2016年3月21日月曜日

「サイモン・フジワラ ホワイトデー」展で思ったこと

東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の「サイモン・フジワラ ホワイトデー」展を見た。

Simon Fujiwaraを知ったきっかけは、最近訪問する機会を得た都内のプライベートミュージアム「游庵」で、彼の企画展示を見たこと。その時はなんだか変わったアーティストだなという印象だったが、調べたらオペラシティでも個展が開催中と知り、行ってみた次第。

オペラシティでの展示は、スペースを生かした大型の作品が中心。インスタレーション2点が展示された薄暗い廊下を通り、明るく広いフロアに出る。


北朝鮮の美術制作工房に注文したという牛乳の絵が目を引く。ガラスの箱の中では毛皮職人(?)が作業中。


ここで展示されていた、壊れた陶器とハンマーを並べた作品「再開のための予行演習」。


これ、入り口で配られる展示案内をよく読まないと(もしくはよく読んでも)わからないのだが、本物のバーナード・リーチの作品を壊したものなのだ。(これが、彼を変なアーティストだと思った所以。)
これを壊す過程そのものを映したビデオ作品を、前述の「游庵」で見たのだが、ほんとに壊すの!?と、ちょっと嫌な気持ちになった(しかも本当に本物らしい)。

いくら彼がお金を出して購入し、所有していたものだとしても、優れた美術品は文化財として、後世に残す責任があると思うのだ。ましてや物故者の作品、再生は効かない。リーチの作品を壊した自分と、その作品(残骸)を公開することで、どういうアイデンティティを表現したかったのか、私には今ひとつ理解できなかった。

とはいえ、それ以外の作品は楽しめた。例えば、今回最も大型の作品だった「レベッカ」。西安の兵馬俑を思わせる、テラコッタ色の石膏像がずらりと並ぶ。


これは、元の遺跡を傷つけることなくモチーフにして、アーティストなりのリメイクを果たした作品。整然と並ぶレベッカ像は圧巻だった。

これも最近、森美術館で見た「村上隆の五百羅漢図展」では、古代思想を現代的な色彩を表現で緻密に表現した大作に圧倒された。リメイクやアレンジは、元の作品へのリスペクトがあって初めて、元の作品を知らない同時代の人の共感も得られるのだと思う。