今回の旅の最大の目的は、カタルーニャ州アルト・エンポルダ(Alt Emporda)にあるヴィラ、マス・マテウ(Mas Mateu)での滞在。
アルト・エンポルダはバルセロナから車で1時間半、ジローナ空港から30分の位置にあり、コスタ・ブラヴァや、サルヴァドール・ダリの生地で美術館があるフィゲラスに近い。付近はヨーロッパでも有数のコルクの産地で、世界各地に輸出されている。
マス・マテウは70ヘクタールという広大な敷地を持つ18世紀のヴィラ。「マス」というのはファームハウスを意味し、かつては裕福な農家の屋敷だった。数年前にここを購入した現在のオーナーが、建物の外観を維持したまま内部をリノベーションし、より高い快適さと開放感を持つ家に仕上げた。
マス・マテウが他の多くの高級バケーションヴィラと異なる点は、専属のスタッフを抱えていること。ゲストが到着すると、スタッフが玄関の前にずらりと並んで出迎えてくれる。このヴィラを知り尽くしたシェフ、バトラー、客室係の女性たち、庭師たち、そしてオーナーの息子のアルフレッド氏も自ら、ゲストの滞在の世話をする。
メイン棟の7つのベッドルームはそれぞれ造りが異なるが、いずれも歴史ある建築ならではの趣と、高い天井、現代のテイストで選んだ家具やアートが上手に調和した贅沢な空間。窓やテラスからは、オリーブの木が並ぶ庭園と、その向こうに広がる森が織りなすヨーロッパ的田園風景が臨める。
客室のバスルームにはオリジナルのロゴが刺繍されたタオルや、ブルガリのアメニティ、バスローブなどが備えられ、5つ星ホテルと変わらない。もちろん水回りはすべて改装時に新しくなっている。
この田園風景の中に、何故かインフィニティプールがある。雲がない日は素晴らしい夕陽が臨めると聞いて納得した。赤く染まった空と水が一体になった風景はさぞ美しいに違いない。(残念ながら今回は見ることができなかったが。)
また、晴れた午後にプールサイドのラウンジエリアでカヴァとタパスを楽しむのもマス・マテウ流。
さて、旅で重要な要素は食。
この付近は、かつて世界一のレストランと言われた「El Bulli」があり、また現在のランキングでも2位の「El Celler de Can Roca」がある、いわば美食エリア。マス・マテウのプライベートシェフが作るのもヌエヴァ・コシーナの流れを汲んだ素敵な料理。
1階のメインダイニングの大きなテーブルを囲み、地元エンポルダのワインを合わせて頂くディナーは、まさに、ヴィラ滞在ならではのエクスクルーシヴで贅沢なひと時だった。
マス・マテウのオーナーとスタッフは皆、ゲストの様々な要望にできる限り応え、最高レベルのサービスを提供することを目指す、プロ意識が高い人々。そして、とてもプライベートなのに距離感が程よい。まさに「貸切り5つ星ホテル」と呼べる。
こういう宿を使いこなせる洗練されたトラヴェラーが増え、それに伴い個性あるヴィラがどんどん出てくると、ホテル市場も今とはまた違ったものになっていくかもしれない。
(マス・マテウでの宿泊についてのお問合せは、info(at)cognoscenti.jp まで。←(at)を@に置き換えてください。)