2019年3月12日火曜日

「ピエール・セルネ&春画」展

銀座のシャネル・ネクサスホールでの「ピエール・セルネ&春画」展のレセプションへ。

大盛況でのお披露目となった今回の展示は、現代フランス人アーティストと、江戸時代の日本の浮世絵師たちの稀有な競演。いずれも性をテーマにしているが、直接的な表現でカラフルな春画と、見る者のイメージに任せるモノクロームのセルネ氏の写真は対照的で、面白いハーモニーを生んでいた。


会場の壁には丸い窓があちこちに開いていて、そこから見える向こう側の作品と鑑賞者たちも展示の一部を成す。


セルネ氏の作品は、言われないと絵かと思ってしまうが、実はスクリーン越しにシルエットを撮影した写真。被写体は、タイトルのカップルの名前だけが手がかり。
浦上蒼穹堂の春画コレクションは、北斎、歌麿、春信など一流の絵師たちのラインアップであることはもちろん、非常に保存状態が良く、とても200年以上経っているとは思えない色鮮やかさ。

レセプションの冒頭で、2月に逝去したカール・ラガーフェルドに黙祷を捧げた。主催者であるシャネルのコラス氏は、この展示はココ・ガブリエル・シャネルもきっと気に入ったはずだと述べた。時代が変わればクリエイターも変わり、文化が変われば表現も変わる。その中で普遍のものもある。それぞれの時代の価値観と美を見出す、興味深い展示だった。




舌の上の旅

変わった体験をした。

青山のIntersect by Lexusでの「Journey on the Tongue」という体験型エキシビションへ。

「舌の上で旅をする」というタイトルそのままの説明を読んでも、さっぱりわからないので、とにかく体験してみる。

まず、それぞれ違うオブジェが入った12のガラスケースを前に、開けて香りを嗅いで、一つ選ぶように言われる。土、花、毛皮、その他正体不明な香りが並ぶ。好きな香りよりも自分が嗅いだことがない香りのほうが面白い旅ができますよ、と。でも、嫌いな香りの旅はしたくないので、ニュートラルなものにしよう。黒い石の香りを選ぶと、「野生と瞑想」という札を渡される。これが私の旅のテーマ。(テーマは全部で3つある。)

同じテーマを選んだ人が4人ずつブースに入り、それぞれ椅子に座る。前には天井から重しのようなものが釣り下がっており、係の人が、先端に丸いキャンディーが付いたプラスチックの棒をそれに差し込んでいく。体験者は耳栓をしてキャンディーを口にくわえ、目を閉じて「旅」に出る。

耳栓をするということは、静寂の中で味覚だけに集中するということかと思いきや、口の中のキャンディーを通じて、振動とともにはっきりとしたサウンドが聞こえて来て驚く。ジャングルや、野生動物を連想させる音。耳から入ったのではないはずの音が、こんなに明確に聞こえるなんて!

キャンディーのほうは、口の中で溶けるにつれて味が変化する。自分が選んだ香りが含まれているらしい。

香りや音楽を使ったメディテーションは一般的だが、香りを味覚に変換し、味覚とサウンドを直結させた体験は新鮮。わずか4分間だったが、五感を意識できた旅だった。

私はどこへ行っていたんだろう?


2019年3月10日日曜日

アートフェア東京の週末に

今年もアートフェア東京が終わった。
毎年、何に出会えるか期待感でわくわくするイベントで、また、行かないと取り残されるような気がするイベントでもある。

雨だった木曜日午後のプレビューは、「買い物モード」で来ている真剣且つ場慣れしたコレクターと業界関係者が多く、テンション高めの空気。むしろ一般公開初日の金曜日のほうが、「鑑賞モード」の人が増え、より落ち着いてアートを楽しめた気がする。

今年はロビーギャラリーの入場無料の企画展示に大きくスペースを取っていた。31か国からの作品を展示したミニ・ビエンナーレ的展示や、注目アーティストの個展形式のブースなども楽しめた。

いつからか、汐留のパークホテル東京での「Art in Park Hotel Tokyo(AiPHT)」も同時開催されるようになり、二つのイベントをハシゴしてアート・ウィークエンドを満喫できるようになった。AiPHTのほうが小規模で新人の作品比率が高いが、気軽に買える金額の作品も多いので、購買意欲を上げる点でアートフェア東京との相乗効果は多少あると思う。

今回驚いたのは、2013年に2000円だったアートフェア東京の1 Day Passが、今年2019年は5000円になっていたこと。こんなにインフレ率が高いイベントって他にあるだろうか?もしそれでも入場者数に影響がないなら、日本でのアートの購買者層が確実に増えているということなのかと推測する。

会場でもらったフリーペーパーの調査によると、世界の美術品市場637億ドルのうち、シェアが突出しているのは米国(42%)、中国(21%)、英国(20%)の順で、日本は約3%らしい。一方、世界GDPのシェアは米国24%、中国15%、日本6%、英国3%。単純比較はできないが、欧米・中国と比べて日本は美術品に対する財布のひもが固いということは言えるだろう。アートの購入がより身近になり、増えていくことがアート産業にとって良いことなのは言うまでもない。しかし高額で購入するだけが全てでもなく、国としてバランスが取れたシェアがどの辺りなのかはわからない。

というようなことは日々気にせず、自分が好きな作品に出会う楽しみを求めて、またアートフェアに出かけよう。