2014年11月30日日曜日

モーガン・ライブラリー

マンハッタンの36丁目にあるモーガン・ライブラリーは、アメリカの銀行家J.P.モルガンの個人コレクションを公開したミュージアム。観光客にはMETやMOMAほど知られていないかもしれないけれど、ミュージアムとしてだけではなくアカデミックな研究所としての役割も持ち、地元の知識層にも一目置かれる存在。古代から近代に及ぶ貴重なコレクションを持ち、特に手稿や本など「書かれたもの」にフォーカスしているのが特徴。

必見はモルガンが収集した膨大な数の希少本を収蔵した部屋。中央にかかった16世紀オランダの大きなタペストリーの部分を除き、壁は三層の書棚で埋め尽くされ、その上にはヨーロッパの宮殿のような天井画。この圧倒的で独特な部屋は、他に類似するものを思いつかない。


期間限定の企画展も常に開催されている。今回、エントランスを入ってまず目を引いたのは、吹き抜けのロビーのカラフルなガラスのインスタレーション。このスペースは2006年にレンツォ・ピアノの設計により既存の二つの館をつなぐ形で増設され、現在のメインエントランスとなっている建物。インスタレーションはスペンサー・フィンチによるもの。全体的に重厚でクラシカルな雰囲気を持つモーガン・ライブラリーにおいて、このピアノとフィンチの美しいコンビネーションのギャップには意表をつかれるが、このライブラリのメインを成す中世から近代の所蔵品の展示への期待も高めてくれる。


この作品、常設にしてほしい!







2014年11月22日土曜日

グッゲンハイム美術館でカクテル

ニューヨークのグッゲンハイム美術館を会場にしたカクテルパーティに出席。

通常の営業時間が終わった夜、美術館は華やかな社交の場に変身。1階ロビー中央にバーカウンターと花が設置され、周りに人々が集う。

らせん状の廊下を上がっていく展示スペースへは自由に行き来でき(ドリンクは持ち込み不可)、エクスクルーシヴなナイトミュージアム状態。ちょうど、1950-60年代に活躍したドイツのアーティスト集団Zeroの企画展「Zero: Countdonw to Tomorrow」を開催中で、イヴ・クラインやフォンタナなどを含む数十点の作品を鑑賞できた。

人々がこのパーティに来るメリットを3つ挙げるなら、
1.社交
2.お酒
3.アート鑑賞
だと私は思っていたが、大多数が1.と2.に夢中で、展示スペースに上がってくる人はごく少数。まあ、フランク・ロイド・ライト設計の建物そのものも、会場として十分に魅力的だけど、私が主催者だったら、意図が外れてちょっとさみしいと感じるかも。

器も楽しめるパーティは、素敵だと思う。


 
 
 
 

2014年11月9日日曜日

アートなクチュール 「エスプリ ディオール」展


銀座を歩いていたら、突然視界に入ってきた見慣れない黒っぽいビルに思わず足を止める。黒服のスタッフが立つ入り口に、人が次々に入っていく。

見上げると「エスプリ ディオール ディオールの世界」の看板。期間限定のディオールの展示。

吸いこまれるように入口をくぐった。




謎の黒いビルの中は、それはゴージャスで美しい空間!
4フロアにわたり、まさに「ディオールの世界」が展開されている。

アーティストたちと親交を深めた若き日のディオール、そして1947年に初のオートクチュールコレクションを発表してから今日までのメゾンの軌跡が、代表的なドレスやバッグ、映像や写真などで紡がれる。

1920年代、コクトーやダリ、サティなどと交流を持ち、現代音楽の作曲家たちとピアノの即興演奏に興じ、更には自身のアートギャラリーを開いてピカソ、ブラック、マティスなどの作品を世に紹介したという、若くしてすでに驚くべきパトロン的要素を持っていたディオール。

ディオール本人が亡き後も、アーティストとのコラボレーションは多い。

ウォーホルの「レディ・ディオール」
でも、何より目を見張るのは、ディオールの作品そのものが持つ芸術性。
女性の美しさを際立たせる完璧なフォルムのドレスは、それぞれの時代や流行を彷彿とさせるにも関わらず、普遍的な美とエレガンスで現代人の美意識に訴える。
デザインという言葉では表しきれない、見る者をうっとりさせる魔法のような力。これを見てディオールを着たいと思わない女性がいるだろうか?

観終わった人たちがちょっと背筋を伸ばして出ていくような、そんな刺激を受ける展示。



*「エスプリ ディオール ディオールの世界」は2015年1月4日まで開催中(入場無料)。