2015年12月20日日曜日

ホテルロビーのアート空間

ホテルのロビーに入った時に受ける印象は、その後、部屋に入った時の印象を左右するくらい大切なものだと思う。

ソウルのThe Shillaのロビーのオーナメントには、思わず足を止めた。


アーティストはSeon Ghi Bahk。チャコールやアクリルビーズを糸でつりさげた「Aggregation」シリーズで知られる。この作品もその一つ「An Aggregation 130121」。赤と白の透明なビーズとナイロンの糸が、光を受けて幻想的なカーテンを作っている。

The Shillaは2006年からBahkの作品を展示してきているとのこと。

ツリーがなくても、どこよりもホリデーシーズンの華やかさに溢れた美しい空間だった。

東大門デザインプラザ

ソウルのザハ・ハティド建築、東大門デザインプラザ。
2014年3月にオープンして以来、ソウルの新名所として注目されるスポット。世界最大の「三次元不定形建築物」だそうで、とにかく直線が一切ない。表面は形が異なる45,000枚以上のアルミパネルで覆われていて、外から見る限り、窓もない。

建物はミュージアム棟、アートホール棟、デザインラボ棟に分かれている。分かれている、と言ったが、有機的につながっている、という表現のほうがしっくりくる。
内部も非常に曲線的で、ミュージアム棟の回廊はゆるやかなスロープが4階まで続いている。通常、建物の中では、角を曲がるとか、階段を上るという直線に頼った行為で自分の位置を認識する癖がついているのだと、改めて実感した。ここにいると、自分がどの辺にいるのかわからなくなりそうになる。

ここでは常に展覧会やイベントが開かれており、訪れた日は、イタリアのデザインアーティスト、アレッサンドロ・メンディーニのカラフルな企画展をやっていた。

展覧会も面白かったが、初めての訪問ではその建物のインパクトのほうが記憶に残った。こういう建物が、東京にも出現したかもしれなかったのか、と、あったかもしれない未来に想いを馳せる。



ソウルでアート散歩

ソウルのアートエリアと言えばサムチョンドン(三清洞)。

レトロモダンな雰囲気が人気のエリアに、美術館や中小様々なギャラリーが集まる。通りを歩くだけでも楽しいけど、時間があるならアート鑑賞しながらのお散歩がお勧め。

最寄りの地下鉄のアンクック(安国)駅から景福宮沿いにサムチョンドン通りを北上すると、まず目につくのがGallery Hyundai(ギャラリー・ヒュンデ)。「ヒュンデ」とは「現代」を意味し(自動車メーカーの名前と一緒)、その名の通り1970年の回廊以来、このエリアの現代アートギャラリーの先駆けとして運営してきた。

この日は30代の韓国人アーティストKijong Zinの個展をやっていた。

何軒かのギャラリーを見ながら道沿いに進むと国立現代美術館(MMCA)。2フロアに渡る展示スペースで、韓国および海外のアーティストの様々な企画展が同時開催されており、1枚のチケットで全てみられる。

「動くドローイング」で知られる南アフリカのウィリアム・ケントリッジや、リーウム美術館にも作品があった現代的水墨画のSuh Se Ok(徐世鈺)等の他、韓国とオーストラリアの若手アーティストのグループ展など、それぞれが印象的で、バラエティに富んだ展示だった。


そのまま更に道を進み、サムチョンドン通りが右にそれる二叉路を左に進むと、大統領官邸の警備エリアに入る。警備の警察官に呼び止められたが公道なので、行先を告げて荷物チェックを受けたら通してくれ、親切に道も教えてくれた。

カフェがある交差点を右折した静かな通りにもギャラリーが数軒並ぶ。

比較的大きなスペースを持つPKMギャラリーでは、ベルギーのCarsten Hollerの個展を開催中だった。

そしてサムチョンドン通りにぶつかってまた右折。韓国の伝統的な建物を改築したカフェやブティックが並ぶおしゃれなメインストリートに出る。

この通りには、もっと気軽に入れる雰囲気のギャラリーやインテリアショップが点在。買い物のついでにアートを楽しめる。

2、3時間で廻れるアート散歩ルート。洗練されたソウルが見られる。




2015年12月13日日曜日

リーウム美術館 

行きたかったリーウム美術館(The Leeum, Samsung Museum of Art) を見に、ソウルへ。


サムソンの膨大なアートコレクションを擁するこの美術館は、梨泰院の近くの大通りから少し入った静かで洗練されたエリアにある。

リーウムを構成する3つの建物はそれぞれ著名な建築家が手掛けている。上の写真のアニッシュ・カプーアの彫刻を囲む建物のうち、スイス人マリオ・ボッタによるテラコッタの城風のMuseum 1(写真真ん中)は、陶磁器を中心とした韓国の伝統美術を展示。

フランス人ジャン・ヌーヴェルによるMuseum 2(写真右)は韓国と海外の現代アートを展示。建物にはガラスと錆びたステンレススチールを使用している。錆びないはずのステンレスが錆びているという、存在そのものがパラドックスな素材が、様々に解釈される現代アートの作品群を包んでいるのが面白い。

そしてオランダ人レム・コールハースによる児童教育・文化センター(写真左)は企画展用のスペース。主張せず、建物を有機的につなぐ線としての存在を念頭にデザインされたらしい。

館内では、デジタルガイドを借りて廻る。これが、さすがサムソン、なかなか秀逸なガジェットだった。スマホくらいの大きさの端末を持ち、イヤホンを耳にかけてて作品に近づくと、自動的にその作品の説明が始まる。そして音声だけでなく、作品の写真と文字による説明も画面で確認でき、気になる作品はあとでリストから選んで聞き直す(or 読み直す)こともできる。音声ガイドにペースが合わないときも、これなら必要な情報を得やすい。


この美術館ならではのみどころはやはり、Museum 2の現代アート。日本ではあまり見る機会が多くない、戦後の韓国人アーティストたちの作品を、同時代の欧米のアーティストの作品と共に、共通したテーマの下に見ることができる。

全ての建物をじっくり見るなら、最低3時間はかけたい。



おまけとして、リーウムで入場料を払うと、分館のプラトー(Plateau)に入れるチケットもくれる。

市庁の近くにあるプラトーは、元はロダン・ギャラリーと呼ばれていて、今でも1階のスペースにロダンの地獄門がある。その手前にあるのは、韓国の女性アーティストのMinouk Limの企画展示。この新旧のコンビネーションは結構、絵になっていた。