閉幕間近となった「ジャクソン・ポロック展」に昨日行ってきました。ポロックの生誕100年を記念して日本で初めて開催された大回顧展。
ポロックの作品は、一目見て衝撃を受ける人がいる一方、単品で見せられてもツボにはまりにくい人も多いと思います。私も後者のタイプで、これまで各地の美術館などで彼の作品を見ても、どうという感想を持たずにいました。でも今回の展示は、彼の生涯のコンテクストの中で作品を見せ、ポロックファンならずとも感情移入しやすい構成だったと思います。
その流れの中で見るクライマックスが、1950年制作の「インディアンレッドの地の壁画」。圧倒されるような色と線。最高潮に達していたポロックのエネルギーを感じました。
ポロック展と同時開催中の「原弘と東京国立近代美術館」展も、なかなか新鮮でした。今年60周年の同美術館の開館から23年間、美術展のポスターを一貫して手掛けたデザイナー原弘(はらひろむ)氏の作品群です。同氏のポスターのデザインは、古さがかえって新しさを感じさせるものも、そのまま現代にあってもまったく違和感がないものもあり、均整の取れた普遍的な美しさを見せています。興味深かったのは、同氏がグラフィックデザインを手がけた「FRONT」という日本の対外宣伝誌。ソビエト牽制の目的で、戦前から戦中にかけて複数言語で発行されたそうです。要は日本の軍隊の優秀さ、強さをアピールするためのものですが、これがとても美しいビジュアルで構成されているのです。今だったらこんな美しい軍隊グラビア誌、作れるでしょうか?
美は、時に圧倒的な強さを印象付ける手段にもなるのだと実感した作品でした。