積み上げて造成されたものだが、遮るものがない空をバックに映える美しいフォルムには、圧倒的な存在感を感じる。
同じくモエレ沼公園にあるガラスのピラミッドの中から見上げた空にも、しばし見とれてしまった。不思議なもので外で直に見るより、このガラス越しに見たほうが青空が一層迫ってくる気がした。
モエレ沼公園は北海道の大空と上手に融合したアートだと、後で思った。