マス・マテウ(前回参照)での素敵な朝食の後、近郊の町の見学に出かけた。
最初に立ち寄ったのはパラタラダ(Paratallada)という町。「切り出された石」を意味するパラタラダは、町を囲む堀から切り出した石で造った建物と、石畳の細い道で構成される。11世紀以前に建てられた城を中心に、監視塔、城門、堀などで構成された、中世の要塞都市。
歩いて小一時間もあれば一回りできるパラタラダには、小さなカフェやブティック、ホテルが数件あるだけ。ガイドブックによれば人口は150人。中心の広場にはインフォメーションセンターもあるが、観光業で成り立っているのだろうか?と余計な心配をしてしまうほど、静かで、のんびりした雰囲気が流れている。
案内してくれたガイドさんに、「これ、日本の花でしょ?」と言われ、見ると、そこにはピンクの梅の花が、カタルーニャの春の日差しを浴びて咲いていた。中世の石壁をバックにした梅も、なかなか新鮮。
次に訪れたのは、エンポルダの地元のワイナリー。
エンポルダはスペインで代表的なワイン産地ではないが、ワイナリーはいくつかある。今回はMasia Serraというワイナリーを訪問。1961年、祖父の代に植えたグルナッシュ種が始まりで、最初は他のワイン製造者にブドウを卸すだけだったのが、90年代から自分たちのワインを作っているそう。現在の経営者の3代目の夫妻が作るワインのラベルは、インパクトあるスタイリッシュなデザイン。
この地方では、トラモンタナと呼ばれる北からの風が強く吹き付けるため、ブドウの木はそれに耐える強さが要求される。同時に、その風が害虫も吹き飛ばしてくれるため、農薬はほとんど使用しなくて済むそうだ。必要なものは、自然の中にあるということ。まだビオの認証は取っていないが、近いうちに申請を予定していると、夫人が話してくれた。
日も暮れてきた頃、北カタルーニャ最大の都市、ジローナに到着。
オニャル川沿いにパズルのようにぎっしり並ぶ住宅群を眺めながら橋を渡ると、のっぺりしたライオンが柱にしがみついたモニュメントがある。このライオンにキスをすると、またジローナを訪れることができるとか。
夜の闇に包まれていく中、城壁を歩いた。
紀元前にローマ人が築いたジローナの街は、その後イスラム勢力の侵攻から領土を守り、城壁の形を変えながら発展していった。現在は城壁をから、街を一望する監視塔に上ることができる。
昼間のジローナも美しいに違いないが、夜への移ろいの中でライトアップされた大聖堂も幻想的でいい。
ちょっと駆け足だったカタルーニャの旅。ライオンにキスはせずに帰ってきたけど、きっとまた行きたい。