2016年10月8日土曜日

神勝寺「洸庭」

尾道に近い禅寺に、現代アートパヴィリオンが出現した。

9月11日に「禅と庭のミュージアム」がオープンしたのは広島県福山市の神勝寺。森のような広い敷地には茶室などの建物が点在し、散策路がつないでいる。最大のハイライトは、アーティストの名和晃平氏による体験型インスタレーション「洸庭(こうてい)」。

洸庭があるスペースだけは、車道を隔てた反対側にある。山道の階段を上がり、真っすぐに延びる橋を渡ると、向こうには違う世界が待っているような期待感。

現れたのは、敷き詰められた石の上に浮かぶ、方舟のような大きな建築物。


伝統的なこけら葺きの手法と曲線が、独特の質感を出している。


石は海を表現しているそう。この石も、植え込みの木も、まだ真新しくて尖った感じだった。


パヴィリオンには一組ずつ入れる。宇宙船に一つだけ空いたスリットのような入り口から、暗闇に入っていく。小さな懐中電灯を渡され、足元を照らしながら奥へ進むと、そこには本物の水が張られた空間があった。

真っ暗な中で、明かり取りからわずかに差し込む光が、小さく波立つ水面を照らす。遠い月明かりを受けたような、穏やかで、無限の広がりを感じさせる海が、方舟の中にあるという不思議。

ほんの2分程度の滞在だったが、心落ち着く体験だった。


後で聞くと、このお寺は地元の大手造船会社のグループが建てたそうだ。元は造船と海の安全を祈願するためだったのだろうと想像すると、あのパヴィリオンは海を祀った祭壇のようにも思える。現在は禅の教えに広く触れてもらおうと、道場で国内外からやってくる修行者を受け入れているほか、日帰りでの禅体験なども提供している。

余談だが、洸庭にあった恐竜の集団を思わせるような奇妙な植え込み(?)は、何だったのかよくわからないが、妙に印象に残っている。