2017年3月25日土曜日

ホノルル アーティスト・ビジット②Deborah Nehmad

ホノルル・ビエンナーレ2017のVIPツアーの一環で訪問したアーティスト二人目は、Deborah Nehmad氏。

彼女の経歴はアーティストとしてはちょっと異色かもしれない。ニューヨーク出身のDeborahは、政治専門の弁護士としてキャリアをスタートし、カーター政権時代はホワイトハウスで仕事をしたこともある。

しかしその後、事故に遭い、リハビリをする過程でアーティストに転向した。

彼女の自宅兼スタジオで拝見したのは「Wasted」というシリーズ作品。遠目には普通の美しい抽象画だが、実はここには、アメリカ社会の問題に対するメッセージが込められている。
赤いTシャツを着たのがDeborah氏
蝋を丹念に塗った大きな手すきの紙の上に赤と黒の点が描かれ、それぞれの点を糸でバツ印にステッチしてある。これらはランダムに描かれたものではなく、ある1年間にアメリカで銃で亡くなった子供と大人の数や、殺人事件の数を、正確に反映したものなのだ。ビジュアル化された数字は、ただデータを見るよりも深く心に迫ってくる。

他には、無実の罪で死刑判決を受け投獄され、その後釈放された人の一人ひとりのデータを、QRコードに込めた作品。スマホでQRコードを読み取ると、その人の名前と、投獄されていた年月が表示される。デジタルツールを使うことで、より幅広い層の興味を喚起しようとしているのだろう。

鉛筆で数十万の数字を順番に書いていったり、とにかく、彼女の作業は細かい。

社会に対するメッセージを伝えるためには、正確なデータに基づき、細かい作業にも妥協をしないDeborah。

彼女の言葉が印象的だった。
「世界を変えようと思って弁護士になったけれど、アートのほうが世界を変えられるとわかった。」


*ハワイのアーティストビジット・ツアーについてはinfo(@)cognoscenti.jpまでお問い合わせください。