2017年10月26日木曜日

上野で、北斎とゴッホを見る

最近、上野で二つの美術展を見た。一つは国立西洋美術館の「北斎とジャポニスム」展、もう一つは東京都美術館の「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」。ほぼ同時にスタートしたこの二つの展示は、事前のすり合わせがあったのか全くの偶然なのか知らないが、いずれも「日本が海外の美術に与えた影響」というテーマを扱い、展示している作品の時代やアーティストも重なっている。

「北斎とジャポニスム」のほうは、葛飾北斎の作品と、それに影響を受けた(と思われる)西洋の作品を並べた興味深い展示。セザンヌ、モネ、ゴッホなど、名だたるアーティストたちの作品に隠された北斎の影響に、「なるほど!」と新たな視点を与えられる。かなりの点数があり、作品の組み合わせを見つけるだけでも相当の年月を要したのではと想像される。

しかし、キービジュアルになっているドガの絵のキュートな踊り子のベースがお相撲さんだった(かもしれない)というのは、やや衝撃。言われてみれば、確かに似てる。


「ゴッホ展」のほうは、日本に影響を受けた側のゴッホを中央に据える。アムステルダムのゴッホ美術館との共同企画で、札幌、東京、京都を巡回した後、2018年春にアムステルダムでフィナーレを迎える。


ゴッホは、浮世絵や書物でしか知らない日本に理想郷を見出した。特に南仏時代に鮮やかな色彩で描いた日本のモチーフは、ゴッホ独自の日本のイメージを表している。

興味深かったのは、ゴッホの死後、大正から明治時代にかけてはるばる日本から「ゴッホ聖地巡り」をした日本人たちがいたという事実。ゴッホが最期を過ごしたフランスのオーヴェールを知識人たちが続々と訪れたことを示す「芳名帳」が公開されている。当然、旅客機などない時代のこと。パリ近郊の町などちょっと気軽に行けるところではない。それでも展示されている3冊の芳名帳だけで、のべ260名以上の名が記されているそうだ。その知的な熱狂たるや、今のアニメの聖地巡礼どころの騒ぎではなかったに違いない。ゴッホは架空の日本に影響を受けた以上に、現実の日本に影響を与えた。

この二つの展覧会は、見た後で頭の中でリンクし、補完し合う感じがした。両方見てみることをお勧めする。