ブータンの人は日常的にお寺にお参りします。
お寺に入る際、男性は清めの意味で民俗衣装の上から白い肩布をかけます。
靴を脱いで上がり、神様の像の前では、合わせた両手を額、口元、胸の前に順に持っていき、座って頭と両手を床につけるように礼をするという流れを3回繰り返すのが、ブータンの祈り方です。
そしてお賽銭や食べ物を捧げて帰ります。
首都ティンプーのタシチョゾンを訪問した際は、ちょうどブータンの新年の祝日で、仏の聖遺物とされるものの特別展示がありました。
皆、色とりどりの民族衣装で正装し、家族や友人同士連れ立って、長い列を作ってお参りしていました。
日本人も神社やお寺にお参りする機会は多く、神社では二礼二拍手一礼の作法も守りますが、服装は短パンだったりしますね。気持ちの問題なので別に悪いことではないと思う一方、ブータンの人々の神に対する居住まいの正し方は、ちょっと見習うところがありました。
観光客の立場でも、地元の人々の参拝の習慣にはなるべく従い、まねできないところはせめて邪魔しないように、という気持ちに自然になるものです。
・・・しかし、どこにでもびっくりするような人たちはいるもので。
パロのキチュラカンという、7世紀に建てられたとされる有名な古寺を訪ねたときのこと。
日本人のシニア層のグループが来ていました。
地元の人々が静かにブータン式の祈りを捧げる中、その人たちは、床に座って日本式のお経を大声で合唱し始めたのです。
よくお葬式とか法事で聞く、ああいうお経です。
ブータンの人々は黙って祈るだけなので、その日本人たちのお経だけが響き渡り、寺院内は異様な雰囲気。
私もあまりにもぎょっとして、どこの宗派のお経かも確認できませんでしたが・・・。
信仰のかたちは人それぞれとはいえ、そんなところで自己主張しなくてもいいんじゃない?
ああやって世界各国の寺院を廻ってるんだろうか、あの人たち。