2022年10月30日日曜日

ブルス・ド・コメルス

3年ぶりにやっと行けたパリ。早速、ずっと気になっていたブルス・ド・コメルス(Bource de Commerce)を訪れた。

ブルス・ド・コメルスはケリングCEOのフランソワ・ピノーの私設美術館で、2021年5月にオープン。元は穀物取引所や商工会議所として使用されていた建物が安藤忠雄の手で生まれ変わった。以前はあまり治安が良くなかったエリアの流れを変えるのにも一役買っているらしい。


中央は大きな吹き抜けの空間。ガラスのドーム天井から外光が差し込み、明るい館内。安藤氏は歴史ある建物の改装にあたり、もともと円い建物の内部に更に円筒を作り、その内側と外側に展示室を配置した。

展示室は全部で10。複数の企画展が並行し、ピノーが40年間にわたり蒐集してきた現代アート約1万点の中から展示される。


ヴェネチアにあるピノーの美術館、パラッツォ・グラッシとプンタ・デラ・ドガーナでも、歴史的建物が使われた(その時も安藤と組んでいる)。パリのブルス・ド・コメルスでも同様に、歴史ある建物を修復・改装することを選んだ。

ドーム天井を囲む19世紀の壁画も修復師が美しく再生。写真では小さくて良くわからないかもしれないが、その壁画の下で、手すりにとまっているハトたちは現代アート作品。


18世紀の穀物取引所の面影を残すのがダブル螺旋階段。重いトウモロコシの袋を担いで穀物庫と1階を行き来する運び夫たちがすれ違わなくて済むように設計されたものだそう。当時の知恵が美しいフォルムで保存されている。

現代アートと歴史が建物を通じて融合する素敵な美術館。