近年、ハイブランドの世界観を表した展示が注目される。切り口は様々で、シャネルの場合はココ本人、ルイ・ヴィトンの場合は旅、そして今開催されているグッチの「グッチガーデン アーキタイプ」展は、2015年からクリエイティブ・ディレクターを務めるアレッサンドロ・ミケーレの広告キャンペーンの回顧展となっている。
ブランド創設100周年を記念したこのイベントは、今年5月のフィレンツェを皮切りに世界を巡回する予定。東京では天王洲の倉庫を丸ごと使い、「没入型エキシビション」と銘打っている。
この「没入型」っていう言葉、最近あちこちで多用されている気もするが、今回のグッチでは、普通は平面でしか見ない広告の世界を、観客が中を通って体験できる3次元で再現していて、実際、グッチ・ワールドに迷い込んだような感覚を楽しめた。
全部で12の部屋に分かれた館内は、それぞれの部屋がひとつのシーズンのキャンペーンを再現している。
まず「Gucci Collectors」の部屋で視覚的に圧倒される。バッグや蝶がぎっしり整然と並んだ棚が天井と床の鏡に映り、永遠の万華鏡を繰り広げる。
ロサンゼルスの地下鉄を再現した「Urban Romanticism」は、マネキンのリアルさがすごい。実際の身体を3Dスキャン、3Dプリントして2ヶ月かけて作ったそう。
「Tokyo Lights」は、外国人観光客にアピールするかのような、サイケでキッチュな東京の夜の風景。
イグナシ・モンレアルの壁画が部屋いっぱいに広がる「Gucci Hallucination」は、時間をかけて鑑賞するほど面白い。ルネサンス絵画のようで、シュールで、リアルな世界。
キューピッドが手に持つメッセージは、よく見るとWifiのパスワード!このディテールが楽しい。
最後は特設ショップを通って出口へ。ノート、トートバッグ、オルゴールなど、展覧会の限定アイテムだけが並ぶ。いわゆる普通の「グッチのバッグ」などは置いていない。
プロダクトそのものをフィーチャーすることなく、訪れた人がグッチのブランドメッセージを感じ取れる展示。2021年10月31日まで(LINEで事前予約制)。