2022年4月29日金曜日

アルテピアッツァ美唄

新千歳空港から電車で約1時間半、北海道の美唄市へ。かつて炭鉱の町として栄えた美唄には美しくエンターテイニングなアートパークがある。

「アルテピアッツァ美唄」は、美唄出身で現在はイタリアを拠点に活動する彫刻家・安田侃が、廃校になった小学校の跡地を再生した美術館。


安田氏の作品は、都内でも東京国際フォーラムなどあちこちで見られる。なめらかなラインの大理石の大きな彫刻は、ビルに囲まれた都会の慌ただしさにも我関せずといった感じで、すべすべと泰然としている。そんな作品たちは自然の中ではどんな風にしているのだろう?

アルテピアッツァ美唄には、広い敷地に校舎と体育館だった二つの建物が残り、その内外に合計40点ほどの安田氏の作品が展示されている。ここにはいくつかの魅力的な要素がある。


要素1)絵になるシュールな風景

何といっても自然と、その中にある作品の数々が美しい!


少し斜面を登ると、林の中に大きな門のような彫刻が。突然現れた異次元の入口のような光景にしばし釘付け。くぐったら戻れるだろうか?

要素2)宝探し

彫刻の立場から言うならかくれんぼ。起伏がある土地は一目で見渡すことはできず、地図を見ながら作品を探して歩くが、それでも見落とすこともある(実際、帰ってからひとつ見逃していたことに気付いた)。

閉園寸前だった幼稚園がまだここにあった1980年代、安田氏は子供たちが喜ぶ広場を作ろうと、作品を一つ一つ増やしていったという。だからきっと子供たちが探す楽しみも意識していただろう。林の中にひっそりといる彫刻は、見つけてもらうのを待っていたようにも見える。都会で見せるクールさに対し、ここの作品は人懐っこい(気がする)。


要素3)自然散策

もちろん北海道の自然を除いては語れない。アップダウンがあり舗装されていないところを歩くので、スニーカーなどの靴で行くことが必須。ちょっと草むらに入ると「熊生息地」の看板が。え!ここで熊!?と、ちょっとひるむが、すぐ先に見える作品を目指して、わざと足音を大きくたてながら歩いて行く。自然の中での危機管理は忘れずに。


要素4)レトロな建築

炭鉱時代の遺産の古い体育館を使ったアートスペースと、校舎だったギャラリーは、いずれもいい味を出している。ちょうどギャラリーでは安田氏の1970年代のシルクスクリーンの企画展をしていた。自身の彫刻作品の形に色をつけたもの。あまり目にすることはない貴重な機会だった。



訪れたのは4月の終わり。アルテピアッツァにはまだ一部雪が残っていて、桜はこれからだった。日本は広い。

美唄は今ではアスパラや米を作る農家が多いとタクシーの運転手さんが言っていた。運転手さんは「田舎でしょう?」と言ったが、こんな素敵なアートパークがある場所は、日本全国でもそう多くはないと思う。