フランク・ロイド・ライトが設計した芦屋市の「旧山邑家住宅」は、日本にあるライトの住宅建築で唯一、一般公開されている。今はヨドコウ迎賓館と呼ばれ、国の重要文化財に指定されている。
近くを流れる芦屋川の水は街中とは思えないほど澄んでいて、子供達が泳いだり、魚捕りの網を持って遊んだりしていた。さすが六甲の水!
旧山邑家住宅は、灘の酒蔵「櫻正宗」の8代目当主・山邑太左衛門の依頼でライトが設計した別邸。ライトの帰国後に、弟子の遠藤新と南信によって1924年に完成された。急な坂を上った高台の斜面に建ち、建物に沿った長い誘導路の奥に入口がある。
屋上バルコニーからは芦屋市街と大阪湾を一望できる。
幾何学的な装飾が施された大谷石の外壁は、どことなく神殿を思わせる。
ライトの建築の中で和室があるのはこの旧山邑邸だけ。ライトの案ではなく、ライト帰国後に施主の強い希望で変更されたものだそう。ぱっと見ではそれほど違和感はないが、良く観察すると面白い和洋折衷が見られる。例えば、植物をモチーフにした飾り銅板が欄間に使われていたり、応接室と同じ換気窓が並んでいたりする(換気窓には一つ一つに取手やラッチもついていて、丁寧!)。
4階の食堂は左右対称の整然とした装飾の中、天井に三角の窓が開いている。昼間は明かり取りとなり、夜は星を見る窓にもなったらしい。こういう遊び心あるディテールがお洒落。
当時の模型を見ると、建物の下の方に今はない池もあって、山ひとつを丸ごと使ったお屋敷だったことがわかる。
住む人がいなくなった今も、家の随所にきれいに花が生けられ、訪れる人を歓迎している。(水・土・日曜と祝日のみの開館なのでご注意を。)