2013年10月25日金曜日

ニュージーランド マールボロ・サウンズ ②ワイナリー巡り

マールボロ地方はニュージーランド最大のワインの産地。同国のワインの生産量の70%を占め、ソーヴィニヨン・ブランに限ると85%を占める。

南島の北部にあるブレナム空港の周辺は、見渡す限りのブドウ畑、ときどき羊、という風景が広がる。ニュージーランドでも最も晴天率が高い場所のひとつで、土地も肥沃なことから、ワイン用ブドウの栽培にはもってこいなのだそうだ。量だけでなく、品質でもニュージーランド最高級のワインが作られている。マールボロ地方のワイン産業の歴史は比較的新しく、本格的に始まったのは1973年。それが今では百以上のワイナリーを抱える国内最大の産地となり、ニュージーランドのソーヴィニヨンブランの名を世界に轟かすまでになった。


地域の多くのワイナリーがビジターを受け入れており、テイスティングや購入ができる。私も地元のガイドさんの案内でいくつかのワイナリーを廻った。



Hunter's
最初に訪れたのはHunter's。1970年代から続く、この地域では老舗のワイナリー。テイスティングコーナーのテーブルに並べられたボトルから、愛想のいいベテランのマダムが、「2013年のソーヴィニヨンブランよ。」と言って注いでくれた。普段、北半球のワインを飲み慣れているため、一瞬「ん?」と思う。北半球では2013年のブドウで造られたワインが市場に出るのは普通は2014年の春。今はボジョレー・ヌーヴォーさえ出ていない2013年の10月。ちょっと考えれば当たり前だけど、南半球のここでは、2013年の3月頃収穫されたブドウの新酒が10月から出てくるのだ。冬(日本では夏)の間はクローズし、新酒が商品として出荷される10月からオープンするワイナリーも多い。各ワイナリーの今年の出来立ての新作を飲み比べるには絶好のタイミングだった。

ニュージーランドワインの特徴の一つともいえるのがスクリューキャップ。聞けば、このあたりでも最初はコルクを採用していた。しかしポルトガルなどから輸入された二流の品質のコルクがワインの質の劣化を招いたため、Hunter'sを含む数件のワイナリーが立ち上がり、試行錯誤の末、今の材質と形状のスクリューキャップに落ち着いたのだそうだ。


次は、ニュージーランドワインの代名詞ともいえるCloudy Bayへ。まだ背が低いブドウの木が並ぶ向こうに、あの有名なラベルに描かれた山並みが見える。

Cloudy Bayから見える山

Cloudy Bayでのテイスティングは有料(5NZドルから)。今年のソーヴィニヨンブランと、樽で寝かせた2009年のソーヴィニヨンブランの2種類を飲み比べた。スタッフの女性が「これは人によって好き嫌いが激しいのよ。」と言いながら後者を注いでくれた。実は到着前にガイドさんも若干否定的なニュアンスで、そんなことを言っていた。確かに、今年のフレッシュなソーヴィニヨンブランのあっさりした味わいに比べると、樽香がしっかり効いたそれはまったく別物。私は後者のほうが好みだったのでそう伝えると、スタッフの女性は「そうでしょ?」という感じで嬉しそうに笑った。
 

マールボロにもオーガニックの製法を採用しているワイナリーが数件ある。ガイドさんにお願いし、そのうちの2軒へ案内してもらった。


Seresin
一軒はSeresin。映画撮影監督のマイケル・セレシン氏が経営するワイナリー。トタンでできた小さな建物に、手のひらのロゴの焼き印が押された木の看板の素朴な外見。ワインは全てオーガニック且つビオディナミ製法で、オーガニックのオリーブオイルも作っている(お土産にぴったり)。最近は酸化防止剤無添加のワインも始めたが、まだ商品化はしていないそう。
 
 
 

Hans Herzog


もう一軒はHans Herzoc。スイスでは1630年から続く歴史あるワイナリーで、ここマールボロでは1990年代にスタート。そのテイスティングルームは他のワイナリーとはちょっと違った重厚なヨーロッパテイスト。ここでも化学肥料や添加剤は一切不使用で、含まれる酸化防止剤の硫黄も自然のもの。またマールボロでは少数派の、コルクを採用している4軒のワイナリーのひとつでもある。個人的にはここの2010年のソーヴィニヨンブランが最も好みに合ったので、1本購入し持ち帰った。
 

まだ若葉のブドウが並ぶ春のマールボロ。2014年の収穫に向けたシーズンが始まる。