「彫刻の寺」とも呼ばれる柴又の帝釈天の境内は数多くの彫刻で飾られている。中でも「彫刻ギャラリー」は必ず見学したい場所。
彫刻ギャラリーの目玉は「法華経説話彫刻」という10枚組の木彫り。大正から昭和にかけて制作された欅の厚板の胴羽目彫刻が、帝釈堂の建物の三方を取り囲む。東京の10人の彫刻家の競作で、いずれも劣らぬ力作揃い。それぞれが物語の一場面を細かにそして立体的に表現し、20センチという板の厚さ以上に奥行きを感じさせる。
彩色されていないのに、今にも動き出しそうな臨場感と躍動感。繊細な花の質感もリアルだった。その緻密な彫りの技量にただただ感動。
この胴羽目彫刻は、もともと横山大観の「群猿遊戯図」が彫られる予定だったのが、何かの理由で変更になったらしい。大観による下絵とされるものが大客殿に飾られている。果たしてこちらが実現していたら、だいぶ違った感じだったんだろうと想像する。
この大客殿と庭園の「邃渓園(すいけいえん)」は、彫刻ギャラリーとセットで見学できる。大客殿から伸びる回廊を歩いてぐるりと庭園をめぐる。
平日で人も少ない庭園散策は、ちょっとしたオアシス。芸術と緑に触れてリフレッシュされた訪問だった。