2025年6月22日日曜日

フリック・コレクションのリニューアルとフェルメール展

ニューヨークのアッパーイーストサイドにある美術館「フリック・コレクション」が、約5年間に及ぶ改装を終えて今年3月にリニューアルオープンした。

同美術館は鉄鋼王のHenry Clay Frick氏のコレクションを展示するために1935年に開館。今回は総工費2億2000億ドルという本気のリノベーションで、ただ改装しただけではなく展示スペースも拡大している。

その再オープンを記念して6月18日に始まった企画展が「Vermeer's Love Letters (フェルメールのラブレター)」。展示作品は3点だけにも関わらず多くの人が訪れる大盛況。やはりフェルメールはどこでも強い。フリック・コレクション所蔵の「婦人と召使(Mistress and Maid)」、オランダのアムステルダム国立美術館の「恋文(The Love Letter)」、そしてアイルランド国立美術館の「手紙を書く婦人と召使(Woman Writing a Letter with Her Maid)」の3作品が横一列に並ぶ。それぞれサイズは異なるが、召使いと女主人の二人が登場し、女主人が関わる恋文が主題になっているところが共通している。


緻密に描かれた室内の様子や衣服、調度品、小物類から登場人物の立場や地位が想像できるのもフェルメールの面白さ。展示室内は写真撮影禁止なのでじっくり鑑賞。これ以外にも2点のフェルメール作品が別の部屋に展示されていた。

フェルメールはフリック・コレクションのごく一部に過ぎない。ダイニングルーム、ライブラリ、リビングホールなど、フリック家が暮らす邸宅だった頃の名を残す各ギャラリーには、レンブラント、ヴァン・ダイク、ターナー、コロー、ドガ、ゴヤ、フラゴナールなどなど、錚々たるヨーロッパ絵画の大家の名が並ぶ。一言でいうとすごいコレクションなのだ。

陶磁器ギャラリーが新設されたり、以前はアクセスできなかった大階段が通行可能になったり、新しい見どころも多い。

美術館が1935年に最初に開館した頃は、作品に合わせて生花を飾っていた。今はそれができないため、ウクライナ出身のアーティストによる精巧な陶器の花が会場のあちこちに飾られている。これも期間限定の企画展示。本物と見紛うものもあり、つい触ってみたくなる来場者も多いが、そうすると係の人が飛んでくる。

中心にあるガーデンコートは、鑑賞の合間にひと息つきたい明るく気持ちのいい空間。


帰る前にミュージアムショップに寄ろうとしたら、入店を待つ人の列ができていた。店内が混み過ぎないようにコントロールしているのだが、少し待って入ってみた。なんとも趣味のいい品揃え。よくあるマグカップとかマグネットとかのロゴグッズはなく、お洒落な高級陶磁器のティーカップ、22Kのジュエリーなど、選りすぐりの商品を置いている。お土産ではなくギフトを買えるお店がある美術館っていいなと思いながら後にした。