6月に入り、休業していた都内の多くの美術館が再開。緊急事態宣言中に終わってしまった展覧会もあるが、SOMPO美術館の「モンドリアン展」は、会期終了5日前に再開してくれた。
昨年、独立した新棟に移転・リニューアルオープンしたSOMPO美術館は、高層ビル内にあったときよりもアクセスしやすく、美術館らしくなった。
今回のモンドリアン展では、展示作品70点中の50点がオランダのデン・ハーグ美術館のもの。デン・ハーグ美術館はモンドリアンの作品を300点以上収蔵している。随分前に訪れた際、そこで見たモンドリアンの作品に「こんなのも描いてたんだ」と思った記憶がある。私を含め多くの人が「モンドリアン」と聞いて思い浮かべる、あの、直角に交わる黒い線と、赤・青・黄の原色の絵とはだいぶ違う作品もあった。一生同じ作風だけで通すアーティストなどほとんどいないので、違って当たり前なのだが、そういうのを見ると何か意外な発見をしたようで、名前でしか認識していなかったアーティストの人生に興味が湧いたりする。
SOMPO美術館でも、風景画、印象派の影響、キュビズムなどを経て、「デ・ステイル」を結成、広く知られた「コンポジション」シリーズに到達するまでをほぼ時系列で追っている。コンポジションのシリーズは最後の数点のみで、むしろそれ以外の時代の作品が中心。それがかえって面白かった。
モンドリアンは中心的な位置にいたデ・ステイルを8年で脱退している。なんでもリーダーのテオ・ファン・ドゥースブルフが、垂直・水平の線よりも「斜めの対角線のほうが重要だ」と主張し始め、それがモンドリアンとしては許せなかったらしい。
もし彼のコンポジションに斜めの要素が入っていたら、あのインパクトはなかったかもしれないし、イヴ・サンローランのドレスにもなっていなかったかったかもしれない。
この展覧会は1872年生まれのモンドリアンの「生誕150年目」を記念したもの。「生誕150周年」にあたる来年2022年には、スイスのバイエラー財団美術館で記念の展覧会が予定されている。そちらはモンドリアンがどのように作品を描いたのかとか、作品に込められた意図を探る主旨だそうで、それも面白そう。来年はスイスに行けるようになっていますように。