2023年10月10日火曜日

香港 M+

2021年11月に香港の西九龍文化地区(West Kowloon Cultural District)にオープンし、世界的な話題となった「M+」。遅ればせながら最近ようやく見に行った。

M+はアジアで初めて20世紀以降のビジュアル・カルチャーに特化した美術館。ヘルツォーク&ド・ムーロンがデザインした建物の中に、17,000平方メートルもの展示スペースを持つ。ヴィクトリア・ハーバーに面した壁面は巨大なLEDディスプレイになっていて、夜は向かいの香港島から見ても良く目立つ。



M+のコレクションはアジアの絵画、彫刻、写真、版画などのほか、デザイン、建築、映像まで、視覚的なものを幅広くカバーしているのが特徴。特にデザインの分野では日本が占める比率が高く、日本人にとっては懐かしいものも多い。メディアでよく紹介されているのは、倉俣史朗氏が内装を手掛けた80年代の新橋の寿司店「きよ友」をそのまま移築した展示。のれんをくぐって店内の様子も見られる。


他にもダイハツミゼットやソニーウォークマンなど、戦後の昭和で一世を風靡したヒット商品の現物が並ぶ。最近の80年代ブームのように、古いものが逆に新鮮に見える。


ポスターやCM映像を展示した一角からは「グランバザール♪グランバザーアーー♪」という聞き覚えのあるCMソングが! 思い出すことはなかったかもしれないものと、時を経てこうして香港の美術館で再会できたことが、なんだか不思議で感慨深い。


M+のもう一つの柱は、1970年代から40年間の中国美術を集めたシグ・コレクション。最も包括的な中国現代アートコレクションとされるが、中国政府が最も検閲に目を光らせる部分でもある。残念ながら訪問時はシグ・ギャラリーが展示準備中で閉鎖されていたので、全貌は見られなかった。また次回。


地下1階では草間彌生のインスタレーション「Dots Obsession」に人が集まる。巨大水玉に圧倒される楽しい空間。


3階のルーフガーデンはお勧めの写真スポット。西九龍文化地区全体が見渡せ、対岸の香港島の風景も臨める。


西九龍文化地区は、40ヘクタールの埋め立て地に新たな活気ある文化地区を造る一大プロジェクト。現在はM+のほか、香港故宮文化博物館やパフォーマンスセンターがあり、ウォーターフロントプロムナードを散策できるアートパークがそれらをつなぐ。2024年にはシアターコンプレックスも完成予定。

M+とこの地区が、アートを通じて様々な声や文化を世界に発信し続けられますように。


2023年10月9日月曜日

ドバイのアート地区

ドバイで質の高いアートホッピングを楽しむなら、アルサーカル・アヴェニュー(Alserkal Avenue)へ。

オープンは2008年。倉庫街だった場所がアートやカルチャーのハブとして再生された。現在は約20軒のアートギャラリーの他、デザインやアート、ファッション関連の企業やショップ、飲食店など計約80のテナントが入る。


訪れたのは気温40度を超える午後で人影はまばら。開いていたアートギャラリーを順に巡る。建物の中はエアコンでキンキンに冷えている(生き返る!)

ギャラリーによって扱うアーティストはインターナショナルだったり、中東、アフリカ、アジアなどの地域に特化していたり、新進アーティストから著名な現代アーティストまで幅広い。どのギャラリーもおしなべて作品のレベルは高く、展示も洗練されている。きっと中東各国や世界から訪れるハイエンドなアートコレクターを顧客に持っているのだろう。



でもアルサーカル・アヴェニューは、一部のコレクターだけをターゲットに作られたわけではなく、地元のクリエイティブコミュニティの創生や、アーティストの育成の拠点となることをミッションとして今日まで発展してきた。

立ち寄ったお洒落なカフェでは、自家製パンのサンドイッチのレベルも高かった。チェーン店を安易に入れず、厳選したローカルビジネスで固めているのがわかる。時間があればアート以外のお店もチェックしてみると、ハイブランドのショッピングモールとは違うドバイローカルの魅力を発見できるはず。

そんな文化的地区で暮らす猫は、灼熱の太陽の下、シャンとして行儀が良かった。


アルサーカル・アヴェニューの開発はこれからも続きそう。また行ってみたい。



2023年10月6日金曜日

ドバイフレーム

街中にそびえたつ黄金の額縁。未来的な高層ビルが並ぶドバイで「Museum of the Future」と同様に独自路線を行くその建物は「ドバイフレーム(Dubai Frame)」。


高さ150m、幅95m。巨大過ぎるし、周りとの調和など全くないマイペースさは、シュール過ぎて笑ってしまう。

2018年にオープンしたドバイフレームは、二本の垂直なタワーを水平なブリッジでつなぐ構造になっている。なんでも世界で最も高い額縁型建造物としてギネスにも認定されている(そりゃそうでしょうよ。他にもあるの?)

でも、ただ奇をてらっただけではなく、その形にはちゃんとした目的がある。額縁の3辺を使ってドバイの過去、現在、そして未来を見せるアトラクションなのだ。

見学は片方のタワーの低層部にある「オールド・ドバイ・ギャラリー」からスタート。漁村だった頃の様子や、当時の人々の暮らしや、市場の店の様子などが紹介されている。


そのタワーをエレベーターで上辺部分のスカイデッキへ一気に上がる。ガラス張りのエレベーターから見える景色に、ドバイって意外と緑が多いのねと思いながら。


高さ150mのスカイデッキは展望デッキとしては高くはないが、両サイドで対照的なドバイの「今」が見られるのがポイント。片側は開発が進み超高層ビルが建ち並ぶ風景。反対側は低層の建物が遠くまで規則正しく並んだオールドタウン。



もう一つの売りは一部がガラス張りになった床。額縁の下辺を見下ろせる。かなり強そうなガラスなので心配はないと思う…。


展望デッキを堪能した後は、上がってきたのとは反対側のエレベーターでまた一気に下り、最後は「フューチャー・ドバイ・ギャラリー」へ。ドバイの50年後くらい?の未来のイメージを没入型の映像と音声で体験する。これは臨場感があって楽しい!


ということで、ドバイフレームは見た目より中身がずっと真面目だった。外から写真を撮るだけでなく、是非入場してみると、知らなかったドバイの一面が見られると思う。


2023年10月1日日曜日

Museum of the Future

ドバイといえば超高層ビルが立ち並ぶ風景。中でも高さ828メートルの世界一高い(2023年時点)ビル「ブルジュ・ハリファ」に象徴される。

でも最近は高さ以外で注目される建物もあり、その一つがMuseum of the Future(未来博物館)。


アートオブジェのような外観に「これ建物なの? 中どうなってるの?」と目が釘付け。どこが正面かもよくわからないが、ミュージアムのロゴから判断するにこの写真は裏側らしい。

ここはその名の通りドバイの未来を展示したミュージアム。Shaun Killaが設計し、2022年2月22日にオープンした。ドバイ首長が未来について書いた詩を引用したアラビア文字が表面を覆い、ロビーに入るとそれが透かし模様になっていて美しい。


入場者はまず「スペースシャトル」で一気に5階に上がり、2071年の宇宙ステーションへ。約50年後の宇宙開発を垣間見る。


文字情報も結構多めな宇宙フロアから次へ進み、雰囲気が一変するのが「The Library」。数千の生物の種の「DNAライブラリ」という設定で、ずらりと並んだ3D標本が様々な色にライトアップされ、なんとファンタスティック! 説明の要らない未来のラボラトリー。

他のフロアでは未来のウェルネス、近未来テクノロジーなどのテーマが展示されている。2階からは屋外デッキに出て、ドーナツ型の建物の細いほうを間近で見られるのでお見逃しなく。


展示内容はまだ見ぬ未来のことなので、正直、ピンとくるものもこないものもある。最大の見どころは今は何といってもやはり、有機的な曲線で未来を示したこの建物だと思う。上に向かって伸びるドバイのビル群を後目に、この建物は未来でもユニークな存在でいるだろうか、それともスタンダードになっていくだろうか?