ちょっと前にクアラルンプールに行ったとき、面白そうなアートスポットを検索して「鬼仔巷」(クワイ・チャイ・ホン)を見つけた。それはチャイナタウンの小さな横丁で、ノスタルジックで魅力的な壁画に彩られている。描かれているのは1960年代、最盛期だった頃のチャイナタウンの日常。
ここは自然発生したわけではなく、チャイナタウンの再活性化プロジェクトの一環として2019年にオープンした。なので横丁とはいえ営業時間が9:00から24:00と決まっている。見学は無料。写真映えスポットとしても知られ、撮影を楽しむ観光客で賑わう。
クワイ・チャイ・ホンとは、「鬼っ子のちまた」という漢字から連想される通り、この辺りで走り回っていた子供たちにちなんだ名前らしい。
KLの強い日差しの下、木陰で涼を取りながら仕事する包丁研ぎの絵も人気。
夜の街としてのチャイナタウンを象徴する「Lady of the Night」が手に持つスカーフは実物で、風に揺れて手招きする。
階段を上ったテラスには最大の壁画がある。縄跳びで遊ぶ子供たちや洗濯物を干す女性といった人々の暮らしが活き活きと描かれている。
昔の日常というテーマも、緻密に描かれた細部、そして絵の中に入ったかのような写真が撮れる仕掛けも、もっと以前からシンガポールで壁画を描いてるYip Yew Chongさんの影響を思わせる。クワイ・チャイ・ホンの壁画は複数のローカルアーティストが描いているが、全体がキュレーションされ、テイストも統一されている。同じチャイナタウンでも、自分が描く欲求を優先したようなストリートアートも多いが、クワイ・チャイ・ホンのアートは、丁寧に人に見せること、人に伝えることを目的としている。そこが落書きと壁画の違いだと思う。
クワイ・チャイ・ホンは小さな横丁なので見学に時間はかからないが、それぞれの絵の脇にあるQRコードを読み込むと、絵の音声にアクセスできるので、あとでそれを見ても楽しい。
横丁を出て歩くと目に入った「妾」というポップな看板。いったい何屋なんだろうと気になりながらチャイナタウンを後にした。