2010年3月27日土曜日

「一角獣を抱く貴婦人」

遅ればせながら、上野の東京都美術館で開催中の「ボルゲーゼ美術館展」を見てきました。

展示のハイライトはラファエロの「一角獣を抱く貴婦人」。
キービジュアルとしてポスター等に使われているので目にされた方も多いと思います。

この絵、よく「ダヴィンチの影響が」とか、「一角獣は貞淑の象徴で」とかのコメントが付きますが、
そんなことより、ぱっと見て「え?」と思うシュールさ。

ドレスの布地や髪の毛の質感がリアルに描かれた女性の腕に、鋭くまっすぐ伸びた細い巻貝みたいな角を載せた、
すごく小さな馬?みたいな動物が抱えられてて、それがまた、ものすごく飼いならされてる感じ。

明らかな宗教画なら、多少の非現実性は見過ごしますが、普通の肖像画っぽいから余計に妙。

後にこの絵は何者かに上から重ね塗りされ、女性の肩が隠され、一角獣の代わりに車輪が描かれていたのですが、
20世紀に修復されて元の絵が出てきたそうです。
修復した人たち、びっくりしたでしょうねえ。

アートって、何を表現しているのか、本当のところは作者以外にはわかりません。
だから見る人それぞれの解釈があり、作者の意図しなかった共感や反感、謎解きも生まれ、何百年たっても話題を提供し続けるのでしょう。

日本での展示が終わった後、現地に作品を見に行くなら、ローマ北部のボルゲーゼ美術館へ(http://www.galleriaborghese.it/default-en.htm)。
広大なボルゲーゼ公園の中にある、17世紀に貴族ボルゲーゼ家の夏の離宮として建てられた館。ベルニーニのパトロンだったシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿以降、同家の膨大なイタリア美術コレクションが展示されています。
見学は2時間の枠で区切られ、一枠360人までの制限があるので、事前予約がベターです。