2021年7月18日日曜日

ミレーだけじゃない 山梨県立美術館

最近まで、ミレーの「落穂拾い」はオルセー美術館にしかないものだと思っていた。それが山梨にあるという。

甲府駅からバスで15分の山梨県立美術館は「芸術の森公園」の中にある。ミレーの作品を複数所蔵する「ミレーの美術館」として、外壁にはミレーの写真が飾られ、ロゴもミレーの「種をまく人」をモチーフにしている。


運よく「落穂拾い、夏」と「種をまく人」の2作品が海外から戻ってきていたタイミングで、それらを含むミレーの絵画10点余りのコレクションを見ることができた。

オルセーの「落穂拾い」に対して、山梨は「落穂拾い、夏」。映画などのタイトルのつけ方から想像すると、山梨のほうが「続編」のように思えるが、実はこちらが先。生涯に3度四季連作を制作したうちの最初の連作の「夏編」に当たるそうだ。

今まで何となく、落穂拾いは収穫をする人たちの絵だと、あまり考えることなく思い込んでいたが、畑を持たない貧しい人々が後で拾えるように収穫物を地面に残しておく習慣を描いたものだと、解説を読んで知る。軽い衝撃。(私だけだろうか。)

ミレーの展示に続き、バルビゾン派を中心とした風景画のコレクション展示も充実していた。ここまでが「ミレー館」の展示。

一方、特別展は蜷川実花の写真展を開催中。ミレーやバルビゾン派を見た後での色彩のギャップはすごかったが、撮影が可能なコーナーでは皆、カラフルな写真を撮るのを楽しんでいた。


さて、芸術の森公園の屋外展示もこの美術館の見どころ。真っ先に目に入り、思わず近くまで見に行ったのは大きなリンゴの彫刻。

ニューヨーク在住で、ビッグ・アップルをモチーフにしてきた佐藤正明氏の作品だった。美術館の30周年の機に「宝くじの普及宣伝事業として設置された」記念モニュメントだという説明書きにちょっと拍子抜けするが、それはそれ。なだらかな起伏の上に斜めに立つ銀のリンゴは、シュールな風景を作っている。この公園内で一番の眺めだと思う。

その近くにあるザッキン作の「ゴッホ記念像」。・・・ゴッホって、こんな人だったの?画材を背負う姿に、忘却のかなたにあった二宮金次郎像を思い出す。



これらの彫刻が点在する公園は、同じ敷地内の文学館の裏の庭園まで含めるとかなり広く、いいお散歩コースになる。

ミレーもそれ以外も楽しめた美術館だった。