オランダのアーティスト、レネ・リートマイヤー(Rene Rietmeyer)の個展を見に行った。
今回、作品と同じくらい楽しみにしていたのはその会場。今は「九段ハウス」と呼ばれている旧・山口萬吉邸。昭和2年(1927年)竣工の洋館で、東京タワーを手掛けた内藤多仲の設計。登録有形文化財に指定されている。以前一度行ったことがあり、学校やビルに囲まれてそこだけ時間が止まったような、また、できた当時から明らかに周りとは違ったであろうその場所は印象に残っていた。
個展のタイトル「Existence」は、リートマイヤー氏が常に追究しているテーマらしい。彼のホームページのトップには「結局のところ、私の作品は私の存在の証明でしかない」とある。
地下のフロアに入ると絵の具の匂いがした。展示された作品にはどれも「Kudan House 2021」とサインがあるので、アーティストが今月ここで描いたばかりなのだろう。同じ大きさの白い紙に直接絵の具を乗せて、似たようなパターンの四角形がそれぞれ違った色の組み合わせで描かれている。「最も気分に合うものを選んでください」という心理テストを思わせ、作品の意味を問うより、自分にとって落ち着きがいい色の1枚をつい探してしまう。