2021年6月4日金曜日

あかりは軽い イサム・ノグチ展

東京都美術館で開催中の「イサム・ノグチ 発見の道」展を見てきた。

出迎えてくれるのはたくさんの「あかり(Akari)」たち。

和紙で作られた150灯のあかりの、森のようなインスタレーションが、落ち着いたファンタジックさを出す。間違いなくこの展覧会で一番人気の写真撮影スポットだが、はしゃぐのではなく、静かに鑑賞したい気持ちに自然になる。

展示は3フロアにわたり、最初のフロアのテーマは「彫刻の宇宙」。インスタレーションの周りに惑星のように展示された彫刻たちは、ニューヨークのイサム・ノグチ財団・庭園美術館の他、国内の様々な美術館から来ている。

次のフロアは「かろみ(軽み)の世界」。ノグチの中であかりの「light」は軽さの「light」につながっていたことを知り、二つの言葉の重なりに今更ながらハッとする。明るさは軽く、軽いものは明るくしてくれる。なんだかとても腑に落ちる。


ここには、遊園地を作りたかったノグチの真っ赤な「プレイスカルプチュア」と、石や金属のユーモラスな彫刻群が展示され、さながら屋内版「彫刻の森」のよう。多くの作品にとてもユーモラスな名前がついている。たとえば「ジャコメッティの影」とか、「マグリットの石」とか、「宇宙のしみ」、「道化師のような高麗人参」といったものもあり、「あー、なるほどね」と、くすっと納得しながら鑑賞。ノグチのプレイフルな側面を感じる。

最後のフロアは「石の庭」(なぜかこのフロアだけ撮影禁止)。石の彫刻10点が展示され、ほとんどが香川県・牟礼のイサム・ノグチ庭園美術館から出展されている。ニューヨークと往復しながら、牟礼を日本の制作アトリエとしていたノグチの当時の映像も上映されている。

会場にあった年表が広島の原爆慰霊碑のことに触れていた。1951年に丹下健三の招きで広島を訪れたノグチは大きな衝撃を受ける。そして丹下と広島市長の依頼もあり原爆慰霊碑の制作のデザインに没頭しするが、結果的にノグチが提案したデザインは不採用になってしまう。現代ならイサム・ノグチの提案を断ったと知れたら、それこそ大議論が巻き起こるに違いないが、戦後間もなかった当時、アメリカ人であるノグチが原爆慰霊碑を手掛けることに反対の声があったのは仕方がなかったかもしれない。

その実現しなかった原爆慰霊碑のモデルは、ニューヨークのイサム・ノグチ財団・庭園美術館にある。行ける日が来たら、それを見に、そして今回の展示では見られなかった多くのノグチ作品を見に、行ってみたい。