霧の彫刻を見に、長野へ行った。
今年4月10日にリニューアルオープンした「長野県立美術館」(旧・長野県信濃美術館)。2017年10月から3年半にわたって休館した後、コンセプトも新しく人々を迎えている。
「ランドスケープ・ミュージアム」として生まれ変わった美術館は、周りの自然と調和しながら、人々が自由に行き来できる屋内外のオープンスペースを充実させ、公園のような存在を目指している。
そのコンセプトに沿ったひとつの目玉が前述の「霧の彫刻」。1970年から世界で霧の作品を作り続けている中谷芙二子氏の最新作。3年ほど前に銀座のメゾン・エルメスフォーラムでの「グリーンランド」展でも霧を発生させていた。お父様の中谷宇吉郎氏は世界で初めて人工雪を作ることに成功した人だそうで、その娘の芙二子氏が人口霧を作っているというのは、なんだか素敵な遺伝子だと思う。
長野県立美術館の霧の彫刻は、時間になると水辺テラスでゆっくり発生し、風に乗って辺りを漂い始める。霧はそのうち、時に滝に近い勢いで噴出し、周りが一切見えなくなるほど真っ白に立ち込めたかと思えば、また晴れてを繰り返す。この「パフォーマンス」はただ外から見るだけでなく、霧の中を歩けるのも魅力。人口の霧と自然の風のコラボレーションに翻弄されながら鑑賞する一種の没入型アート。
美術館は城山公園の中にあり、霧の彫刻は公園を訪れる誰もが見られる。現時点では毎時30分から15分間程度、1日8回披露されている。春の青空の下、あらゆる年代の人が霧に魅了され、楽しんでいた。
本館屋上の「風テラス」もオープンアクセスのスペースで、隣の善光寺と背後の山々を一望できる。景色を眺めるベンチも完備され、気持ちのいい日光浴スポットでもある。
別館の東山魁夷館は建築家・谷口吉生氏の設計で、こちらは2019年にリニューアルオープンした。コレクション展は白い馬のシリーズなど代表的な絵画の他、あまり見たことがないヨーロッパ旅行の際のスケッチもあり、東山魁夷が生きた時代や人生にも興味が湧いた。
本館では、デジタル技術で文化財を再現させた企画展を6月まで開催しているが、「グランドオープン記念展」は8月かららしい。そういえば美術館の周りの土地はまだ工事中なので、今はソフトローンチ期間なのだろうか?(どこにもそうは書いていないけど。)
今後はコレクションを活かした企画展も期待される長野県立美術館。建物の中も外も十分楽しみたい新アートスポットだった。