2014年6月28日土曜日

ケラマブルー 魚とサンゴが近い海

先週、梅雨明けの慶良間諸島へ。


20余りの島で構成される慶良間諸島は今年の3月5日に国立公園に指定された。今回訪れたのは慶良間の有人島では最も人口が多い渡嘉敷島(といっても700人くらい)。メインの阿波連ビーチの周辺には、たった1軒の商店と、数えるほどの海の家や民宿などがあるだけで、最近少し忘れていた「スローライフ」という言葉を思い出した。現代のスローライフではなく、昔のまま時がゆっくり流れているような感じ。

梅雨明け直前の南国の空は、滝のようなコールが降ったかと思えば、何事もなかったように晴れ間が出たりという気まぐれさ。阿波連ビーチではインストラクター(ガイドさん)と一緒なら遊泳区域の外に出て泳げるので、晴れ間を狙ってシュノーケリングをした。

サンゴが近い!

黄色やブルーの美しいサンゴ礁が、気を付けないとひざをすりむいてしまう程の浅瀬から沖まで広がり、大小様々な色とりどりの魚たちが暮らしている。イソギンチャクの中に隠れるクマノミも間近で観察。海の世界に急接近できる。

魚たちは人懐っこいというか、人が近づいても逃げない。他の海ではよそよそしいチョウチョウウオなんか、逃げるどころか人に寄ってきて伴走(伴泳?)さえする(これは餌付けの影響もあるそうだが)。クマノミの写真を撮ろうとしていたら、遮るようにレンズの前にしゃしゃり出てきたし。

ビーチからすぐの浅瀬でこれだけ豊かなサンゴ礁が保護されているのも国立公園たる所以だろう。海の透明度の高さはここで述べるまでもない。

今後ますます注目度を上げるであろう「ケラマブルー」を求めて、更に幅広い層の人々が、日本国内だけでなく、海外からもやってくるに違いない。

慶良間での宿泊は、一部のプチホテルを除いては民宿かペンションのみ。でも那覇から高速船で最短30分程度なので、沖縄本島に宿泊して日帰りすることも十分可能。必ずしも高級ホテル開発は必要ないかもしれない。

今はなんと中高生の修学旅行が、島の観光産業を支える重要な要素になっていることも知った。オフシーズンは誰もいない海ではなく、時間帯によってはビーチは中高生のアクティビティで占領される。島が積極的に修学旅行を誘致するのは、宿が年間を通して一定の稼働率を維持するための策なのだろうが、それではちょっともったいない気もする。他の客層を遠ざけてしまうことにつながりかねないから。


梅雨明けの日の朝、修学旅行団体用のテントが畳まれ、まだほとんど人がいないビーチへ行った。これから夏が始まる。いっそう青い海を見て、ケラマは、媚びる必要なんてないデスティネーションだと思った。


2014年6月7日土曜日

上海 パワーステーション・オブ・アート

上海の黄浦江西岸、浦西(プーシィ)地区にあるPower Station of Art (PSA)。

ここは2010年のEXPOの開催地だが、今では当時のものすごい混雑の面影はない。近くには目立った商業施設もなく、アクセスもタクシー以外は便利とは言えない。

高さ165mの煙突が目印の建物は、19世紀末に作られた発電所。発電所としての役割を終えた後、EXPOの会場となり、その後2012年に中国本土で初めての公立のコンテンポラリーアートの美術館として再生された。

中国政府は公立ミュージアムの無料化を進めているそうで、ここも一部の企画展を除いて無料で観賞できる。


箱のような無機質な建物を入ると、広い吹き抜けのスペースにいくつかの大型の作品が置かれ、奥にある階段やエスカレーターが各階の展示室に導いている。



訪れた時は「Decorum:  Carpets and Tapestries by Artists」という企画展をやっていた。PSAとパリ市立近代美術館が企画した、6世紀から現代までの世界の様々な形態の「織物」を集めた展示。昔の無名作家の手織り絨毯から、20世紀のピカソのタペストリー、21世紀の現代アーティストたちによる布を使った自由な作品まで、また中国からは明時代の絹織物や、毛沢東の肖像の大きなタペストリーなど、産業と政治の歴史の文脈の中で、それぞれの作品が意味を持っている。


中でもちょっと面白かったのは、一見してカーペットだけど、よく見ると色違いのデジタル腕時計を並べた作品。時計は全て同じ中国製の安物で、作品が完成した2011年当時は完全にシンクロしていたのが、今ではすべての時計の時刻がずれていて、あちことでバラバラに「ピピッ」というアラーム音が聞こえるのがおかしい。


別のフロアでは日本の建築家・篠原一男の回顧展をやっていた。住宅建築を手掛けていた篠原氏の作品は、国際的にはむしろ彼の死後に注目されているそうで、彼のアジアでの回顧展はこれが最初らしい。

PSAはアートの展示だけではなく、アーティストやキュレーター育成のプラットフォームとしての役割も担っている。今はちょっと地味なこのエリアが、今後アートの街として発展していけば更に面白い。



上海 by day, by night

毎年恒例のラグジュアリートラベルのトレードショーで上海を訪問した。

新しい高級ホテルのオープンが続く上海では、老舗のホテルも次々にリノベーションに着手し、サービスとハードの両面でしのぎを削っている(同じ傾向は2020年に向けた東京でも見られると思う)。ブランドショップが並ぶ大通りがますます華やかさを増したように感じる一方、人と車の交通量の多さ、鳴り響くクラクションなど、混沌とした様子も相変わらず。でも、それが上海を一層エネルギッシュに見せる所以なのだと思う。

行く前から気になっていたのは大気汚染。PM2.5の問題が報道されて久しいが、上海の状況も良くはない。今回私は、大気汚染の度合いを示す「空気質指数(AQI)」というものを初めて知ったが、友人の北京在住の中国人の話では、毎朝AQIをチェックするのは当たり前で、彼はそれによってジョギングするかどうかを決めると言っていた。日本人が降水確率を見て傘を持って出るかどうかを決めるくらいの感覚かもしれない。

でも空気に関しては、マスクをするくらいしか防御の方法がない。タクシーで移動すればいいかというとそんなことは全くなく、ほぼ全てのタクシーがエアコンをつけずに窓全開で走るため、かえって排気ガスをまともに吸うことになるという、皮肉な事実。

部屋にいても、今年は昨年よりインターネット環境が悪くなっていた気がする(泊まっていたホテルの回線の問題もあるかもしれないけど)。以前からこのブログは中国からは見ることも投稿することもできなかったが、それ以外にも表示できないサイトが増えていた。

と、気になる点は色々あるにせよ、素敵な場所も多いのが上海。特にこの街は夜に魅力を発揮する。

外灘(バンド)の夜景は、何度見ても、昼間の街の喧騒を忘れさせる存在感がある。黄浦江添いに並ぶライトアップされた歴史的建築群は、新しい建築物では太刀打ちできない優雅な美しさを放っている。


洒落たレストランやバーなど、話題のナイトスポットが集まるのもこの地域。歴史的建築物のひとつの和平飯店をリノベーションしたFairmont Peace Hotel Shanghaiのルーフトップからは、対岸の高層ビル群の夜景が臨める。


いつ行っても外灘には独特の雰囲気がある。独自の速度を保っているようで、一番進んでいるような。そもそもここがなかったとしたら、上海の魅力は今と同じレベルであり得ただろうか?

私は外灘なしの上海には、きっと魅力を全く感じない。