2021年8月1日日曜日

灘の酒蔵めぐり

神戸に行った際、灘の酒蔵をめぐった。

「灘五郷」と呼ばれる地域は長さにしてわずか12㎞くらい。そこで全国で販売される日本酒の約25%が生産されている。誰もが知る日本酒ブランドが集まる「魚崎郷」から「御影郷」を歩いた。


酒蔵の多くが酒造りの歴史や工程をわかりやすく展示している。2、3軒も訪問すれば、灘のお酒の製法がざっくり頭に入る(いや1軒だけでも集中して見学すればよくわかるはず)。

有料・無料の試飲を用意しているところも多い。普段飲む機会がない現地ならではのお酒に出会えるのも魅力。魚崎郷地区の「浜福鶴 吟醸工房」では月替わりで「仕込」シリーズという生原酒を出している。試飲させていただいたところ、月によって全く味わいが違うのが面白かった。



次は「櫻正宗記念館」。灘の酒造りに欠かせない名水「宮水」(西宮郷の水)を発見したのはここの6代目。

展示スペースにはレトロなデザインがお洒落な昔のお酒の瓶が並んでいる。ちなみにここの8代目当主はあのフランク・ロイド・ライトに別邸の設計を依頼した人で、その家は今は「ヨドコウ迎賓館」として公開されている。

そのまま西に進んで御影郷地区へ。「菊正宗酒造記念館」では昭和初期まで使われていた酒造用具が工程順に展示されている。夜明けの工場の雰囲気を出すために照明は暗め。自然の乳酸菌を使う「生酛づくり」の酒酵母を作る「酛場(もとば)」では、職人たちが「酒づくり歌」を歌いながら作業する映像も流れていた。灘の辛口のお酒を生むための大切な工程。



菊正宗の展示もかなり良かったが、次の「白鶴酒造資料館」は更にスケール大。



男前な職人たちが今にも動き出しそうな臨場感あふれる展示。洗米から樽詰まで、2フロアに渡って昔の酒造りの工程が再現され、吹き抜けになった部分にはあみだ車が下がっている。かなり予算も手間もかけて作ったに違いない精巧な展示は、まさに博物館レベルで、入場料を取ってもいいのでは?と思うほどだった。伝統的な酒造りを継承しようという白鶴の使命感に感動しながら見学。

最後は「福寿 神戸酒心館」へ。純米吟醸がノーベル賞の晩餐会でふるまわれていることで有名。ここでは現在の近代的な日本酒工場をガラス窓越しに見学できる(要予約)。近代化されたとはいえ、米を蒸して掘り出す「蒸米」などの作業は重労働。それでも少人数で回しているという。


福寿では、コロナ時代に対応して試飲をセルフディスペンサー化(ひとり一杯まで!)。


今回は時間の関係でここまで。日本酒について初めて知ることも多く、各酒造の工夫された展示のお蔭で印象に残った。お酒は作られ方やこだわりを知ると味わうときの意識も変わる。次に日本酒を飲むときは灘のお酒にしてみよう。