2021年2月24日水曜日

柴又の山本亭と、ノスタルジックな町並み

葛飾の柴又へ。柴又といえば日本人にとっては寅さんの代名詞だが、それだけではない。ここには海外でも名高い日本庭園「山本亭」がある。

山本亭は「Sukiya Living」というアメリカの日本庭園専門誌のランキングで常に上位に入っているそうで、2020年の発表では4位だったことを告げる嬉しそうな張り紙が入口にあった(ちなみに18年連続1位は島根県の足立美術館)。

そう聞くと、何か鑑賞の心得をもって臨まなくてはならないような気になるが、そんなことは全くなく、素敵なレトロ邸宅として見に行くだけで十分楽しめる。実際、入館料も100円(2021年2月現在)でとても敷居が低い。


山本亭は大正末期から昭和初期に建てられた個人の邸宅。書院造をベースに西洋の要素を取り込んだ近代建築の母屋の前に伝統的な庭園が広がる。


庭園に沿って伸びる長い廊下には、当時流行りだった大きなガラス戸がはめ込まれ、明るい自然光が家全体に差し込む。間仕切りを取り払った広い和室に座り、ゆっくりお茶をいただきながら、窓枠を額縁に見立て静かに庭園を眺めるひと時を過ごすのがお勧め。


松の木の雪吊りの立派なこと。花が咲く春も美しいに違いない。



さて、山本亭ですっかり穏やかな満ち足りた気持ちになったところで、せっかくここまで来たのだから、やはり「寅さん記念館」にも行ってみたい。山本亭とのセット券も販売されていて、柴又駅方面からは山本亭の敷地を通ってアクセスできる。


行ってみてわかったのは、寅さん記念館は、寅さんファンでない人も、寅さんの映画を全く見たことがない人も楽しめる必見スポットだということ。特に縮小サイズで再現された昭和30年代の帝釈天参道の町並みの精巧さには目を見張った。店先の商品や張り紙から、縁日の屋台で売られている小さなお面のひとつひとつに至るまで、ディテールの再現にも一切手抜きがなく、見事!これは世界に誇れるレベルだと思う。

現在の帝釈天参道にも旧き良き時代の雰囲気を残す柴又は、2018年に都内で初めて国の「重要文化的景観」に選ばれたとのこと。優しく楽しいノスタルジーに満ちた町だった。