2012年10月12日金曜日

Gillman Barracks

シンガポールに9月14日にオープンしたばかりの新アート・デスティネーション、Gillman Barracks(ギルマン・バラックス)を訪れた。

中心地から少し離れた郊外の、イギリス統治時代に軍の施設として使われていた場所を、アジアの現代アートのハブとして再生すべく、シンガポール政府が1000万シンガポールドル(約6億4000万円)を投じたプロジェクト。

地下鉄のLabrador Park駅から、バス停以外何もない道を10分ほど歩くと、Gillman Barracksと書かれた大きな看板が視界に入ってくる。うっそうとした森に囲まれた6.4ヘクタールの広大な敷地。
そこに点在する白い建物のそれぞれに、ひっそりとギャラリーが入っている。

ただでさえ静かな環境なのに加え、平日の午後に訪れたせいもあり、ギャラリスト以外、他のお客にはひとりも遭遇せず、かなりシュールな気分だった。振り返ったら、今あったはずのギャラリーがなくなっているような。

とはいえアートのラインナップは押し並べてハイレベル(・・・若干、差はあるにせよ)。日本の小山登美夫ギャラリーやミズマアートギャラリーを含む13のギャラリーが出店しており、ローカルよりインターナショナルな顔ぶれ。中国、韓国、米国のほか、日本ではあまり目にする機会がないフィリピンやインドネシアのアートも見られる。

2013年にはここにコンテンポラリー・アート・センターができ、ギャラリーの数も19に増えるとのこと。そのうち活気が出て、北京の798のように観光地化されていくのだろうか。

それも悪くはないけれど、私は今のシュールさ、嫌いじゃない。

2012年10月11日木曜日

バタム島の新リゾートと、映画産業の関係

シンガポールからフェリーで30分。
マングローブが生い茂るフェリーターミナルから、インドネシアのバタム島に降り立った。
主にシンガポール在住の人たちが、都会からの逃避を求めてやってくるリゾート地として知られる。

隣のビンタン島(シンガポールから1時間)よりアクセスがいいのに、日本での知名度が高くなかったのは、ラグジュアリーにカテゴライズされるホテルがなかったせいもある。

そのバタム島に初の5つ星リゾートが誕生。Montigo Resorts Nongsaは、今年6月にソフトローンチし、2013年初めにグランドオープン予定。2ベッドルームの3階建てのヴィラが88棟。整然と並ぶコンテンポラリーな外観のヴィラの中は、白を基調に、ところどころに木のぬくもりが感じられるインテリア。海を見ながらテラスのインフィニティプールで泳ぐこともできる。3ベッドルームのレジデンスも現在建築中で、2013年に完成する予定。

客室はホテルとして外部のゲストが利用するほか、オーナーシップ制度があり、すでに多くのヴィラがシンガポールや海外の資産家に売却済みとのこと。それもキャッシュで買う人が多いという。

シンガポールより物価が安いインドネシアにおいて、特にバタム島は政府が自由貿易地区に指定しているため、日本を含む各国の企業も進出している。その中でリゾートシーンに影響を与えそうなのが、シンガポールの映画プロダクションが建てた撮影スタジオ。

撮影スタジオはMontigo Resorts Nongsaのすぐ近くにあり、現在撮影中のHBO AsiaのTVシリーズのキャストは同リゾートに宿泊している。アジアだけでなく、ハリウッドから来ている俳優もいるらしい。バタム島には他に5つ星リゾートはなく、ランクの高い俳優はほぼ例外なくここに泊ることになるので、スターに遭遇する確率が高いリゾートと言ってもいいかもしれない。それだけでなく、エンターテイメント業界の人々をターゲットにしたそれなりに垢ぬけた店が、今後周りに増えていくことも期待できる。

バタム島、ちょっと注目しておきたい。

2012年10月1日月曜日

日本のワイン

9月最後の週末、長野県東御市のワイナリーのブドウ収穫に参加した。
このワイナリーが最初に自社で醸造を始めた2年前から、縁あって参加の機会を頂いている。

普段はガーデニングの類はほとんどしない私も、この作業はとてもはまる。
今にもはじけそうな実がぎっしり詰まったソーヴィニヨン・ブランの房を取り、傷んだ実(粒)をひとつひとつハサミで取り除いていく。

山と畑に囲まれた土地で、聞こえるのは葉擦れの音と、虫の声。
東京で秋の虫の声を聞くのは夜だけなので、あ、虫って昼間も鳴いてるのね、と、当たり前なことに今更気付く。また、突然カエルが大合唱を始めた理由がわからず、ただ笑ってしまう。

そんな環境で無心に作業に没頭し、ひとつひとつの房を完璧に仕上げ(たと思う)、カゴに入れていく。悪い実を残してしまうと、それがワインにも影響するので、敬意を払い、丁寧に。

このワイナリーをはじめ、日本のワインが近年めきめきと質を上げていることも、収穫作業を一層興味深いものにしている。

収穫の前夜、軽井沢の「Yukawatan」で食事をした。

ホテルブレストンコートの離れにあり、誘導路の長さが演出する期待感を裏切らない、素晴らしい料理を出すお店。未就学児お断りのポリシーも、ある程度の感性と理解力を要求する料理を、それに合ったターゲット層に、相応しい空間で提供しようとする店の姿勢を表していて、好感が持てる。

地元の食材をフィーチャーした料理に合わせるワインリストの中心にあるのは、長野のワインだった。ドメイヌ・ソガ、Rue de Vin、城戸ワイナリーなど精鋭ラインアップ。(去年自分が摘んだソーヴィニヨン・ブランをリストに見つけ、ちょっと嬉しくなる。)

金額もフランスの一流シャトー並みで驚いたが、その中で選んだシャルドネは、香りも味の深みも、かつての「日本のワイン」からイメージするものからはかけ離れており、食事の最後まで楽しめるものだった。

ソムリエが自信を持って勧められる「地ワイン」が増えるのは、旅の客にその土地への興味を深めてもらう意味でもいいことだと思う。

まだ日本では少ない上質な「泡もの」も、これからどんどん出てきますように!