9月最後の週末、長野県東御市のワイナリーのブドウ収穫に参加した。
このワイナリーが最初に自社で醸造を始めた2年前から、縁あって参加の機会を頂いている。
普段はガーデニングの類はほとんどしない私も、この作業はとてもはまる。
今にもはじけそうな実がぎっしり詰まったソーヴィニヨン・ブランの房を取り、傷んだ実(粒)をひとつひとつハサミで取り除いていく。
山と畑に囲まれた土地で、聞こえるのは葉擦れの音と、虫の声。
東京で秋の虫の声を聞くのは夜だけなので、あ、虫って昼間も鳴いてるのね、と、当たり前なことに今更気付く。また、突然カエルが大合唱を始めた理由がわからず、ただ笑ってしまう。
そんな環境で無心に作業に没頭し、ひとつひとつの房を完璧に仕上げ(たと思う)、カゴに入れていく。悪い実を残してしまうと、それがワインにも影響するので、敬意を払い、丁寧に。
このワイナリーをはじめ、日本のワインが近年めきめきと質を上げていることも、収穫作業を一層興味深いものにしている。
収穫の前夜、軽井沢の「Yukawatan」で食事をした。
ホテルブレストンコートの離れにあり、誘導路の長さが演出する期待感を裏切らない、素晴らしい料理を出すお店。未就学児お断りのポリシーも、ある程度の感性と理解力を要求する料理を、それに合ったターゲット層に、相応しい空間で提供しようとする店の姿勢を表していて、好感が持てる。
地元の食材をフィーチャーした料理に合わせるワインリストの中心にあるのは、長野のワインだった。ドメイヌ・ソガ、Rue de Vin、城戸ワイナリーなど精鋭ラインアップ。(去年自分が摘んだソーヴィニヨン・ブランをリストに見つけ、ちょっと嬉しくなる。)
金額もフランスの一流シャトー並みで驚いたが、その中で選んだシャルドネは、香りも味の深みも、かつての「日本のワイン」からイメージするものからはかけ離れており、食事の最後まで楽しめるものだった。
ソムリエが自信を持って勧められる「地ワイン」が増えるのは、旅の客にその土地への興味を深めてもらう意味でもいいことだと思う。
まだ日本では少ない上質な「泡もの」も、これからどんどん出てきますように!