話題の「Brian Eno Ambient Kyoto」展を見に京都へ。
会場は京都駅から徒歩約5分の京都中央信用金庫・旧厚生センター。築90年というから昭和初期に建てられた3階建てのビル。最近、レトロな建築物をアート展会場として再生している例をよく目にする。雰囲気のある建物は見に行く楽しみを増してくれる。
今回展示されているのはイーノの代表作3つを含む4作品と、会場内で流れるオーディオ作品。今回のように「音と光」をキーワードにしたデジタルアートの展示は多いけれど、イーノ展はオーディオへのこだわりが特に強い。そのため会場内での撮影は、フラッシュはもちろん、シャッター音も禁止。スマホで無音撮影はなかなか難しいが、iPhoneのLive Photosモードの「ピコッ」という小さな音は見逃してくれていた。
展示は3階から順番に鑑賞。最初は「The Ship」というサウンド中心のインスタレーション。複数のスピーカーからの出る様々な音の不協和音。心地良くはない。「傲慢さとパラノイアの間を揺れ動き続ける人間のコンセプトの出発点とした作品」だそうで…メッセージが深すぎる。何を感じるかはその人次第。
次は新作「Face to Face」。スクリーンに3つの人の顔が映し出され、それぞれ実にゆっくりと違う顔に変わっていく。男性から女性へ。子供から老人へ。じっと見ているとどこが変わっているのかわからないのに、5秒くらい目を離して戻すと結構変わっている。
2階から下はちょっとトーンが変わり、まさに色と音の世界になる。「Light Boxes」という作品では、パターンが異なる3つの光の箱が壁沿いに並び、それぞれ違う色に変化していく。
今回のインスタレーションは京都を意識してか、竹林(ではなく明らかに木だけど)の中に三角錐型に積まれた砂が清め塩を思わせる。この清め塩も色を変える。
イーノが最初に「77 Million Paintings」を発表して以降、「音と光のアート」に関する技術はもっとすごいものが出てきているし、没入型アートという言葉も普通に聞かれるようになった。でもあえて没入型というワードを使わずアンビエントを貫くイーノの作品は、スペクタクルではなく、鑑賞者を取り巻く環境として、鑑賞者に受け止め方を委ねたのアートの形だと思う。
これを書きながら今更ではあるが、イーノのアンビエント・ミュージックを聴いてみた。もう少し聴いてみたいと思った。
(Brian Eno Ambient Kyoto展は2022年8月21日まで。)