2019年8月14日水曜日

100チェロ

「100チェロ」というコンサートに行く機会があった。
その名の通り、100人のチェロ奏者が、チェロだけで演奏する。

イタリア人のジョヴァンニ・ソッリマというチェリスト率いるこのプロジェクトは、もとは2012年、ローマの歴史ある劇場の閉鎖に反対するためのパフォーマンスとして発足し、目的を果たした後も、ヨーロッパ各地で展開されてきた。それが今回、日本に初上陸。

日本で集められた100人(正確には122人と言っていた)のチェロ奏者たちは、子供からお年寄りまで、アマチュア、ビギナー、プロが混在するオープンな構成。演奏する曲目もクラシックから、ブラームスのピアノ協奏曲(ピアノ無し)、そしてピンク・フロイドまで、実に幅広い。

ソッリマ氏の演奏はじっとしておらず、むしろロックギタリストのようにチェロを自在に操りながらのパフォーマンス。この演奏に参加した知人によると、彼はどんな姿勢で弾いても正確な音程を外さなかったそう。天才とはそういうものだろう。

そして、天才の要求は得てして厳しい。
リハーサルはコンサートの2日前から当日までの3日間。奏者たちは、チェロを演奏しながら足踏みをしたり、歌ったりという、普段はしないことをソッリマ氏に求められた。これがチェロオンリーの演奏にメリハリを加える要素の一つなのだが、最初は皆、この難題に戸惑ったらしい。

それでも完成した演奏は、想像していたより音域も広く、一種類の楽器だけとは思えない豊かな表現で、どんな曲も自然に「チェロのもの」になっていた(それは足踏みや歌がなくてもそうだった)。そして、ずらりと並んだチェロの壮観なこと!時折、演者全員がチェロを高く持ち上げるパフォーマンスでは、一つ一つの色合いが微妙に異なるチェロが照明を受けて輝く様が一層美しかった。チェロを聴かせるだけではなく魅せる演出は、チェロそのものへのオマージュだろう。


チェロを聴き、チェロを見る、面白い体験だった。