2022年2月18日金曜日

ゲルハルト・リヒター「Abstrakt」展 

今年(2022年)2月9日に90歳の誕生日を迎えたゲルハルト・リヒターの個展が、翌日2月10日に1周年を迎えたエスパス・ルイ・ヴィトン大阪で開催されている。

「ルイ・ヴィトン メゾン大阪御堂筋」の建物を見たとき、ああ、やっぱりパリのルイ・ヴィトン財団美術館に似てる、と思った。でもよく考えると、大阪は青木淳、パリはフランク・ゲーリーの設計。調べてみると共通点は船のイメージだった。大阪は菱垣廻船から着想を得たそう。

5階のエスパス・ルイ・ヴィトンの入口ではゲーリーのロゴ彫刻が輝く。


「Abstrakt」と題された今回のリヒターの個展は、初公開のものも含め、ルイ・ヴィトン財団のコレクションから選んだ大型でインパクトある作品が並ぶ。油彩、ペイントした写真、ガラスに流した絵の具など、リヒターの様々な手法、様々なテクスチャーの作品がピックアップされている。そして意外なほど明るい色のものが多い。リヒターが惜しみなく色を使うようになったのは1979年とのことで、展示はそれ以降の作品に集中している。



6月からは東京国立近代美術館でリヒターの生誕90周年・画業60周年記念の大規模な回顧展が予定されている。そちらはリヒター自身が愛蔵してきた作品が中心とのこと。二つの展示を併せて見ると、視点がプラスされて更に面白いかもしれない。(「Abstrakt」展は2022年4月17日まで)


2022年2月15日火曜日

大阪中之島美術館

大阪中之島美術館へ。2022年2月2日にオープンしたばかり。


この美術館に関して枕詞のように語られるのは「構想から約40年」という準備期間の驚くべき長さ。1983年に大阪市制100周年記念事業の一つとして「近代美術館を作ろう!」という構想を発表。その後、バブルがはじけたり財政が悪化したりでなかなか進まず、100周年(1989年)どころか130周年も過ぎてしまったが、その間にコレクションは着々と蓄積されてきた。

オープニング記念展は「超コレクション展 99のものがたり」と題し、6000点以上の収蔵作品から約400点を公開している。「99のものがたり」というから100点くらいの展示かと思っていたら、QRコードでアクセスできるストーリー解説を加えたのがうち99点ということだった。

作品の年代は19世紀末から20世紀後半に集中しているが、横幅はすごく広い。展示は3章に分かれ、第1章はコレクションのベースになった寄贈作品や大阪と関わりがある作品。佐伯祐三が大阪生まれだったと改めて認識した。白隠、マリー・ローランサンなどに続き、日本画、写真、版画などが並ぶ。第2章はマグリット、ジャコメッティ、バスキアといった超メジャーな近現代美術。そして第3章はデザインで、ロートレックあり、バウハウスあり、赤玉ポートワインあり。オープンしたての美術館でこの内容とボリュームは圧倒的。「すごいでしょ」という感じが伝わって来る。

最初の構想が「近代美術館」で良かったと思う。「近代」の定義は40年経ってもそれほど変わっていないが、収集している間に変わってしまったらもっとややこしくなっていただろう。現在の収集方針は近代と現代の美術作品をカバーしており、パブリックスペース等に設置された大型の彫刻はコンテンポラリー感ありありなものが目立つ。「現代」は時が経てば「近代」に融合されていく。

オープンが今になって良かったことのもう一つは建物。真っ黒なキューブ型の建物は、40年前やバブル期だったらありえなかったと思う。内部は吹き抜けのフロアを2階から4階まで貫くエスカレーターが入場と退場の導線を分け、直線で構成されたスタイリッシュな空間。展示室に真直ぐ上昇していく感じが期待感を高める。


かなり見ごたえがある展示だったが、披露されたのはコレクションの10分の1にも満たないのだから、これからの企画も楽しみ。すぐ隣は国立国際美術館で、中之島全体をクリエイティブ・アイランドとして打ち出すプロジェクトもある。これからの大阪はアートとデザインの街としても注目!