今年3月30日にオープンした鳥取県立美術館。県立博物館から美術部門が独立して設立され、県立美術館としては日本最後発と言われている。開館記念展「アート・オブ・ザ・リアル 時代を超える美術 若冲冲からウォーホル、リヒターへ」がずっと気になっていて、閉幕ギリギリで行くことができた。
鳥取県立美術館は鳥取市ではなく、鳥取駅から特急で30分くらいの倉吉市にある。倉吉駅は美術館大歓迎モードの階段ラッピング。
美術館は倉吉駅から更にタクシーやバスで10分ほど行った静かなところにある。遠路はるばる、やっと到着。
入口のすぐ横の、外からも見えるところにウォーホルのBrillo Boxらしきものが積まれている。よく見ると森村泰昌作の「Morillo Box」。何がリアルかを問う展示はすでに始まっている。
展示室がある3階までエスカレーターを上がっていき、開けた造りの館内を見下ろす。
展示作品は江戸時代から現代まで、国内外の100名以上のアーティストの作品が約180点。それを「リアル」をキーワードに様々な切り口でまとめている。写実性の追求、キュビズムなど写実を超えた表現、生活の中のリアル、物質や物体そのものの存在、身体、事件や戦争の記録といった具合に。展示は近世の鳥取画壇のコレクションからスタートし、その後は「あ、これ見たことある」と多くの人が思うであろう錚々たるラインアップが日本中の美術館やギャラリーから集結している。
また中には、鳥取らしくシュルレアリスムを砂丘をテーマにまとめたコーナーも。
この美術館で最も有名な収蔵作品は前述のアンディ・ウォーホルの「Brillo Box」。2022年に鳥取県が3億円で購入したことが話題になり、今回が初公開。他のウォーホル作品と一緒に展示されている。ウォーホルは何度も見た作品でも、例えばそこに描かれているのがスープ缶にすぎないとわかっていても。やはりまた見てしまう。それがウォーホルの魅力。
だから鳥取も、倉吉駅の装飾しかり、Brilloパッケージのオリジナルのお菓子を作ったり、総力を挙げてこの作品を地元のキャラクターにしようとしている。
Brillo Boxは、リアルを問うこの記念展の目玉として良かったと思うし、鳥取県立美術館のコレクションとして、他の美術館から借りてきたAクラスの作品群と比べても引けをとらなかった。さて、この先はどうしていくんだろう。県はこの作品を県が保有し続けるべきかどうかを問うアンケートを来館者に対して行ったらしいが、この展示が成功だったかどうかもわからないうちにそんなことを問うなら、信念ある購入だったはずのものが揺らいでしまわないかと思う。それよりこれからもコレクションを軸を軸に注目の展示を次々に打ち出し、人の流れが出来たら面白い。そうしたらまたはるばる出かけてみたい。