イタリア北部・ヴェネト州の名産の一つにスパークリングワイン「プロセッコ」がある。
プロセッコはヴェネト州と隣のフリウリ・ヴェネチア・ジュリア州の一部のみで生産される。中でもイタリアワインで最上位分類のDOCG(統制保証原産地呼称)のものは、コネリアーノとヴァルドッビアデーネの間の丘陵地帯、およびアーゾロの周辺で生産されたものに限られる。この丘陵地帯は「プロセッコ・ヒルズ」と呼ばれ、2019年にユネスコ世界遺産に指定された。急な傾斜の土地を人手で耕し葡萄の栽培に適した土壌に育てた歴史や、その景観が評価されている。
Borgoluceというワイナリーを見学した。瓶内で二次発酵、長期熟成させるフランチャコルタやシャンパンとは違い、プロセッコはそのフレッシュさ、フルーティーさを楽しむ飲み物。巨大なステンレスタンクで二次発酵させ、早ければ30日で熟成も完了。生産コストが比較的抑えられるため、価格もお手頃なものが多い。
魅力的な小さな街もある。それが前述のアーゾロ。15世紀にキプロスの女王だったカタリーナ・コルナーロが、キプロス王国と引き換えにヴェネチアからアーゾロを与えられた。彼女の下でアーゾロには芸術家たちが集まり、今でもその歴史はこの町に大きく影響している。
アーゾロには城壁や、ポルティコと呼ばれる屋根付きの歩道が残る。5つ星ホテルVilla Ciprianiではその美しい庭園や、周囲の丘のパノラマ風景も楽しめる。
プロセッコ・ヒルズとヴェネチアの中間に位置するトレヴィーゾも落ち着いたいい街。澄んだ水の運河が流れ「スモール・ヴェニス」とも呼ばれる。トレヴィーゾはティラミス発祥の地としても知られ、ちょうど街では「ティラミス・ワールドカップ」が開催されていた。世界中から(?)挑戦者たちが集まり、ティラミス作りの腕を競うらしい。それくらいティラミスはトレヴィーゾと切り離せない存在になっている。
トレヴィーゾでは壁画にも注目。トレヴィーゾ生まれのマリオ・マルティネッリというアーティストの作品が面白い。遠くから見るとわからないけど、金網を使った影アート。
ヴェネチアだけではもったいないヴェネト州。予定外の街に一日足を延ばしてみるだけでも、旅の深みがぐんと増す。