2012年12月11日火曜日

雲の上のシャンパン・ブレックファスト

早朝に乗るはずだったビルバオからフランクフルト行きの便が、ヨーロッパ各地の荒天のため欠航に。これで午前中の羽田行きには乗れない。
提示された最も早い代替便はヨーロッパ内で二回乗り継いで成田行きに接続する午後のデュッセルドルフ行き。それがその後ディレイになり、チケットカウンターで接続便を再度変更したら、今度はキャンセルになり…

ヨーロッパでもう一泊する羽目になりそうだったところを、さっき振り替えをしてくれたルフトハンザのチケットカウンターのお姉さんの機転で、奇跡的に、もう搭乗が始まっていた別のフランクフルト行きと、そこからの成田への直行便に振り替えてくれた。こちらから頼んだ訳ではないのに、デュッセルドルフ行きがキャンセルになったのを見て、とっさに変更し、ラウンジに電話してきてくれたのだ。
「今すぐ、搭乗ゲートに行って!」

搭乗券を持ってゲートにやって来た彼女は、私の荷物もちゃんと同じ飛行機に乗るよう、自分で確認してくれたと言う。
本当にありがとう、とお礼を言って別れ、機内へ。

もう、起きてから10時間くらい経っている。
飛行機が雲を抜け、水平飛行に入ってから、アテンダントの女性が申し訳なさそうにミールを配った。
「ビルバオのケータリングが、間違えて朝食を積んでしまいまして…」
午後3時過ぎ。
あはは、と笑った。
いいじゃない、ちょうどシャンパンもあるし、雲の上の、遅めのシャンパン・ブレックファスト。

私の一日はここから始まったことにしよう。



2012年12月10日月曜日

グッゲンハイム・ビルバオ

今朝、ビルバオに着いた。ここでの滞在は一日だけ。

ここに来てグッゲンハイム・ビルバオに行かない人はいないと思う。それほど、工業都市だったビルバオを今の観光都市に変容させる大きな役割を果たし、今でもビルバオのツーリズムを牽引し続けている存在。

私も今回はグッゲンハイム最優先だったので、ホテルは正面にあるGran Hotel Domine Bilbaoを選んだ。Museum of Fine Artsからも歩いて近いので、アート鑑賞には便利なホテル。

快晴の青空の下、グッゲンハイムの前に立つと、チタンの戦艦のようなフランク・ゲーリーの建築が太陽の光を浴びて輝く。中に入る前にこんなに圧倒される美術館は多くない。その前に座るのはカラフルな花で作られた巨大な子犬(巨大な犬じゃなく、子犬)。ジェフ・クーンズの作品。大人から子供まで、思わずシャッターを切りたくなる要素がある。
館内では曲線的な動線に導かれ作品を鑑賞する。開催中のエゴン・シーレの企画展も悪くなかったが、この建物で最もあるべき場所にあると思われるのは、リチャード・セラの常設展示。1階にあるが、2階から見るのが正解。この角度からセラの作品を見るのは初めてだった。もちろん1階で作品の中に入るのもいいけれど、この俯瞰は必見だと思う。

グッゲンハイム以外も、ビルバオは明るい日差しが似合う建物が多い。昔の建築物も、アールデコ調の近年の建物も、未来的なビルも。それぞれが、派手ではないが色彩を維持しているせいだろうか。朝の逆光も午後の斜光も、美しく見えた。

緑と河に囲まれたビルバオの街は、晴れた日に散歩するだけでも元気になれる何かがある。

2012年12月9日日曜日

サンセバスチャンのバル

スペイン・バスク地方のサンセバスチャンにやって来た。食の街として最近日本でも注目が高まってきている場所。東京の行きつけのスペインバルのシェフに聞いたところ、もともと料理人の間では、スペインに行くなら絶対に外せないデスティネーションなのだそうだ。

ビルバオから1時間の小さな港街に、ミシュランの星を獲得したレストランや、世界的に評価が高いレストランが何軒もあることが世界中の観光客を惹きつけている一番の理由だが、この街がすごいのはハイエンドからカジュアルまで、一貫して食のレベルが高いこと。

サンセバスチャンの一番の楽しみは、何と言ってもバル巡り。
何十軒ものバルが並ぶ旧市街の土曜日は、昼の12時半を過ぎたころから活気づき、夜中まで続く。たまたま今日はバスク地方のカトリックの祝日で、新市街は商店の多くが休みで静かだったが、旧市街は関係なく、地元の人と観光客で大にぎわいだった。サンセバスチャンの天気は変わりやすく、晴れていたかと思えば急にスコールのような激しい雨が降ったりするが、バルは雨宿りにも便利。

どのバルもカウンターに様々なピンチョス(タパス)がずらりと並ぶ。スペイン語がわからなくても指差して注文すればいいので、とっても観光客フレンドリー。飲み物はチャコリが定番。微発砲の度数低めの白ワイン。ピンチョス一つと飲み物一杯だけで次の店に行っても全く問題ない。気軽さと価格はファストフード並みでも、料理としての質ははるかに高い。

数あるバルの中で、今回、個人的に最も気に入ったのはZERUKO。
開店から30分もすると立つ場所を確保するのも大変なほど混む、人気の店。そのピンチョスは花をあしらいまるでケーキのようなものや、一見して材料がわからない分子料理と呼ばれるものなど、とにかく華やかでクリエイティブで、見ているだけで楽しい。食べて初めて材料がわかるもの、食べてもわからないものなど、想像力にちょっとした刺激にもなる。五感、または六感で楽しむ食が、この手軽さで。

近未来の食のトレンドかもしれない。


2012年12月7日金曜日

雪のオルリーにて

ヨーロッパ各地の例に漏れず、パリも今朝は雪。早朝にホテルを出て、ニースからパリまでは何とか辿り着いたものの、そこからのフライトがキャンセルに。仕方なく、Paulが何軒も並ぶオルリー空港内で半日を過ごした。もう日差しが出てきているのが、嬉しいような、悔しいような。

昨日まで、毎年恒例のILTM(International Luxury Travel Market)に参加するためカンヌにいた。南仏のカンヌが例年になく寒かったのは寒波の影響に違いない。日中でさえ東京並みの寒さだった。明るい太陽とダジュールブルーと呼ばれる海の色が暖かな気分にさせてくれたけど、少し外にいれば、気分だけだと気づく。

ニースからスペインのバスク地方へは直行便がなく、三角形の二辺を通るような形でパリ経由のビアリッツ行きを予約していた。ほとんど所要時間が変わらないリヨン経由にしていればここで足止めを食うこともなかったのかもしれないが、ま、何があるかわからない。

そう思っていたところでインターネットを見たら、日本の地震のニュース。東京でもかなり揺れたらしい。自分も東京にいたら昨年の地震を思い出して緊張しただろうか。もし、地震を経験したことがない外国人旅行者の立場だったら、などと考える。

自然によって旅の予定が変更になるのは間々あること。災害や身の危険がない程度のハプニングは、むしろ楽しむくらいがいい。

遅れた分、私も今夜はサンセバスチャンで夜更かししよう。