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2025年6月23日月曜日

チェルシーでアートギャラリー巡り

週末にニューヨークに滞在するなら、チェルシー地区に行くのが楽しい。質の高いアートギャラリーが密集していて、多くは気軽に立ち寄れる。特に10thと11th Avenue の間の22丁目から24丁目がいい。

ギャラリーの多くは土日を含む週の後半だけ営業し、何らかの企画展示をしている。ミュージアムクオリティの展示も少なくない。週末はカップルや家族連れなどあらゆる年代の人がこの辺を歩き、気になるギャラリーに入ってはまた次のギャラリーに向かう。ギャラリストもこちらから質問しない限り放っておいてくれるので、自分のペースで見られる。

今回特に賑わっていたのは21丁目のGagosianでの村上隆の展示。広い展示スペースに、歌川広重の江戸百景の浮世絵を村上氏がコピーしたキャンバス121枚が並ぶ。テーマはアートの「バッククロシング」。二つの種の交配で生まれた後代に、最初の両親の片方を再度交配するということらしい。そう言われてすぐに消化できているわけではないのだが、本物との違いがわからないコピーとならんで、現代風にアレンジした作品も展示されている。



韓国系のTina Kim Galleryの展示も良かった。「The Making of Modern Korean Art」と題し、Lee Ufanなど、1960年から80年代の韓国現代美術を形作った4人のアーティストたちの間の書簡と、それぞれの作品が展示されていた。


Dia Beaconの姉妹施設であるDia Chelseaではイギリスの映画監督スティーヴ・マックイーンのビデオアートを上映していた。入口前に置かれた石はヨーゼフ・ボイスの作品(植樹プロジェクト)の一部。


チェルシー散策後は、23丁目からハイラインに上がって歩く。北に向かって数分でハドソン・ヤーズに到着する。


週末の気ままなお散歩に。




2025年6月10日火曜日

川から見るバンコク

バンコクを二分するように流れるチャオプラヤー川は、タイを縦断する大きな河川で、交通や物流で重要な役割を担う。観光船も多く、夜になるとカラフルなライトに彩られた大型のディナークルーズ船が行き交う。

でも、ローカルなバンコクをじっくり見るならロングテールボートのツアーがいい。ロングテールボートとは、もともとは木製の漁船で、船尾に舵取りの長い棒がしっぽのように出ているのでそう呼ばれる。離島に行くとよく見かける。


バンコクではカラフルな屋根や飾りを付け、観光客を乗せて活躍している。


大型船が入れない支流に入れるのがロングテールボートの強み。低い位置から見上げながら、人々が暮らす地域を縫うように進む。住民はこういうボートに慣れていて、生活エリアへの船の侵入も特に気にしていない様子。民家にまぎれてお洒落なリバーサイドカフェやショップも並び、徒歩や車では見ることがなかった一つのカルチャーエリアがあると知る。どの建物にも船着き場があり、川が暮らしに密着していることもわかる。


船は途中のお寺に立ち寄った。巨大な金の仏像は修復中でも頭だけは出して慈悲深い表情を見せている。看板には日本語で「ワット・パクナム・パシチアローン 盤谷市」と書いてあった。バンコクって漢字でこう書くのか。日本人観光客が押し寄せていた時代に書かれたものだろう。今は日本人の海外旅行もだいぶ減ってしまったけれど(悲)。


境内のお堂には見事な壁画もあった。

船はやがて本流に戻り、大型船と並んで走る。上手に描かれた大きな象の壁画が目に留まった。

予想以上にあっという間だった2時間のクルーズ。見る位置を変えてみると新しい発見がある。


2023年10月9日月曜日

ドバイのアート地区

ドバイで質の高いアートホッピングを楽しむなら、アルサーカル・アヴェニュー(Alserkal Avenue)へ。

オープンは2008年。倉庫街だった場所がアートやカルチャーのハブとして再生された。現在は約20軒のアートギャラリーの他、デザインやアート、ファッション関連の企業やショップ、飲食店など計約80のテナントが入る。


訪れたのは気温40度を超える午後で人影はまばら。開いていたアートギャラリーを順に巡る。建物の中はエアコンでキンキンに冷えている(生き返る!)

ギャラリーによって扱うアーティストはインターナショナルだったり、中東、アフリカ、アジアなどの地域に特化していたり、新進アーティストから著名な現代アーティストまで幅広い。どのギャラリーもおしなべて作品のレベルは高く、展示も洗練されている。きっと中東各国や世界から訪れるハイエンドなアートコレクターを顧客に持っているのだろう。



でもアルサーカル・アヴェニューは、一部のコレクターだけをターゲットに作られたわけではなく、地元のクリエイティブコミュニティの創生や、アーティストの育成の拠点となることをミッションとして今日まで発展してきた。

立ち寄ったお洒落なカフェでは、自家製パンのサンドイッチのレベルも高かった。チェーン店を安易に入れず、厳選したローカルビジネスで固めているのがわかる。時間があればアート以外のお店もチェックしてみると、ハイブランドのショッピングモールとは違うドバイローカルの魅力を発見できるはず。

そんな文化的地区で暮らす猫は、灼熱の太陽の下、シャンとして行儀が良かった。


アルサーカル・アヴェニューの開発はこれからも続きそう。また行ってみたい。



2022年10月30日日曜日

ヴェネト州の旅③ プロセッコ・ヒルズと周辺の素敵な街

イタリア北部・ヴェネト州の名産の一つにスパークリングワイン「プロセッコ」がある。

プロセッコはヴェネト州と隣のフリウリ・ヴェネチア・ジュリア州の一部のみで生産される。中でもイタリアワインで最上位分類のDOCG(統制保証原産地呼称)のものは、コネリアーノとヴァルドッビアデーネの間の丘陵地帯、およびアーゾロの周辺で生産されたものに限られる。この丘陵地帯は「プロセッコ・ヒルズ」と呼ばれ、2019年にユネスコ世界遺産に指定された。急な傾斜の土地を人手で耕し葡萄の栽培に適した土壌に育てた歴史や、その景観が評価されている。

Borgoluceというワイナリーを見学した。瓶内で二次発酵、長期熟成させるフランチャコルタやシャンパンとは違い、プロセッコはそのフレッシュさ、フルーティーさを楽しむ飲み物。巨大なステンレスタンクで二次発酵させ、早ければ30日で熟成も完了。生産コストが比較的抑えられるため、価格もお手頃なものが多い。



プロセッコ・ヒルズ周辺は見どころも多い。世界遺産に登録されたパッラーディオ建築のヴィッラ・バルバロもこの近く。

魅力的な小さな街もある。それが前述のアーゾロ。15世紀にキプロスの女王だったカタリーナ・コルナーロが、キプロス王国と引き換えにヴェネチアからアーゾロを与えられた。彼女の下でアーゾロには芸術家たちが集まり、今でもその歴史はこの町に大きく影響している。

アーゾロには城壁や、ポルティコと呼ばれる屋根付きの歩道が残る。5つ星ホテルVilla Ciprianiではその美しい庭園や、周囲の丘のパノラマ風景も楽しめる。



プロセッコ・ヒルズとヴェネチアの中間に位置するトレヴィーゾも落ち着いたいい街。澄んだ水の運河が流れ「スモール・ヴェニス」とも呼ばれる。トレヴィーゾはティラミス発祥の地としても知られ、ちょうど街では「ティラミス・ワールドカップ」が開催されていた。世界中から(?)挑戦者たちが集まり、ティラミス作りの腕を競うらしい。それくらいティラミスはトレヴィーゾと切り離せない存在になっている。

トレヴィーゾでは壁画にも注目。トレヴィーゾ生まれのマリオ・マルティネッリというアーティストの作品が面白い。遠くから見るとわからないけど、金網を使った影アート。


ヴェネチアだけではもったいないヴェネト州。予定外の街に一日足を延ばしてみるだけでも、旅の深みがぐんと増す。


2021年10月30日土曜日

小江戸川越散歩

川越は稀有な町だと思う。東京からそう離れていないのに戦争で空襲を逃れ、江戸時代の建物やお城の本丸が戦後もきれいに保存されてきたのは奇跡に近い。


雲一つない青空に映える蔵造りの街並み。時が止まったかのような完璧な佇まいに、誰もいなかったら異次元に迷い込んだような怖ささえ感じそうだった。が、平日の朝から観光客や遠足の小中学生が行き交っているのでその心配はない。それにしても高層ビルに囲まれることもなく、開けた空まで残っているのは素晴らしい。

川越城本丸御殿は東日本に唯一残る本丸御殿の遺構。築城は15世紀半ばで、今残っている本丸御殿は1848年に新たに建てられたもの。明治以降は工場になったり学校になったり様々な用途で使われ、1967年に大規模な修復が行われて公開された。派手さはなく実直な感じだが、威容がある。家老詰所にだけ人形があり、リアルによくできてる。


その他の川越の楽しみのひとつは食べ歩き。あちこちで名産のさつま芋を使ったお菓子や、醬油を塗った焼き団子などが売られている。今は歩きながらではなくお店の前で立ち止まって食べる人が多いけれど、「買い食い」の魅力は衰えない。


1500年の歴史を持つ氷川神社では中学生たちが「鯛釣り」おみくじに群がっていた。


オーセンティックな町並みと観光地的要素の両方がバランスよく共存する川越。東京から半日で行って帰ってこられる遠足スポットは、あらゆる年代の人が楽しめる。

2021年10月16日土曜日

東京の酒蔵 澤乃井

東京にも多摩川が流れるエリアを中心に日本酒の酒蔵が何軒かある。その中の一軒、「澤乃井」で知られる小澤酒造は、奥多摩の美しい清流沿いに位置し、日本酒だけでなく自然散策も楽しめる。


都心から電車で約1時間半。無人の沢井駅を降りて歩いて行くと麹がほのかに香り、すでに澤乃井の工場のすぐ脇を通っていることに気付く。通りの向かいの「澤乃井園」までは5分くらい。

川のほとりの庭園にはレストランや売店があり、平日でもそれなりに賑わう。必ずしも酒蔵見学が目的でなくても、緑に囲まれた屋外で食事をしたり、多摩川沿いの遊歩道をハイキングしたり、過ごし方は色々。澄んだ流れではカヌー遊びをする人たちもいた。

橋を渡ると寒山寺という小さなお堂もある。石段の手すりを覆う苔を傷つけないよう、触らずに上る。

さて、澤乃井園に戻り、予約していた酒蔵見学へ。庭園から地下道を通って駅側に戻り、工場に行く。見学ツアーは今は完全予約制で、コロナ対策のため内容を簡略化し、試飲は無し。それでも創業320年近い酒造の蔵の中に入れるのは、それだけで期待感がある。

蔵の中は外光が入らず、空気は少しひんやり。大きなタンクが並ぶ薄暗い通路を歩くと、18世紀創業の酒造の長い歴史も重なり、シャンパーニュ地方のカーヴを思い出す。

タンクの容量は一つ8,000リットルを超える。約44,000合。1日1合飲んで120年かかるとの説明に、ピンとくるような、気が遠くなるような。


昔は酒造りの時期になると新潟から農家の働き手たちがやってきて、集中的に生産をしていたそう。時代が変わりそうした農家の人手も減り、今は社員が酒造りをしている。製造工程も機械化されているが、最近は大きな杉の木桶を使った桶仕込みを復活させる試みもしているとのことだった。


石の洞窟の奥に仕込み水となる湧き水の井戸がある。澄んだ水が豊富に流れる多摩川のほとりにありながら、秩父古生層の厚い岩盤からじわじわ湧き出る貴重な石清水を使っていることを今更ながら知る。ミネラル分豊富な中硬水だそう。

蔵の中の棚には熟成酒「蔵守」の瓶が並ぶ。瓶の中で熟成させるヴィンテージ古酒。20年くらい寝かせてあるものもあった。開封していない日本酒の瓶を新聞紙にくるんで、押入れの奥の涼しい所に保管しておけば、家でも熟成酒ができますよ、とのお話だったが、マンションのクローゼットの奥では、きっと無理だろう。昔の日本家屋は優秀だった。

ということで、ツアー終了後、きき酒どころで「蔵守」を味わってみることに。きき酒どころでは10種類のお酒を出していて、200円から500円で試飲できる(特製きき猪口付き!)

「好き嫌いが分かれます」と言われた4年ものの古酒は、薄い琥珀色がかっていて、香りは表現するのが難しいが、私は「ソバの花のはちみつ」に共通する香りを感じた(さっぱりわからないたとえかもしれませんが)。外の木々の緑を見ながらじっくり味わい、帰路についた。

新酒が出るまであと少し。蔵の前の杉玉も新しい緑のものに替わる。紅葉が深まるこれからのシーズン、新酒と自然を求める人でますます賑わうに違いない。




2021年4月17日土曜日

日常の中の芸術

家からそう遠くないところに「東京しごとセンター」という東京都の施設がある。その前を通るたびに、すべすべした感触が見ただけで伝わってくる、滑らかなラインの大きな石の彫刻を心地よく見ていた。しょっちゅう通る場所なので、それは私の日常の一部となっていた。

ある日、たまたま見たスペインのカナリア諸島の映像で、現地に日本人アーティストの屋外彫刻があることを知った。それは、いつも通る近所のすべすべ石のすぐ後ろにある白いゲート型の作品とよく似ていた。

「あれ?もしかして」 調べてみると、近所にあったその彫刻も、カナリア諸島の彫刻と同じ安田侃(やすだ かん)の作品だと初めてわかった。安田氏は北海道出身で、イタリアをベースに活動している著名な彫刻家。東京ミッドタウンや直島など日本全国各地だけでなく、様々な外国にも作品が飾られている。

近所のすべすべ石と白いゲートは二つとも安田氏のもので、セットで「生思有感」という作品だった。


なんと。これまでずっと知らずにいたのが、なんだかもったいない! ということは、しごとセンターにある他の彫刻も、やはり著名なアーティストの手によるものなのでは…?

もう一つ、金属の球体から空に向かってラインが躍る彫刻も、なかなか素敵だと思っていた。

改めて行ってみて、作家や作品名の表示を探したが、ない(私が見落としているのかもしれないが、その気になって探している人が見つけられないなら、ないも同然)。東京しごとセンターのウェブサイトにも一切情報がない。直接聞いてみようと初めて建物に入ると、入口の吹き抜けの天井にもなんだかすごそうなオブジェがある。この施設は2004年にできたそうだが、当時の東京都には結構潤沢な予算があったのだろうか。

インフォメーションカウンターに座っていらしたおじさんに、「外の彫刻の作者と作品名を知りたいんですが」と聞くと、そんな質問は想定外だったに違いないおじさんは、一瞬キョトンとした後、にこやかに「ああ、どこかに書いてあったかな…」と、卓上にあった書類を少し探してくれたが、「ありませんねえ、ごめんなさい」と言った。

帰ってホームページから問い合わせてみたところ、翌朝には広報担当の方からお返事があった。

前述の金属の彫刻は、伊藤隆道氏の作品「ひかり・空中に」とのこと。資生堂のショーウィンドーデザインを長く手掛け、動く彫刻でも第一人者とも呼ばれる人。ひょっとしてこの作品も動くのだろうか?一度も見たことないが、動いてもおかしくなさそうな雰囲気ではある。(追記: 後日改めて問い合わせたところ、動かないとのことだった。残念。)

建物内の吹き抜けのオブジェは、多田美波氏の「躍」。故人だが、光を反射するステンレスなどの金属やガラスの作品を多く手掛けた女性彫刻家だった。

もう一つ、他の作品に比べるとあまり目立たないが、正面玄関に向かって左側には堀内正和氏の「曲と直」がある。20世紀の彫刻家で、日本の抽象彫刻の先駆者とされる。

こんなに身近にあったアートスポット。その価値をよく知らずに日常の一部になっていたのは贅沢というべきか。パブリックアートは、必ずしも作家や作品名を知ってもらうことが目的ではないし、見た人がいいと思えばそれでいいし、何も知らない住民の日常に溶け込んでいたほうがむしろ意図に沿っているのかもしれない。でも、少しの情報発信があれば、必要な人には届き、結果として作品がもっと生きるのではないかと思った。

私はここを通るのが、以前よりも少しだけ楽しみになるだろう。


2021年4月2日金曜日

肥後細川庭園

春の晴れた日、肥後細川庭園へ。椿山荘や東京カテドラルのすぐ近く。

幕末に肥後熊本の細川家の下屋敷があったところで、大きな池を中心とした典型的な池泉回遊式庭園。戦後は都の土地となり、「新江戸川公園」という、残念ながら庭園の個性が全く想像できない平凡な名前で呼ばれていたが、4年前の2017年春に今の名称になったそう(良かった)。現在は文京区の管理下にあり、無料で公開されていることに懐の深さを感じる。



隣の神田川沿いの桜並木はもうピークを越えていたが、庭園の門を入ると小さな花々が咲き、新緑が美しい。立派な池に映る風景を見て、やはりここは公園ではなく、庭園と呼ぶのがふさわしいと思う。

遊歩道に沿って、池の周りの山を模した斜面を少しだけ上がってみると、台地の湧き水の小さな滝もいくつかあり、郊外の自然の中を歩いているような気分になれる。ふと、どこにいるのかを忘れそうになった。

お勧めは、細川家の学問所だった建物「松聲閣(しょうせいかく)」の2階からの眺め。向うの方にビルが見える以外は、明治時代から変わらぬ庭園全体の風景が見渡せる。

ちょっとしたパワースポットかも?と感じた都内のオアシス。


2021年3月20日土曜日

表参道の神殿

表参道にある杉本博司さんのオブジェ。空間全体のデザインが「究竟頂(くっきょうちょう」という。

「究竟頂」とは金閣寺の最上階の三層の呼び名だそうで、天上界、極楽浄土を意味するらしい。もうできて7、8年になる商業ビルの中にあるが、お店が並ぶ通路ではないため、あまり気づかれていないと思う。人も少なく、神殿のような、教会のような、厳かな雰囲気の異空間。

ちょっとペースをリセットしたいときに立ち寄りたい場所。