2012年9月29日土曜日

森を歩くかのごとく、アートを見る

昨年11月にオープンした軽井沢千住博美術館へ。

一歩入ると、空間の美しさに息を呑む。
最初に目に入るのは、すっと立つ白い壁に掛かった、大きなウォーターフォールの絵。
曲線的なガラスの壁に囲まれたフロアを進んでいくと、まるで木々の間を覗き見るように、展示作品が不規則に現れる。
地形に合わせてなだらかに傾斜した床は、鑑賞というより、散策という言葉が似合う。

実際、建物の中にも森が存在する。
いくつかの吹き抜けスペースに配さたカラーリーフガーデンは、自然界に存在する微妙な色のグラデーションを見せてくれる。
丁度降っていた雨がその箱庭の木々の葉に注ぎ、一層生き生きと見えた。

ブラックライトに照らされた「ナイトフォール」の展示室も必見。
オランジェリー美術館のモネの展示室を連想させる空間。
霧のような水しぶきが今にもかかってきそうな、静かな臨場感に圧倒される。

SANAAの西沢立衛氏が設計した空間と、千住氏の作品が一緒になり、全体で新たなアートエンターテイメントとなっている。素晴らしい。




2012年9月18日火曜日

デジタル化で得たもの、失ったもの

最近、昔撮った写真のネガをスキャンして、デジタルファイル化している。
昔といっても、15年ほど前からデジカメを使うようになる前までの間のもの。

写真は分厚いアルバムに張ってきちんと保管していたけれど、重いし、出してきて見ることなんて結局ほとんどなく、膨大な旅先の写真も眠っているだけだった。
でもデジタル化しておけば、ふと思い出したときにPC上で手軽に見られる。
当時一緒に旅行に行った友達にメールで送ってあげて、喜ばれたりもする。

スキャンした画質も意外といい。これは1997年10月にプラハで撮ったもの。

 
ネガを見ていて気付いたのは、昔のほうが、一枚一枚の写真を大切に撮っていたということ。
アナログのコンパクトカメラでは、夜景なんかはまともに撮れていないし、再現力という点では今のデジタル一眼レフには敵わない。
でも構図の取り方などは、昔のほうが丁寧だったかもしれない。

今はカメラがなんでもやってくれるので、普通の人でもかなり上手に写真が撮れる。
失敗すれば何度でも取り直せるし、とりあえず5枚撮っておいて、あとでいいのを1枚選ぼう、ということもよくある。だから無駄な写真の枚数も多い。

現像してみるまで出来がわからなかったアナログ時代は、とにかくその時点で「ベストショット」と思えるものを撮り、あとでわくわくしながら出来上がってきた写真を見た。「ボツ」写真の比率はその頃のほうが格段に低かった。

やや大げさに言えば、「本番」にかける緊張感があったのだと思う。

デジタル化はメリットのほうが多いと思っているし、逆行する気は全くないけれど、想い出に残したい風景を丁寧に切り取り、それをハードディスクではなく自分の記憶にとどめておく力は、アナログ時代の人間のほうが優れていたように思う。

2012年9月17日月曜日

今年のハワイ島

今年も7月のほとんどをハワイ島で過ごした。

もう12年ほど前からほぼ毎年行っており、一回あたりの滞在日数は長くなる一方。
よく人には、「そんなに行ってて、飽きない?」と聞かれるが、全く飽きない。
他の場所にはあまりリピートしない私も、ハワイ島だけは別。

でもハワイといえば無条件に好きなわけではなく、私が好きなのはハワイ島(ビッグアイランド)。ハワイ州全体ではない。もちろんほかの島も好きだし、行ったこともあるが、比較にならない。

ハワイ島に2,3週間も滞在していれば、ホノルルあたりに一度は行く気になりそうなものだが、よほどの用事がない限り、行き・帰りの乗り継ぎで空港を素通りするのみ。それも今、直行便がないから仕方なく寄ってる感じ。

だから「ハワイ行ってたの?」などと、きっとホノルルだと思っているに違いない質問をされようものなら、
「そう、ハワイ島ね。」と明確に返すことにしている。

何がそんなにいいかというと、理屈ではなく、多分土地の「気」が合っているから。
ハワイ島はいわゆる「パワースポット」の一つとされているけれど、どんなパワースポットでも必ずいいかというとそうではなく、現に私には、あのアリゾナのセドナに行って全く何も感じなかったという残念な過去がある。

ハワイ島で過ごしていると、自然のリズムの中でリセットされる感じがある。
ほとんどが溶岩大地の島で、朝は鳥の声で目覚め、夜は満点の星を見上げる。

新聞で潮の満ち引きの時間を確認してからビーチに行くと、ちょうど潮が引き切った後、ウミガメが甲羅干しをしていたりする。
お腹を浅瀬の水に浮かせ、甲羅を水面から出している。でも日差しが熱すぎて、時々手で(足で?)背中に水をかけている。
そしてしばらくして潮が満ちてくると、海に帰っていく。

そんな風景、何度見ても飽きないし、また探しに行ってしまう。

今年のハワイ島で気付いたことの一つは、2年ほど前に大ブームだったカイト・サーフィンはあまり見かけなくなり、代わりにパドルボードが大人気。子供から大人まで楽しめるマリンスポーツ。

気付いたことのもう一つは、ここ2、3年ほど「For Sale」の看板が出たままの家がまだ多く残る一方、ずっと空地のまま止まっていた別荘地の開発が動き出していたこと。

市場の活性化はいいことだけど、ウミガメの甲羅干しの場所は、確保されますように。