2019年10月27日日曜日

ルーヴル美術館のダ・ヴィンチ展

2019年はレオナルド・ダ・ヴィンチの没後500周年で、ヨーロッパを中心に様々なイベントが催されている。中でも作品数・内容ともに群を抜いているのが、10月24日から始まったルーヴル美術館の「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」。今後、少なくとも数十年は無いと思われる規模なので、ダ・ヴィンチファンならずとも足を延ばす価値は十分にある。


運良く開幕初日に訪れることができた。入場はインターネットでの予約制。人気のため数日前には予約しないと枠が無くなってしまうが、そのおかげで混みすぎず、快適に鑑賞できる。尚、モナリザはこの展覧会には含まれず、通常の展示室にある。

今回の展示はルーヴル所蔵作品に加え、世界各国から可能な限りのダ・ヴィンチ作品が集められた。生涯で15点程度しかないとされる油絵の半数以上が含まれるほか、デッサン、下絵など、同時代の画家や弟子たちの作品も含め、180点近いダ・ヴィンチゆかりの作品が展示されている。肉眼では見えない部分を再現した赤外線リフレクトグラフィーも多い。


展示は4つのパートで構成され、最初の「影、光、レリーフ(Ombre, Lumière, Relief)」はヴェロッキオ工房時代の作品。ドレープの質感を光と影の要素だけでリアルに再現した彫刻の下絵に、鑑賞者が見入る。

2番目の「自由(Liberté)」は、工房を出た後、自身の自由な表現方法を求めた時代。今回の展覧会のキービジュアルになっている「ミラノの貴婦人の肖像」や、エルミタージュ美術館所蔵の「ブノアの聖母」も含まれる。

3番目は「サイエンス」。科学者としての膨大かつ詳細な研究メモを展示しており、物理、人体、建築、植物学など、その興味の対象は幅広い。情報の入手や記録に今よりはるかに時間を要したはずの15世紀に生きたダ・ヴィンチに比べ、情報に囲まれテクノロジーに守られた現代人(私)のなんと脆弱なことか。



最後は「生命(vie)」。「最後の晩餐」を制作した1490年代以降の作品が展示されている。その自然科学の知識が表現を邪魔したこともあったそうだが、「モナリザ」、「洗礼者ヨハネ」など、代表的な絵画が生まれたのもこの時期。

「最後の晩餐」はさすがに本物は持ってこられないため、同時代の画家による複製を展示

ダ・ヴィンチは現代に通じる審美眼を持っていたと実感するのは「洗礼者ヨハネ」。十字架を手に、いたずらっぽくほほ笑む姿は、500年前の洗礼者というより、むしろ最近のイケメンアイドルを思わせる。結構な確率で女性客が惹きつけられていた。



もう一つ目に留まったのは「サルバトール・ムンディ」。これはもしかして2年前に4億5000万ドルで落札されたあの絵?と思ったが、そうではなく、ダ・ヴィンチの弟子たちが制作した別バージョン。この500周年の舞台にも登場しなかった「あの絵」のほうは、ルーヴル・アブダビで去年9月に公開されるはずが突然中止になり、本当にダ・ヴィンチの作品かどうかの議論も決着しないまま、今どこにあるのか、いつ出てくるのかわからない状態になっているらしい。


ルーヴル美術館の「レオナルド・ダ・ヴィンチ」展は2020年2月24日まで。予約はお早めに。